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193話【苺視点】オスとメス

「――『泡圧(バブルプレッシャー)』」

「ぐおおおおおお!!」



「お、やってるやってる」


 戦闘が行われている声のしたその場所に到着すると、思った通りオーガが探索者たちに攻撃を浴びせられていた。


 でもオーガの数は想像よりも多くて、3匹。


 着ている服とか顔つきとか、人間みたいに性別がはっきりしてて、その内訳はオスが1匹、メスが2匹。


 探索者たちの魔法によってオスの右腕には泡が纏わりついて、それを圧迫。

 厚みは半分くらいになっていて、血流に問題が発生して色も悪くなっている。


 前衛で人間に攻撃をしようとしたオスのオーガの腕がこうなるのは分かる、でもその後ろ、2匹いるメスの中でもなぜか身体を掴まれている個体の色が青いのはなんでだろう?


 確かオーガは赤色じゃなかったっけ。



「よし! オスはもう瀕死! 逃げられる前に後ろの奴らも一気に倒すぞ!」



「――き、きゃあ!!」



 探索者の中でもとりわけ目立つ、リーダーらしい男性が指示すると他のメンバーはオスを無視。


 今度はメスを襲おうとした。



 すると赤色のメスオーガは声を上げながら青色のメスオーガを蹴飛ばした。


 そして、探索者たちがその青色のメスオーガに意識を向ける中赤色のメスオーガはオスオーガの元へ。


 泡をなんとか払いのけて自分たちだけでも生き延びようと走り出した。


 つまり……こいつらは仲間を見捨てようとしている。



 ううん。もしかするとこいつらにとってこの青いオーガは仲間でもないのかもしれない。

 よく見ると痣みたいなものも多くあって……モンスターの中でも虐めや奴隷みたいなものがあるのかもしれない。



「しまった! 後を追――」

「構うな! 依頼はオーガの角とその肉。1匹狩れば十分だ。それに、どこから他のモンスターが現れるか分からないのがこの階層だろ」

「そうですね。……そいつを倒してとっとと帰りましょう」

「ああ。今日は報酬で豪華に飲み食いしようじゃないか!そうと決まれば……」



「あ、が……」



 探索者リーダーの剣が高く振りかざされた。


 そして、怯えて動くことのできない青色のメスオーガにその切っ先が向かう。



「え?」



 でも、それが届くことはなかった。


 だってその間にスキルイーターの太い腕が割って入ったから……違う、そうじゃない。



「あっぶな。青色のオーガなんてレアなモンスターを殺すなんて……こいつらはなんにも分かってないな」



 スキルイーターを操る蒼社の興味が探索者たちなんかよりも青色のメスオーガに向けられたから。



「探索中に行方不明。証拠が残らないようにスキルごと頂かせてもらいな」



 スキルイーターの影から気付かれないよう、命令を下す。


 するとスキルイーターはリーダーの腕を掴み……。



 ――ぶち。



「ぐああああああああああああああああ!!」



 もぎ取った。

 どうやらレベル差が大きすぎたみたい。



「ば、化物!!」

「う、あああ……」



 咄嗟に逃げようとしたリーダーを捕まえるスキルイーター。

 それから逃げようと泣きながら抵抗するリーダーとその場に尻もちをつき失禁、四つん這いになりながら逃げ惑う仲間たち。



 地獄のような光景にこっちまで気分が悪くなる。


 それなのに蒼社の表情に変化はない。

 楽しそうにしてはいない、けどやっぱり他の人間に対する感情の一部が欠落してる。



「スキルイーター。あんまり、苦しまないように一息で――」




「――や、めて」




 補食をもったいぶるスキルイーターに苛立ったのか、蒼社が命令しようとした。


 その時、か細く可愛らしい声が微かに耳の奥で響いた。

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