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136話 40階層

「――神測」



『――敵隊列を確認。後方……ナーガ及びジェネラル・ミノタイタンの二部隊構成。全モンスターの状態異常、恐慌。こちらを視認から攻撃に転じ、攻撃を受けるまで……遅くても10秒。フロアトラップはなし』



 分かりやすくボス部屋といった様子の40階層は広めでやや傾斜あり。


 これは敵が俺たち、侵入者を攻撃しやすい仕掛けなのだろう。

 ただし神測アナウンスが言うにはトラップがなく、あくまで真正面から戦うことを前提とした潔い作りは好感すら覚える。



 サディストの人間を弄んでいたことを思えばもっと狡猾な性格をしていると思っていたが、案外――。



「あなたたち。分かってますよね。負けたほうが私の餌になるってこと」



 もう少しでこちらの魔法攻撃が広く届く範囲に入る。

 敵による攻撃までの時間を考えてもこちら側の敵は早々に一掃できると確信していた、のだが……。

 


 穏やかな火竜の一声が響き渡った瞬間、俺の正面で構えていたモンスターたちの雰囲気が一変。

 攻撃のための構え、予備動作もないままにモンスターたちは凄まじい速さで突進を開始。


 中には咄嗟に振り返り走り出せないと判断したのか、そのまま地面を蹴って飛ぶように突っ込んでくる個体まで。


 絶対に俺を殺す、負けたくない……そんな強い意志がモンスターたちから感じられる。



 これが恐慌状態、火竜による恐怖支配。



 はぁ。一瞬でも俺たちと通じ合う気の良さがあるかもしれないと思ったんだけどな。



『正面、5匹のハイ・ミノタイタンがスキル『重破斬』を発動。攻撃時斧の重量が急上昇。この斬撃は致命傷に繋がります。またスキル主を基準にした場合の攻撃速度は【遅】』



 再び鳴ったアナウンス。


 その内容から察するに接近戦は危険……このまま視界の悪くなる広範囲魔法を使えば最悪の展開も考えられる。



「なら安全に水の弾丸で撃ち落とし……」



 ――バン!


「ぶもおおお!!」

「え?」



 ハイ・ミノタイタンたちは俺の元に辿り着くよりも先に担いでいた斧を振り下ろした。


 それにより硬い地面は割れ……破片が高速で散った。



「くっ」



 俺は魔法の展開を諦めて身をかがめた。


 だがこれで完全に避けれるわけはない。

 微かに破片は服や背を掠め、痛みが襲った。


 そうして俺の瞼は反射的に閉じられる。

 それは約1秒。だけどその1秒がこの階層にいる全ての存在にとっては大きく、それぞれの状況を好転させる。



「ききゃあ!!」

『ミニウィザード(紅焔)の魔法範囲内です。全4匹は上方。攻撃は右前側から炎の棘が3、対になる場所から1』



 いつの間にか上空に浮かんでいた、というより飛びあがっていたミニウィザードたち。

 その存在をなんとか薄めで確認。


 アナウンスの情報を頼りに攻撃が届かないであろう場所まで下がった。


 強襲を仕掛けるはずだったのに……まさかこんな反撃を喰らうなんて思ってなかったぞ。



「凄い連携だ。だけど……」

「ぶもがあ!?」



 体勢を崩されたところに直接攻撃を仕掛けてきていた3匹のハイ・ミノタイタン。

 振り上げた斧は相当の重さがあるのだろう、風を切る音はかなり大きい。


 とはいえ、俺にはそれがはっきりと見える。反応もできる。

 魔法攻撃は一掃するため、安全に気を使うため。


 それを俺が接近戦に弱いという証拠にするのは間違っている。



 ――すっ。



 まるで豆腐を切ったかのような感覚が腕に帯びる。


 俺はハイ・ミノタイタンの腕にハチの神水を使い顕現させていた剣をあてがっただけだってのに。


 力の差は想像以上。

 自分がこいつらにとって強者なのんだと改めて実感し、少しだけ快感を得てしまう。



 ま、だからって油断していいわけじゃないのだけど。



「ハチ! 援護を頼む!」

「任せて! 遥様!」



 俺が斬ったのは3匹。となればあと2匹から攻撃が飛んでくるのは当然。

 しかも正面にそれが見えないってことは……残りは上。


 それはこのまま俺が適当に剣を振り回しても倒せるかもしれない。

 だが俺は見てるだけじゃ暇だろうと、この状況を遠目から確認しているはずのハチに攻撃を頼んだのだ。



 ――ばん。ばん。



 上空で響2つの鈍い破裂音。


 連携ができているのは俺たちも一緒ってわけだ。



「き、きき……」

「遅い」



 一連の戦闘で恐慌状態にも関わらずミニウィザードたちの動きが止まっていた。

 そんな1秒を大幅に超える隙を見せればどうなるかなんてこの場において決まっている。



「それは……死だ」



 断末魔が聞こえないように俺はミニウィザードたちの首を落とした。

 そして剣に付いた血を振り払いながら、俺はこちら側のモンスターたちの指揮をとっていたジェネラル・ミノタイタンを睨んだ。

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