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152話 超える

「……そう。やっぱりおかしくなってますね、あなた」


 赤は嬉しそうな顔から真顔に変え、俺を掴むその手には熱を込め始めた。

 どうやら赤は逃がさないよう、このまま俺を焼くつもりらしい。

 スキルを行使できるようにすると、神測のアナウンスは言っていたけど……どうやってこれから逃れ――


 ――ボコ……


「は、はは……。油断したわね。今の私は……あの時とは違う! あんたと戦える、超えられる!」「ハチ、ちゃん……。そう、この人間にあてられて……。なら、もう一回分からせないとですね」


 俺を掴んでいた手がびくんと動いたかと思えば、今度はぶくぶくと膨らみ始めた。

 これには流石の赤もしまったといった様子を見せ、慌ててもう片方の腕でそれを押し込む。

 そして汗を溢しながら振り返った赤の視線の先には、動けなくなっていたはずのハチが立ち、両手をかざしていた。

 その足元にある魔法陣から察するにこれもハチの魔法なんだろうけど……赤に気付かれず、しかも確かなダメージを負わせることができるなんて、俺の変化、レベルアップによる契約者への影響は想像以上なのかもしれない。


「あいつの身体に残る神水よ。その血に溶け……暴れちゃいなさい!」「うっ……あぁっ!」


 赤の全身で凹凸ができたり消えたりを繰り返す。 その度赤は悶え苦しみ、ハチの表情もつらそうになっていく。

 恐らくだが俺が水の剣で赤を斬ったことで、それが体内に残った。 それをハチは外から無理矢理操作……赤を操作するなんて芸当は陽葵さんの魅了でも難しかったのに、本来そういった目的をもたないだろう神水に操作効果を与えるのは相当な負担に違いない。


「遥様! い、今のうちに!!」


 早くも慣れてきたのか、それとも対応してきたのか、赤が俺に手を伸ばそうとする。

 でもスキルが使えるようになった今、これに捕まるなんてことはないだろう。


『……多重乗斬(ゴウトエッジ)(イン)を発動できます。発動しますか?』


「も、ちろん」


 アナウンスの問いに答えた。

 すると……。


「ぐっ! ああああああああああああああああ!」


 赤の伸ばした腕が絶叫と共に宙を舞った。


 どうやら強化された連撃は不可視で、赤もこれを避けることはできなかったらしい。


 どこからともなく自分を切り刻もうとする攻撃なんて恐怖そのものだが、赤の顔に恐怖はない。 むしろこれを攻略しようと、タイミングをみて様々な箇所を炎に変えている。


 常に身体を炎にはできないようで、そのことに苛立ちがさらに高まっているようだ。


 また切り傷によって痛々しいその姿になっているが、切り口からやや炎が上がり、再生の予兆が見られる。

 炎化を持続できないのはこれと両立するのが難しいこともあるのかもしれない。


 完全に押している状態、ただ相手が諦めないうちはカウンターされる可能性を否定できない。


 しかしそんなことを考えている間にも見えない斬撃は続く。 何度も何ヵ所もそれは赤を襲い、反撃する隙をまったく与えない。


「この、私がこんな馬鹿なことって……このやり方は主義じゃないけど仕方がない――」



『――コンボ威力上昇。火竜に対して素手によるダメージが可能になりました。神測……身体回復率5割。状態異常に対して再生の効果を発動させることに成功。再生を開始。神測による補完は以上になります』



 赤が何か呟き、諦めたかのようにうつむいた瞬間、俺の頭の中でようやくお目当てのアナウンスが流れてくれたのだった。

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