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109話 模倣

浦壁さんは英雄だとか武勇伝だとか冗談のような言葉を紡ぎながら笑って見せたあと、真面目な声色で一言告げこの場からゆっくりと去って行った。


 去る前に障壁スキルを自分たちに付与して欲しいとは思ったが、その疲れ切った後ろ姿と自分自身にもスキルを発動しようとしない様子からそんな我儘は言えなかった。


 数日。

 俺たちはワープスキルの影響か、ここまでの移動時間を一瞬に感じたようだけど浦壁さんたちはダンジョンで数日過ごしていた。

 最早スキルを扱うだけの体力もないのだろう。


 というか数日もワープに時間を要したってことはここ、結構深い階層だよな。30階層より深いのは当たり前として、奴のいる40階層にも近いのかな?


「スキルを使っておくか」

『神測。現在地の深さ……35階層。39階層、40階層に強力なモンスターを確認。人間の気配。各階層にそのモンスターに近い人間の気配を感知。人間たちに対する適正レベル85。そのモンスターは……遠距離では正確には測定できません』


 レベル85以上か。

 時間を与えすぎたな。でもそれなら俺やハチは勿論ハチと契約している陽葵さんも問題なく戦えるはず。


 ただ39階層と40階層のモンスター、竜だけなら今の俺たちでもどうにかなると思っていたけど似たようなのが2匹もいるとなると……思ったよりしんどい戦いになるかもな。


「……。大丈夫よ。さっきの遥君、かなり頼もしく見えたもの。それに……私だって今のでそれなりに強くなれたんだから」

「奴は強い。それは私が1番わかってる。でも、それでも私は奴と戦うことを決めた。だから大丈夫よ」


 今までよりもどこか自信に満ちたように感じる陽葵さんと緊張からか流れる汗を拭きながら、それでも励ましてくれるハチ。


 そんな2人に応えるように俺は反動でまだ少しだけだるい身体を動かす。


 そしておかしなくらいモンスターのいないこの35階層をできるだけ早く進み、進み、進み……階段を下っていた時だった。



 ――ブオッ!



 俺たちがこの階段を下るのを待っているかのように正面にちらりと炎が見えたのだ。


「これで焼け死んでくれりゃあ儲けものなんだけどな」

「オロチがいるんだ、この程度攻撃は掻い潜ってくる。それどころかいきなり襲ってくる可能性もある。お前は作戦通り俺の後ろで攻撃してろ。守りは、俺が請け負うからよ。『硬質化:炎撃』」


 聞き覚えのある声が階段の先から聞こえた。

 

 おそらく敗北経験のあるあいつが40階層までの道のりで比較的浅い階層を担当しさせられているのだろう。


 階層ごとに数人を置いて俺たちを足止めして……。

 足止めして、どうするんだ?

 

 俺やハチのようなイレギュラーを除けば、十分なレベルは確保できているはず。

 それにワープスキルを用いればわざわざ俺たちと戦闘をせずとも、ダンジョン街に向かえる。


 わざわざ俺たちと戦う意図は――


「いいじゃない。弱い奴らが戦ってくれるなら、そっちの方が好都合よ。悪いけど、ここは私のために相手は譲ってね。遥君」


 襲いくる炎、2人以上の敵がいることの確定、そんな声の主の1人であろう橋田の実力。


 陽葵さんにとってはこれらが合わさっているこの状況は打開が難しい、いや不可能なはず。


 それなのにこんなにも声は明るい。

 俺を励ましてくれた時もそう。


 なんとなく聞き流した陽葵さんの強くなったという言葉、あれは俺が思っている以上に変化をもたらせて――


「『模倣:簡易障壁』」


「浦壁さんのスキル!?」

「これはなかなか、面白いスキルを取得できたみたいね。さっきの影を倒したことが影響したのか、或いは技を研磨するっていう過程で真似るっていうことが得意になったからなのか、いえ……強くなりたいって思いによるものなのかしらね」

「多分、全部ね! 2人は私の後ろに! 突っ込むわよ! ふふ、スキルを試すには丁度いい弱さ、絶好過ぎる相手ね!」

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