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141話 炎背

「ぐっ……」

「……なるほどですね」


 攻撃を避けられないと判断した俺は剣を盾にした。


 あれだけの切れ味だったこの剣であれば切断とまではいかずとも、反撃して成立する。


 そう思っていたのだが、手応えは最悪。

 例えるなら包丁で太い釘でも切ろうとしているような無駄な感触。


 食い込むことさえも許してはくれない、そう思った俺はそれでもやや尻尾の勢いが緩くなった隙をついて跳ねた。


 勢い余った火竜の尻尾はそのまま空を切り、火竜自身は少しだけ顔に真剣な眼差しを宿した。

 火竜の想定以上に俺の防御面が優れていたのだろうか?


「いや、きっとこの剣に驚いたってところかな。……水流圧殺砲(アクアポンプ)


 俺は空高く跳ねると続けて魔法陣を展開。


 火竜目掛けて水の光線を放ち、その反動を用いて一旦距離をとる。


 すると火竜はそんな俺の攻撃を今度はその羽による機動力を使わずに簡単なステップでかわす。

 決して速くないその動きはまるでその範囲、威力を完全に理解しているように見えた。



「『あのこたち』と同じ様に逃げるのが得意なんですね。私はもっともっとこの拳、肌を交わして遊ぼうと思っていたのに……。逃げられると意気消沈、ずっと追いかけるのは面倒。だからまずは逃げられないようにでしたね。『炎背』」



 再び翼をはためかせた火竜はさっきよりも激しく炎を散らせながらもゆっくりと移動。


 宙に火の粉がジェネラル・ミノタイタンの時よりも高く広く舞う。


 それを飲まないように俺は咄嗟に口を抑え、もう一度距離をとろうと魔法を使おうとした。


 しかし何故か魔法陣が展開されてくれない。

 これは一体――



「!?」



 奇妙なスキルに面を食らいつつも火竜の動向を観察していると、背中に火照りを感じた。

 それは俺がこの状況から脱しようとすればするほど熱くなり、違う思考、火竜に一撃与えようと考えるほど冷めていく。



「これは……。ってまずい――」

「大丈夫です。この火の粉はあなたの身体を蝕めない。ただその代わりにその精神、思考に蔓延り……私と戦うことを強制させる。反対すれば身体は燃やされます」

「逃げれば死ぬ、か。恐ろしいスキルだな」

「はい。でも発動には条件があって……それは対象がある程度の強さであること、『互い』に同じ炎を背負うこと。魔法を禁じること。火の粉を浴びせること……だから私も大分久々ですね、使うのは」

「なるほど。じゃあ光栄なことだって喜んだほうがいいのかもな」

「ふふ。喜ぶ暇があればですが。きっと悲鳴をあげるのに必死になりますよ」



 そう言って翼をはためかせた火竜。

 再びの高速移動は俺の目では閃光でしか捉えられないほどで……気付けば組まれた火竜の両手が俺の頭上にいた。



「ぐああああああああ!!」



 その移動方法が魔法に含まれないことに対する不服を感じるまでもなく、俺の身体には凄まじい衝撃と重さがのしかかり、踏ん張りを効かせた脚からは骨の折れる音が響いた。


 遠のきそうになる意識。


 そんな中俺の頭ではカウントが残り15秒まで迫っていた。

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