表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

178/406

178話 簡単攻略

「2週目? 何を言って――」

「嘘だと思うなら抵抗してみてください」



 会長はあり得ないといった表情をしつつも、次の瞬間には攻撃を仕掛けようとしていたのであろう。


 ナイフを持つ手に力が入り、右足が微妙に床を擦った。


 そんな些細な機微を俺は読み、戸惑うことなく会長の懐に飛び込んだ。


 俺の行動が予想外だったのか、或いは会長にはこれを目で追うだけの能力がないのか……とにかく反撃できる様子はなく、俺の拳はそのまま会長の鳩尾を捉えた。



「がっ!?」

「……本気で殴ったつもりなんですけど、意識も身体も飛びませんか」

「そ、そんな……見、見えなかった。風竜の力を得た、この私が……2週目というのは、本当なのか?」

「だからそう言ってるじゃないですか」



 腹を抑えて片膝を地面に着けた会長。


 その質問に飽きれながら答えて、俺は今度こそその意識をもぐために一歩前進。



「くっ!」



 すると会長は近寄られることを嫌って、後方へ飛んだ。


 自らの風の力で勢いよく身体を押したのだろう、俺との距離は瞬く間に広がり、さらに会長は空中に逃げた。



「――風槍ウィンドスピア



 そして間を置くことなく風魔法を展開。


 少し前に発動させていた魔法に比べて直接的で発動時間の短いものを選択したのだろう、俺が攻め入ろうとするよりも先に魔法陣から巨大な風の槍が出現、天上や壁を削りながらそれは俺を殺そうと迫ってくる。



 威力と規模からして神話級の魔法。

 一見手の着けようがない魔法だが……。



『――神測。風槍ウィンドスピア、神話級魔法。同じ等級の魔法によって相殺可能。また、弱点としては先端右側が比較的脆い。他魔法でもその威力を削ぐことは可能。魔力、体力ともに省エネすることが出来ます』



 強化された神測スキルを使えばこの通り、最小限の攻略法をいとも簡単に導き出してくれる。


 というわけで……泡を吹かせてやるためにお得意の魔法で簡単突破してやろうかな。



「あなたは危険だ……だがこれだけの大物を殺したとなれば、地上にいる政府の連中でさえ……。いえ、そのスキルを手にすることが出来れば或いは……。だから、大人しく貫かれてください!!」



 会長の声に呼応して風槍は更に回転。


 部屋全体に猛烈な風が吹き荒れ、苺、宮平さん、風竜、それになんだか見覚えのあるモンスターが壁付近まで吹っ飛ばされた。


 あのモンスターと俺は出会ったことが、過去にある。

 背中が曲がっていて、皺も多く、その時とは大分姿を変えてはいるが……。


 その辺りのことも会長を倒して、全て吐き出させてやるとしようか。




「――水弾アクアバレット

「ん、それは? ……あはははははははははははははは!!! いくらレベルが高いと言っても、魔法は苦手のようですね!! それは初級魔法! 魔法の基本がなってないなんて、宝の持ち腐れ――」



 ――パン。



 高笑いする会長をよそに俺の発射した水弾は風槍の先端やや右側にヒット。面白いくらいにそれは折れ、中に空洞があることが分かった。



 いつだったかハチとこのコントロールを深めていたことがここに来て役立つなんて、思いもしなかったな。



「まさか、初級魔法で……驚きましたがその程度で神話級魔法は止められませんよ!! 飲み込め、風槍」

「『超身体強化』、二重ダブル



 なお突っ込んでくる風槍。


 俺はそんな風槍を確認するとスキルを用いつつ、両脚に力を込めた。


 そしてそんな両脚が地面を軋ませたと同時に俺は風槍目掛けて飛び上がった。



「馬鹿め! わざわざ自分から死ににいくとは!」



 風槍の先端のあった箇所、先に空洞が見えるそこに入り、勢いを維持したままさらに奥へ奥へと突っ込む。


 風の音があるものの、会長の声が鮮明に聞こえるのは、この中には不思議なくらい障害がないから。

 咄嗟に発動できる魔法はその分不出来な部分があるということだろうか?


 こんなものに頼って、余裕ぶるのは愚かとしか言いようがない。



「――見えた」

「は?」



 風槍の中を抜けていくと、そこが根本なのだろう、薄っすらと会長の手が見えた。


 根本側は先端と違って穴が開いていないことから、反対に俺の姿を視認するのは困難だったらしく、会長は俺の声に対して素っ頓狂な声を上げ……。




 ――すっ。




「……。……。く、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



 自分の手が斬り落とされたことに気付くまで数秒の時間を要したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ