117話 【苺視点】 こぶ?
「ぎ、ぎぎ……」
「あ、身体の震えも止まった。取りあえず攻撃――」
「は、しなくていいと思うぞ。それとさっきのはすげえな。かなり強力なスキルだった。多分対象は絞ってるんだろうけど、それでもなかなかな衝撃だったからな。その証拠にほら、宮平はふらふらで千鳥足だ」
「ス、ステータスの防御力とかそんなのは関係なくて、多分錦さんは身体強化のスキルを使っていたからなにもなかったんだと思います。べ、別に俺が特別弱いとかそんなことではないですよ!そう、絶対に!」
武器を持って振り上げた手。
それを錦は掴んで、なんでか嬉しそうな顔で誉めてくれた。
宮平は……いつもより情けない。
でも、それだけ今の振動スキルは強力だったってこと。
これが解放されたパッシブスキル……。
これは、ちょっとテンション上がる。
「ぎ、ぎぎ……」
――ドタ。
そんな風にして話してるとダミーはその場に倒れた。
麻痺とかと同じ状態異常効果かな?
「これの効果時間が長かったら更に強力。取りあえずの拘束方法として扱えるな。すまんがその辺のスキル情報を確認してもらってもいいか?」
「ん。わかった」
錦に頼まれてパッシブスキルの詳細をアナウンスに問いかける。
これ、答えてくれないこともあったりするけどさっきは向こうからアナウンスしてきたから大丈夫だよね?
『――パッシブスキル【声震負荷】。振動スキル発動時に自身をも振動させ、対象の脳を震えさせる声を発する。それは発動させたスキル、及び自身のレベルによって効果が変動するだけでなく、その個体とのレベル差によって効果が異なる。また、対象以外にも近い場所に存在する人やモンスターにもその一部影響が及ぶ場合がある。今回の場合対象に24時間の効果、さらに対象外の存在に超軽度の効果を及ぼした』
「苺、どうだった?」
「24時間。1日は拘束できるみたい。多分このダミーが生まれたばっかりで強化もされてなかったからだと思う」
「24時間!? 改めて凄いぞ嬢ちゃん! どうだ、いっそのことここでずっと働くのは――」
「それは嫌。絶対嫌」
「錦さん、冗談はともあれ苺のスキルがあればこいつらを見張ってる必要もないです。早く他のダミーのところに向かいましょう。そう、早く。それで他も拘束したら久々の外で……苺、俺今日ほど君に感謝の気持ちを伝えたいって思ったことはないよ」
「いいから早くいこ。外で暴れられたら大変だから」
「……。そうは言うが、嬢ちゃんなんか楽しそうだな」
「不謹慎だけど、戦うのは好き」
「はは!同感だ!逃げたやつより強いダミーがいるかもしれないってのは心が踊る!」
「錦さん、苺……。はぁ、そんなどっかの戦闘民族じゃないんだから。……って苺、それもしかして怪我か?」
「怪我? どれどれ俺も見てやろう! ……こぶ? いや、これは……」
宮平と錦は私の頭をじろじろと見る。
そういえばさっきのダミーも私のこと変な目で見てたっけ。
「……。痛、くはない。でも、腫れてる? ううん。なんか硬い」
「それ……」
「こりゃあ……」
私が触ってそれを確かめようと髪を掻き分けると2人は何とも言えない顔に変わった。
流石にその態度は失礼だと思う。
けど、それだけの何かがある?
「えっと……。ほら、これで見てごらん」
「宮平、いつもこんなの持ち歩いてるの……。まぁいいや、それより頭頭……。……。……。え? なに、もしかして……『角』?」




