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145話【陽葵視点】 多分

「遥君……。私、また助けれなかっ――」

「生きてる。というか死んだけど、問題ない。……ううん、問題はあるけど……」


 ナーガを倒し、背後からモンスターが襲ってくる気配も消え、戦闘の緊張感が薄れると目元が熱くなっていった。


 情けなくて、遥君には聞こえないのに謝罪の言葉を告げたくなる。


 そして口を開いたとき、私の肩にハチさんの手が置かれた。


 なんともはっきりしない言い方でまどろっこしいと思う、けど……。


「遥君は助かる、の?」

「多分。さっきから契約者が死んだっていうアナウンスと再生されたってアナウンスが何度も繰り返されてるから。あいつが相手でも私と尻尾、それに契約者との命の共有は切れないみたい」


 ハチさんの言葉のお陰で今度は違う意味合いを持った涙が込み上げてくる。


 だけど喜んでいる暇はない。


 そう思って私は目元を服の袖で拭くとハチさんに問いかける。


「でも何度も死んでるってことはそれだけ痛み、辛い思いはしている。だから『問題はあるけど問題ない』なのよね?」

「そう。このままだと身体は無事でも心がダメになってしまうかもしれないわ。早くあいつを何とかしないと」

「でもこの先、火竜を倒すのは……」

「それどころか周りの火の粉を吸い込めば内側から焼かれるし、滅級の魔法でもあいつの縄張りの効果、炎を消すのは不可能。近づくのさえ困難ね。……それが普通のモンスターや人間なら、ね」

「それって……」

「後ろを見て」


 ハチさんは得意そうに後ろを指さした。

 するとそこには動力源となっていた熱を帯びた魔力を奪われ、干上がり死んだモンスターたちの山が。


 どうやらこの一瞬でハチさんはナーガを除く全てのモンスターたちを処理してしまったらしい。


 触れただけで干上がらせる……。ううん、この一瞬でこれが可能ってことはもう触れることすらも必要なくなってしまったのかも。


「すごい。それに……ということはつまり、その分の魔力がハチさんの手元にある、ってこと?」

「ご名答! 流石に陽葵は頭が回るわね。元々練り上げていざって時ようにとっておいた分と合わせれば火竜の縄張りの効果に干渉できる力をちょっとだけだけど行使できる……と思う。今なら炎の抑制だってできるわけだし」

「思う……なのね」

「しょうがないでしょ! こればっかりはやってみないとわかんないんだもん!」

「ごめん、ごめんなさい! 意地悪で言ったわけじゃないのよ!」


 頬を膨らませて拗ねるハチさんを宥める。


 見た目は大人なんだけどこういうところを見ると幼く感じるのよね、ハチさん。

 まぁ今のは私が悪いんだけど……。



「と・に・か・く! あいつが他に何かしでかす前に仕掛ける必要があるわ!」

「そうね。だけど、火竜に近づくことができたとして私たちに倒せるのかしら……」

「私の魔法には反動がある。だからあいつに一撃を入れるまでにはどうしても時間がかかる。そもそも私じゃ炎を抑制しても一撃入れられない。倒せない」

「私もナーガで精一杯だったのに、火竜が相手じゃ……。ううん。倒せなくても、遥君にこびりついたあの炎を……。火竜を一時的にでも……」


 ハチさんの魔法と同じ、確証はない。

 でも、試してみる価値はある。


「……何か作があるのね?」

「ええ。あんまり信用できないスキルを使うことになるけど」

「じゃあ私はスキルじゃなくて陽葵を信じるわ!……遥様をお願い。ふふ、まさかあいつに一泡拭かせてやれるかもしれない時がきたなんて……こんな時に不謹慎だけど楽しくなってきたじゃない!さあ、準備するわよ!」


 そういってハチさんは魔法陣を展開。


 私はすかさず火竜の側まで近づくため、深呼吸。

 再び気持ちを落ち着かせたのだった。

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