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150話 赤

レベルアップのアナウンスが流れた。

 その影響で身体は疲労感がないどころか、生きてきたどの日よりも調子がいい。


 それは今までの俺は重しを担がされたまま生活をさせられていたのか、と錯覚してしまうほど。


 今ならどんな相手にも勝てる。


 漲る力と自信に酔いしれそうになるが、それをぎりぎりのところでさせないのは目の前にいる敵のお蔭。



 さっきまでの大きな身体はどこへやら。

 火竜はハチと同様に人間の姿へと変化していた。


 禍々しさといった点では竜だった状態の方が勝っていたが、不気味さと殺気はこの形態になってからの方が強い。


 毛が逆立つような感覚はこの殺気によるもので、当然俺に油断なんてさせてはくれないのだ。



 ぼさついた長い赤髪と垂れた目、その割に丁寧な口調のお姉さんという休日のOL女性のような印象だが……。



「気を抜いてくれそうにはないな」

「……当然。私、怒ってますから。それに……その変化を見せられれば、こうなります」



 火竜の視線が俺から一度も離れない。

 レベルアップした俺も他からしたら簡単に見て取れるほど変化しているのだろう。


 感覚的に人から外れたような姿になっているってことはないだろうが……。


 それでも火竜の汗のかき方や足取りの重さを見るに大きい変化なのだろう。



『レベルアップに伴い契約モンスター、また同モンスターと契約している者の基礎ステータス、レベルアップ時の上昇値が向上。これは新しい身体、システムの影響を受けての修正という位置づけになります。【剣生成(未熟)】が【剣生成(成熟)】に進化しました。パッシブスキル:全体性超強化を取得しました。新たにコンボシステムが解放されました』



 にらみ合いが続く中アナウンスが淡々とレベルアップによっておきた変化を知らせてくれる。


 コンボシステムとかますますゲームらしさが高まるな。



『――更に強化された神測による環境及び人体の測定、それに対応する能力を顕現し補完……抵抗力付与、抵抗力強化を発動。抵抗状態解除(小)を取得。これらには時間がかかり、完全ではありません。現状の神測の強化段階ではこれが限界となります』



「うっ」



 続けてアナウンスが流れると、いつもの頭痛が起きた。

 身体が強化されたからなのかそれはほんの一瞬。


 しかも大した痛みじゃなかった。


 だが、それは俺だけで……。



「くっ……。ああっ!! あなた、な、なにをしたの!!」



 火竜は酷く苦しむ様子を見せた。


 この間は当然隙だらけ。

 攻撃に移らない理由がない。



「それはお前を倒した後教えてやるよ」

「ひ、きょうもの!! くっ、防御用の炎を展開――」



 悶え苦しむ火竜目掛けて一直線。

 俺は剣を振るモーションをとる。


 するとこちらの意思を汲取ってくれたのか、自動で剣が生成される。


 これは水の剣。ということは俺の状態を読み取り、そこから今までで最も強い剣を生成してくれたのだろうか?



「――う、ああああっ!!!」

「いいや。それよりも強い、鋭い」



 水の剣の刀身は血雫と同じくらいの輝きを放っていた。

 そしてそんな剣に火竜の押し込む俺の力が作用して……ようやくまともな一太刀を浴びせることができた。


 しかもそれは咄嗟に火竜の腕周りに現れた炎の魔法陣、鱗なんかよりも硬い感覚のある防御魔法を切り裂きながら。



「に、人間が、私に……。この階層を任された、火の竜である私にここまで……。許さない、あなただけは絶対!!」

「火の竜……。対応レベル10000以上。出会ったばかりのハチよりも高い攻撃力に、再生力、その支配力は竜の中で最も高い、か……」

「ええそうです! 私は選ばれたモンスター! 竜の代表属性、炎を操る支配者……。あれ? あなたなんで私の情報を?」

「ああ。レベルが上がってスキルも強化されて、今まで見れなかった情報もこれで見れるようになったんだ。凄いだろ。えっと……あかさん。いや、『赤ちゃん』の方がいいか――」



「いやぁぁあああぁあああっ!! その呼び方だけはやめなさぁああぁぁあああいっ!!」

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