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128話 余裕の顔

「当たった。鳩尾に、当てたのに。全力だったのに……」

「余所見なんかしてていいのか?」

「え?」


 ――バキ。


「ぐああああああああああああああああああ! 痛い! 痛い!」

「今ので気を失えば楽だったのにな。強化されたのがむしろ慎二、お前自身を苦しめる」


 あり得ないと言った表情で自分の拳を見ていた慎二。


 俺はそんな慎二の顎に容赦なくアッパー。

骨にヒビの入る音が聞こえ、慎二は痛みに悶える。


 脳震盪を引き起こせればと思って顎を狙ったが、気絶っていう状態異常を火竜の力が毛嫌ったのかもしれない。


「く、ぁぁあぉあ! はぁはぁはぉはぁ……さ、再生を、早く……」

「気絶狙いは不可能、ね……。じゃあそれができるように促してやるか」

「や、やめろ……。俺はまだ治りきってない……。やめろ。やめろって言ってるだろうが!!」



 慎二は怒号と共にその口をも竜に変えて大きく開いた。


 次第に溜まっていく黒色混じりの灯りと口の奥に見える一層細かく描かれた魔法陣は強力な魔法の気配を感じさせてくれる。


「『神測』」

『対象の発動魔法を測定計測。魔法:疑似黒炎。闇属性と火属性の双属性魔法。等級は神話級。通常の炎とは異なり100tの重さを持つ。また受けた対象には100倍の重力がかかる。発射速度は遅い。これを消滅させるだけの神話級魔法を契約対象のオロチを利用した上で自動で選定。状況を有利にするための補完を完了。神話級魔法を発――』



「――があああああああああああああああああ!!」



 神測によって魔法の情報を取得、それに向けてこちらも魔法陣を展開させているとついに慎二はその口から黒い炎を吐き出してきた。


 黒い炎はその重みと重力の効果で辺りを凹ませながら前進。


 速度は遅いという説明だったが、そんな風には見えず少しだけ心配が生まれるが……。


『対象のスキルを測定計測。スキル名:火竜の咆哮。火属性魔法の威力を2倍。速度を3倍にする魔法限定バフ。発動予定魔法を対象の魔法とスキル、2種を打ち消す神話級魔法に、強化補完』


 そんな心配を神測は意図も簡単に吹き飛ばしてくれる。


 このスキルのチートっぷりには改めて驚かされるよ。



『――尖水・超圧縮』



 何重にも展開された魔法陣から発射された針のような細長い水の塊。


 一見脆そうなそれはその速さからなのか地面を抉り、舞う土を波のようにうねらせながら進む。


 俺の眼ではなんとかそれがそんな風に見えているが……。


 ――キィン!


 この音。凄まじい風切り音から察するに普通の人間にはもう線で追うことすら――



 ――パァン!



 十分に思考する余裕すら与えぬまま水は黒い炎に衝突。


 その重い重い一撃を弾けさせた。


 右に回るようにして弾けるその様を見るに発射された水は高速で右回転もしていたのだろう。


「そん、な……」

「というわけで殴りあいの続きといこうじゃないか。そっちは回復能力が高いんだ。いくら俺の攻撃力が高くても有利なのはそっち、だろ?」

「……。余裕そうな、馬鹿にした顔で俺を見るな!」


 考えることを放棄した慎二は開き直って俺に殴りかかる。

 そして俺も好きなだけその顔を殴る。


 だが流石の再生力と開き直ったことで痛みを無視できるようになった慎二の手は止まらない。


 当然本人も止まらない、止まらせないと思っていたはずなのだが……。


「――くそ! くそ! くそ! 死ね! 死ねよ! もっと、早く! 早く再生を!再生、を……。再生が……弱まっている?」

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