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16話 可哀そう

「『超、身体強化』……。なまくらを、くれてやるよっ!」

「……剣を投擲。そんな攻撃しかできないってことは私が思っていたより、弱っているのね。でも大丈夫よ。私がこれの使い方を理解できるまでは、最低限生きるための処置はしてあげる。だから大人しく捕まりなさい、人間」

「『理解できるまでは』、か。そんな誘い方で釣られる男は人間の中には居ないと思うぞ」

「そっか。バレちゃうか。あなたたち人間は本当に賢いわ。ただそれは当然いいところでもある反面、悪いところでもあって……。今回みたいな場合だと、それに気づく頭さえなければ、自分を殺そうとしていることを知るだけじゃなく、いつどこでどうやって殺されるのか、なんていう心配を抱くことはなかったはずよね? きっと人間は強くなる以上に賢くなる努力をしてきた種族のはずなのに……可哀想」


 不意をつけるかと思い放った、剣を使った全力の投擲は、その太めの腕で簡単に叩き落とされ、渾身の挑発も怒りを買うことができず、それどころか同情されてしまった。


 なんだか、普通に罵られるよりも屈辱かもしれない。


「可哀想だと思うなら、見逃してくれと思うのだ、が……」

「あら、その脚で……。いいわ。それであなたが満足して大人しくなるのなら、少しだけ付き合ってあげる」


 俺は疲労から鉛のように重く感じる脚を必死に動かしてオロチ本体の元へ駆け出した。


 手元に剣はない。魔法はそのリスクから使えない。

 となればあとは正面から殴りかかるのみ。


「うおおおおおおおおっ!」

「そうやって自分で自分を鼓舞して……。でもそれ暑苦しいだけよ」


 俺の攻撃はまるで空を切っているだけ、と錯覚するほど綺麗に受け流されていく。

 オロチ本体の戦闘方法のメインは魔法による遠距離攻撃のはずだが、近接戦闘も俺と同程度……いやそれ以上か。


「もういいでしょ。今のあなたの攻撃は明らかに本調子じゃない。そんなスピードのない突き出しなんて、いくら繰り出したところで結果は変わらない。ほら、これで落ちなさい」


 オロチ本体は俺の攻撃を受け流すのではなく、さっと身を翻して避けると、そのまま俺の首辺りに手刀を落とした。

 あまりの威力に俺は膝を地面に落とす。


 痛い。痛いが、ここで意識を失うわけにはいかない。


「ま、だまだ」

「しぶといわね。しつこい男は嫌われるわよ。はぁ。処置が大変だからこれ以上傷つけるわけにはいかないって思ってたけど……。このタフさなら、少しくらいいいわよね。『水圧刃剣(アクアブレード)』」


 オロチ本体が手元に顕現させたのは、魔法でできた剣。

 そしてそれは俺の脇腹へと刺し込まれ、意識をもぎ取ろうとする。


「ちょっやりすぎちゃったかしら。でも、そのレベルならこの程度で死ぬわけないわよね。さぁ、次は巣に運ばないと。あんたたち、運ぶのはお願い――」

「まだ、終わってない、ぞ」

「え?」

『接触。レベルアップ。4000レベル。スキルが強化されました』

お読みいただきありがとうございます。

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