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181話 上位の人たち

「これが障壁か……かなりでかいな」



 地上とダンジョン街を繋ぐエレベーター、それがある大きな塔に踏み入れられないよう、終わりが見えないほど高く透明に近い壁が遠くに見えた。


 これを建設する時間はなかった。


 ということはこの壁もスキルでできたものか……。



「俺の壁スキルなんかとは比べ物にならない。地上の人間の中にはこれだけ強力なスキルを持ったやつがごろごろいるのかもしれない……。俺たちは協会にまた誰か入ってこないか、しばらくその警備にあたろうと思うが……」

「おい、俺はそんなことするなんて言ってな――」

「無理だけはするなよ。お前たちも自分が思っている以上に疲れが溜まっているはずだからな」



 疲れた様子の浦壁さんはうるさい慎二の口を押さえると先を急ぐ俺たちを労ってくれた。


 陽葵さんのスキルがあるからとはいえ、いつなにをやらかすか不安がなかったわけじゃなかったから、こうして強い人が見張ってくれるのは助かる。



「浦壁さん……ありがとうございます」

「遥君!赤君もう飛べるって! 嫌な予感がする……だから急いで!」



 浦壁さんたちと話している間にも赤が竜の姿で羽を広げていた。


 乗り込む人数が増えたこともあって赤はその身体に炎を纏わせて、乗れる場所を拡大。


 俺たちはそんな赤の背にそれでも若干の窮屈さを感じながら飛行を開始した。





「――見てみや! 人があんなにいる」

「仕方ありません。少し遠くに着陸します。お嬢ちゃんは舌を噛まないように気を付けてください」

「私、子供じゃない」


 

 そうして移動を開始して間もなく、障壁の近くまでやってくると俺たちの目には大勢の人が映った。



「――この街の物価はあり得ないほど高い! あいつらはずっとここの人間を安く、危険な場所で働かせていたんだ!わざわざ記憶の改竄をして!お前たちは地上の奴らに騙されていたんだ、悔しくはないのか?悔しいならここをこじ開けろ!矢沢彰人と神宮からこの街を奪い返してやるんだ!」

「それにこのままだと地上から食料や娯楽品を輸入することもできない!お前らはそれでいいのか!?」

「協力すればこの街が貧窮した際、俺たちの備蓄を優先して配布する!だから言うことを聞くんだ!」



 着陸しようと高度が下がれば下がるほど、人の群れの中で大きな声を上げ、一際目立つ人たちに気がいく。


 この先導する力強さというか、傲慢な態度というか……金持ちの区画に住む人間独特のものって、この人たちが地上でも上位の人間として扱われていたからだったんだな。


 とにかく混乱を招くような事態、差別から始まる下位の人間の奴隷化は避けたいが……。



「あの人たち、話を聞いてくれるかな?」

「……。不可能だと思う。あれはそういう人間たちだから。でも……君や竜たちがいればなんとかなるかもしれない。それに……急いだのが功を奏するのかも。……俺も、記憶が戻ったりで思うところがあってさ、本当はちょっとだけ怖かったりするんだけど……贖罪だと思って頑張らせてもらうよ」



 不安な気持ちのまま着陸すると、いつもの飄々としたものではなく、宮平さんは真剣な眼差しで一点、障壁の側でもにょもにょとせり上がる影を見つめていたのだった。

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