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110話 異形

浦壁さんのスキルよりは少し小さくあるものの、発現させた壁には十分な強度があり、意図も簡単に炎は押し返せる。


 そのお陰で俺たちは勢いよく階段を下ることができ、とうとう36階層に飛び込んだ。


「久しぶりだな。まさか上の奴らがやられるとはまったく思わなかっぞ。いくらオロチがいるとはいえ、あの壁を……。あ?それ、なんでお前が使ってるんだ?」

「さて、どうしてかしら?残念だけど答えを教えてあげるつもりはないわ。ただ、まぁそうね。多分あなたたちは私だけで十分よ」

「……。この前の戦闘で調子に乗っちまったようだな。その態度、流石に鼻につくぜ」


 視線をぶつけて火花を散らす陽葵さんと橋田。


 橋田からしてみれば陽葵さんは自分が負けるきっかけとなった要因で因縁の相手。


 陽葵さんの態度云々など関係なく倒したい相手だったのだろう、その顔は嬉しそうにも見える。


 とはいえ橋田の実力では陽葵さんには届かないことは既に分かっている上、今の陽葵さんは以前よりも強い。


 だからこの戦いは取りあえず一安心、と言いたいところだったのだが……。


「ハチ、あの姿どう思う?」

「スキルでモンスターに変えられた、或いは……考えにくいけど逆に利用しているなんてことも考えられるわね。とにかく、あいつが絡んでいるのは間違いないわ。なんか上にいたナーガたちの手応えが微妙だと思っていたけど、ナーガの強さを維持する分の力をこいつらにあてがっていたみたい」


 蛇のような下半身に爬虫類独特の目。

 橋田に至っては硬質化によって纏ったそれがナーガの赤い鱗と同様に煌めいている。


 この姿を初めて見た人が2人を人間と思うことは難しいだろう。


「おそらくナーガよりも強力な存在……。流石にまったく手を貸さないなんてできる相手じゃないわね。……。陽葵、これを!それとヤバそうになったら勝手に加勢させてもらうから」

「うん。ヤバそうになったら、ねっ!」


 にらみ合いが続く中、ハチが陽葵さん用に剣を生み出して投げ渡す。


 すると陽葵さんは駆け出し、橋田もその鱗のようなものを飛ばし遠距離攻撃を開始した。


「これ、ちょっと鬱陶しいわね」


 陽葵さんはそんな橋田の攻撃をいつものように綺麗に受け流そうとしているものの、鱗は剣に当たる度に小爆発。

 さらには空中に小時間火炎を走らせる。


 元は浦壁さんのスキルである障壁があることでそれによって陽葵さんにダメージが入ることはない。


 しかし火炎によって視界が悪くなったことで陽葵さんの動きは悪くなる。


 そしてそれに合わせて後ろに下がる橋田。


「くそ、厄介な壁だな」

「遠くからずっと攻撃だなんて、男らしくないとは思わないのかしら! 『模倣:超身体強化』」


 戦闘前の勢いとは反対に、とにかく陽葵さんを近づけないようにしようとする消極的な橋田に陽葵さんは苛立ちを隠しきれなくなったのか、自分を強化すると最早受け流すこともしようとせず真っ直ぐに突っ込む。


「ふぅ。そろそろ、やってやれるかな。いやもう狭い場所に仕掛けるのは一苦労。時間も掛かる掛かる」


 するとそれを見ていたもう1人の脱獄犯が橋田の後ろからやれやれといった様子で口を開けた。


 仕掛けるという言葉、ワープの罠、さっきの炎……。


 それに、壁の内側に変わった紋様が……。


「陽葵さん! その壁1度消し――」

「遅い遅い。その壁、それで大爆発するよ。発動者を巻き添えにしてね!」


 俺の忠告が届くよりも先に壁、そしてその紋様に橋田の赤い鱗が接触。


 爆発も走る火炎も10倍、いやその100倍以上。


 轟音が鳴り響く中、壁とその内側は一瞬で真っ赤に染まった。

ウイルス フリー。www.avast.com

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