異世界ドラゴンカーセッッ概念~悲しみのアシッド・ドラゴン~
何やってんだ、私。
オナホール。それは現代を生きる紳士達による革新的な発明である。
結婚率が低下する昨今、初交を迎えぬまま死亡する紳士たちは数多い。嗚呼、哀しきことである。
しかし紳士達も悦楽を全く知らぬわけではない。相手に恵まれず、さりとて悦楽を求める求道者達は魔法の筒の製造に性交……もとい成功するのである。
それこそ、オナホール。
五千円程度の気合の入った非貫通型を買っても結局は手入れの関係で千円程度の安価なホールを使ってしまうアレであり、水っぽい音を提供するASMR作家の頼もしい味方である。
さて、前置きが長くなったが此処に一つの異世界がある。
ここは異世界アルザーメ・ン・アジェンダ―。
何か低俗なパロディみを感じないでも無いがその内実はみんな大好きナーロッパである。
そんなこの世界なのだが、ここにも例によってオナホールが存在していたりする。
但し、使用者はドラゴンであるものとする。
今回はそんなトンチキな世界を見てみよう。
♪ ♪ ♪
転生者、ユータの朝は早い。
貴族として生れ落ちてはや数年。前世の知識と師匠の教えにより天才と呼ばれたこの少年は冒険者ギルドの前で仁王立ちしていた。
「俺の英雄伝はここから始まるんだな……!!」
その目は希望に満ち満ちており朝日と遜色ない輝きを放っている。
それは目だった失敗の無いからこその驕りでもあるのだが、まぁその辺りは割愛しよう。本旨はオナホールである。
さて、そんなユータ少年がギルドに入るのとほぼ同時にイベントが差し挟まる。
「た! 大変だ!! 馬車が襲われた!!」
「何だって!? 誰がやったんだ!? 野盗か? 護衛は付けなかったのか!?」
「……ドラゴンだ」
男の放った一言で騒がしかったギルドの内部が急に静まり返る。
いや、時折「あちゃー」と何か微妙な感じになっている。
「どうかしたのか?」
そこで男に声を掛けるのはやはりユータだった。この少年、無双する気満々である。
「あー、ウチの荷車がドラゴンに襲われちまってな」
「それは大変だ!! 俺が退治してきてやる!!」
「いや、あー。その、な。気持ちは嬉しいんだが……」
「俺、領主の息子ぞ!!」
「な、なんと、あの神童と名高い……。それはそうとこればかりは……」
やんややんや。
ユータが強権を振りかざしてドラゴンの場所を吐かせると早速対峙に……
「待ちな」
待ったがかかった。
「なんだよ邪魔すんなよ」
「俺も同行しよう。なに、この手の仕事は慣れてる」
それは如何にも強そうな強面のガチムチおっさんだった。
「あ、あれはメスガキのオナール! メスガキのオナールさんじゃないか!」
モブが喝采するが、ユータの内心は疑問符であふれかえっている。
何故に、メスガキ。あんなにガチムチなのに。
「手伝ってくれるのか!」
「おう、チビ一人じゃ荷が重いからな……相手は恐らくアシッド・ドラゴン。気を付けないと骨まで溶かされちまうぜ」
「じゃあ頼む!!」
こうして、メスガキが仲間になった!!
♪ ♪ ♪
移動シーンはカット……カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットォォ……!!
♪ ♪ ♪
こうして現れますのは荷車に覆いかぶさる巨大な体躯!!
漂いますのは強烈なイカ臭さ!!
「えっと……これは」
「ああ、その通りだ」
このドラゴン、荷車と交尾してやがる……。
「襲われたって言ってたのに何なんだよこれ!?」
「いや、襲われてるだろ。性的に」
「性的な意味で襲われる荷車があるか!!」
言い合っている内にも木材をギシギシ言わせながらドラゴンが一心不乱に腰を振る。
ああ、ドラゴンともあろうものが……あまりに哀れ。
「いいか、アシッド・ドラゴンってのは生殖の際に出す液体……まぁ明け透けに言えば精液が強酸性なんだ」
「は、はぁ」
ここでいきなり保健体育の授業が始まる。実地授業だ。
「強酸性だから何なんですか?」
「メスが性交を嫌がる」
「まぁ、そうだろうな」
事実荷車の木材はしゅうしゅう言っているし。
「そもそも酸性の液体を上空からぶっかけたら最強じゃね? って進化なんだよコレ」
「結論しってから聞くと何か哀れだが……まぁ確かに上から強力な酸来たら地獄だよな」
「でもな、そうするとメスの取り合いの際により高く飛べるか、頑丈か、酸が強いかしないと生殖できないだろ?」
「厳しいな生存競争……」
「でまぁ強い個体が生き残る訳なんだが……メスは本能的に酸のヤバさ知ってるから交尾を忌避すんだなこれが」
「だろうな!!」
「そのかわりメスにはオスの酸を中和出来るように強烈なアルカリ持ってるもんなんだが……」
「今気付いたけどこの世界アルカリとか中和って概念あったのかよ」
「そうなると、大半のオスは交尾出来ない。が、奴らは交尾したくてたまらない。見ろ、ムラムラが目に見えるようだろう」
「見たくなかったわドラゴンの情事なんて……」
ギシギシ、ギシギシ。
「だから、メスの代わりに荷車を襲うんだ」
「だから何で荷車!?」
「そんなの決まってんだろ……質感が似てるらしいんだよ。メスの内部と」
「それ調べた奴頭いかれてるんじゃねぇの!?」
「否定は出来ないな。ソイツ、死ぬ寸前の一言『あ、これ荷車だわ』だったもんな」
「アルカリィ!!」
アシッド・ドラゴンのメスは強アルカリを有している。それをファックしようとすれば絶命は必定である。
「全く、変な王様だったが先見の明だけは素晴らしかった。ドラゴンと荷車の交尾をドラゴンカー●ックスと呼び、絶対流行ると言って憚らなかった……」
「もういい加減突っ込むの疲れたわ……」
言うまでもないがこの王、ユータと同郷である。
彼の死因はドラゴンとの交尾によるものであった。
「で、これどうすんだ」
「そこで俺の出番だ」
そう言うとメスガキ……もといオナールは蟹股になると腰降りダンスを開始した。
まこと、酷い絵面である。
「ざぁこざぁこ弱酸性。車でへこへこ気持ちわるぅい!!」
「……」
あっけに取られるユータをメスガキは叱咤する。
「早く同じように挑発するんだ! 早く!!」
「嘘だろ!?」
「ざぁこざぁこ弱酸性!! 貧弱短小よっわよっわ!!」
この男、真剣である。
その狂気にあてられたのかユータもしれに倣い腰振りダンスを敢行する。
「ざぁこざぁこざぁこ!! 荷車に負けちゃえ!! よわよわ弱酸性吐き出しちゃえ!!」
その時、ドラゴンが一際強く咆哮した。
「ハァ!? マケナイガ!? ……グルルヴッ!?」
なすすべなく決壊した。
メスガキの大勝利である。
「結局の問題は発情だ。なら、解決方法は簡単。吐き出させちまえば良いのさ」
「うわー」
ユータ少年、レイプ目である。
それもそうだろう。荷車をオナオール扱いするドラゴンに対してメスガキムーブで吐かせて問題解決したのだから。
「しかしメスガキ流はまだまだ途上。あまあま流や囁き流にはまだ及ばん……」
「流派」
「ああそうだ。俺はそのうち王都の大搾精大会で優勝しメスガキ流を流行らせる事が夢なんだ」
ユータ少年は想う。
……自分はこうはなるまい、と。
♪ ♪ ♪
そう決意したユータ少年だったがユータ成年になる頃にはメスガキ流を免許皆伝し、無事王都一のメスガキ流の遣い手になったとさ。やはり神童は神童だった訳である。