18話 弱点
「……」
「どうやら声もでないようね。まぁそれはしょうがないことだから、恥ずかしがらなくても大丈夫よ。……よっと。じゃああなたたち、その人間を捕まえて拘束しなさい!」
各々役割を割り振られた6匹の竜たちはオロチ本体の口から気体となって外に出た後、元の姿を顕現。
そうして現れた竜は大小様々で個性豊か……というわけではなくどれも似たような顔つき。
ただ1頭だけは額に傷があり、2本角の片方が折れていたり、とにかく歴戦といった言葉が似合う風貌をしている。
俺が聞かされ、その画像データを見たことがあるのもこの1頭。
探索者の中ではこいつがオロチという認識が強い。
だからオロチ本体よりも、出きるならこいつの死体を他の探索者たちに見せつけたいが……。
倒せたところでどうせ気体に変わってしまうんだろうな。
やっぱりまずは本体を……でも、撥ね飛ばされた首は今現在元の場所へ戻り、くっつこうとしているし、切ったはずの箇所もいつの間にか再生されている。
正直八方塞がり。
どうすれば勝てるかが分からない。
ただでさえ『超身体強化』の影響で頭が回らないっていうのに。
「とにかく避け、ないと」
襲いくる竜たちの攻撃を俺は必死に避ける。
尻尾でのなぎ払い、水のブレス、のしかかり、前足からの引っ掻き、尻尾での掴み動作、どれも速さはないものの、今の状態ではカウンターを合わせるなんて到底無理。
動けば動くほど血が滴り、その度にそれをあの額に傷のある1匹が舐め……
「俺の血を舐めてる?何故?攻撃に参加もしないぞ……」
「まーた! もう! あんたはそうやって……ってなんで?どうしちゃったの?」
何故か俺の血を舐めていた額に傷のある竜の様子がおかしくなり始めた。
その顔は赤く、2足歩行でもないのに千鳥足。
まるで酔ってしまっているかのよう。
「まさか、『超身体強化』で本当にアルコールが……。確か、神話だとヤマタノオロチは酒好きって設定だったか?」
「人間め、また毒を盛って……。戦い方が嫌過ぎるんじゃないかしら?」
また……。
そういえば人間にひどい目に遭わされたというようなことを言っていたっけ……。
きっと街の探索者の誰かが弱点をスキルで覗いた上で、あの傷をつけたのだろう。
「といっても、私たちは死ぬも生きるも一蓮托生。誰かが生きている限り、正常でいる限り、いくら時間がかかろうとも状態は元に……。あっこれ言っちゃ駄目なやつよね……。ぜ、全員念のため距離を――」
「なるほど、それが弱点か……。だが、全員を一発で仕留めるのは威力的にも範囲的にも難しい。なら……取りあえず無防備な状態を作る。……『十二重斬』」
俺は滴る血を水の剣で取り込むと、スキルを用いて、それをオロチ本体と竜たちの顔面にぶっかけてやったのだった。
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