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147話 お気に入り

「たった2人であのモンスターたちを倒しました、か……。ドラマティックな展開に酔ってしまうのは分かりますが、差が分からないわけではないでしょう?それだけ私はあなたたちを評価しているのですからあんまりがっかりするような行動はとって欲しくないですね」


 相変わらずの丁寧な口調。

 だが、冷静なそれは今までよりもトーンが二回り低く、火竜がどれだけ怒りがよく表れている。


 また雑にばら蒔かれる殺気と余裕な口ぶりからして、陽葵さんの『魅了』は無効化されてしまっているのかもしれない。


 それでも陽葵さんは走ることを止めていない。

 諦めた目をしていない。


 その姿に感化され、そして大切な人が最悪の結末を迎えないため、俺は身を焼かれながらも必死に前進する。


 せめて、せめて2人を逃がす隙くらいは――



 ――じゅ……。



「え?」

「そんな、あり得ません!!」



 消えた。炎があっという間に。火の粉も……もう舞っていない。

 『魅了』が効いている様子なんて微塵もなかったのに。



「まさかあなた……ふふ、その行動力と頭の切れ、それに性格と顔までやっぱり私の好みすぎます。本当はもっと怒るべき場面だと思いますが、特別に賛辞を送ります」

「それは……どうも。ごめんなさい、遥君。私じゃこれが限界だった……みたい」



 高速で駆けていた陽葵さんは火竜の前で止まると握っていた剣をその身体に当てた。


 そう『当てた』、だ。


 それほどまでに陽葵さんはこの数秒で消耗してしまっていた。

 充血する目、口から流れ出る血。



 陽葵さんの『魅了』はあくまで慎二のスキルを真似たもの。

 だからといってこんなに反動があるのは陽葵さんのスキルがおかしく反応したからなのか?



「――私自身のコントロールは不可能だった。だから内在する炎、炎を帯びた魔力、これらをできる限り、ばれないよう抑制してコントロール。でもそれは通常不可能な芸当。だからスキルの効果を最大限活かすために身体や精神を限界まですり減らした。その痛みは相当なものだったはずです」

「……」

「しかも、そんな状態で私との契約を必死に拒んで……それが可愛らしすぎて、愛おしくてついつい力が入ってしまいました。殺す気はなかったのですが。お気に入りのおもちゃほど脆いのってどうしてでしょうかね?もっと腕や脚を引っ張って苦しめて……どんな顔をするか見てみたかったです」

「……おかしかったのは『レベルと力の差』、あのスキルをも無効化するこいつ自身……。それとたちの悪いサディズムだったってわけか……。陽葵さんにはハチの再生力があるが、次はもう触れさせない。お前みたいなやたのおもちゃになんてさせてやらない」

「……。こっちの人間やあのこ……ハチちゃんと違ってあなたはあまり好みじゃないです。はぁ、何もできなかった人間が今更どうするというのでしょうか?」



 地面に倒れ、意識がないというのにその目を火竜へと向ける陽葵さん。


 そんな陽葵さんを見てニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていた火竜は俺の言葉を聞き、面倒な様子でこちらを向いた。



 あの顔をぶん殴りたい。



 そう思った時俺の頭に再びアナウンスが聞こえたのだった。



『――戦闘開始を神測。初手に有利となるために【超身体強化】を発動。このスキルは強化されたことにより反動なし、パッシブスキルとして常に効果を発揮することになります。また剣の上位スキルが顕現。【剣生成(未熟)】を取得しました。身体の作り変わりによる大ステータス上昇、また新たなスキル取得やその進化、システムの解放などはレベルアップ時に起こります』

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