3-06-02 摩導具の歴史
マリアとも深い仲になった慎二ですが、今日はイザベラの世界のお話です。
これは私、イザベラの世界に伝わる摩導具の歴史伝説です。
私の世界では、かつて護摩と呼ばれる宗教的な儀式が行われ、その集団の導師と呼ばれた人物が奇跡を伝える時に使われた道具が摩導具と呼ばれていたそうです。
しかし、まだその時代には、宗教と呼ばれる概念はありませんでした。
その導師となる人物が若い頃のお話です。
彼は各地の秘境や奥地にある、いわゆるパワースポットのような場所を巡り、修行をしていました。
その中の1つ、勝手に潜り込んで修行をしていた場所が、実は古代遺跡であり、そこで偶然に最初の摩導具なるものが発見さました。
それは、偶然にもまだ動作するものであり、遺跡には何点かの摩導具が存在していました。
彼は、これは天からの思し召しと考え、それを必死にに調べました。
幸い、その遺跡はかなり大掛かりな遺跡であり、遺跡を調べることでさらに多くの摩導具を発見し、壁に残された摩導具の使い方などの情報を入手できました。
当然、世の中でそのような不思議な現象はなく、それを見せた人たちは口々に奇跡だと言って、その奇跡の話は口づてに広まっていった。
彼は、その不思議な現象を見せる摩導具を使って、奇跡が見れる新興宗教のようなものを立ち上げた。
摩導具に見れる、触れる事で奇跡がみられることを目玉にして集団を増やし、そして宗教団体の始祖となる。
まあ、この世界でいうと、そこは小さなテーマパークみたいなものですかね。
何もない時代でしたから、人々はちょっとした娯楽的な物に触れ、大いに興奮したようです。
そこの場所では、ミサと呼ばれる式典、イベントね、 それが行われる際には、新しい摩導具が発表されることが多く、多くの信者が集まったらしいの。
ミサには信者しか集まれないので、これは多くの信者を増やしたようね。
信者がミサに出席する場合、一番高額なお布施をした者には、導師から摩導具が下賜されたの。
最初はその珍しい摩導具という物を見てみようと人々は集まってきたが、摩導具が自分のものとなると聞くとお金を持った人たちがさらに集まってきた。
いくら払えばその摩導具が自分のものになるかはわからないので、お金持ちはかなり高額なお布施をしたらしいの。
いわば、このお布施は入札みたいなものだけど、お布施としたお金は当然返ってこないから、導師はたちまち大金持ちになったらしいわ。
そのため、金持ちが多く集まることで、資金的に豊かに近くなり、その宗教はそこそこ信者を集めたらしいのね。
あ、そうそう。 摩導具は、魔法の道具ではありませんよ。
マリアの世界とは違って、私の世界に魔法というものはありません。
では、その摩導具と言う呼び方なんですけど、それはいくつかの説があるのね。
1つは、始祖たる導師が古い遺跡の中に埋もれていた道具を発見し、その導師により磨かれて初めて使えるようになった道具であると言う説があります。
もう1つは、そのミサの時に護摩行という儀式が執り行われており、その場で導師から見せられる奇跡を起こす道具から摩導具と呼ばれるようになったという説があります。
しかし、摩導具にご執心な導師は、お金を集める事には長けていたのに、宗教家としてはダメダメだったようね。
もともと宗教などがない世界であったので、後世に残す明確な経典のようなものは創られておらず、始祖である導師の死亡とともに宗教自体は急激に衰退したようなの。
それまでは始祖が独占していた摩導具でしたが、摩導具を手にしていた信者であった金持ちにより、その始祖の遺跡のことや摩導具のことが詳しく調べられました。
そして、それが古代遺跡であることが判り、世界にある古代遺跡の発掘ブームが起きました。
その裏には、始祖が残していた巨額の遺産が、新たな遺跡の発掘の為にばらまかれたとも聞きます。
そのおかげもあり、沢山の遺跡が世界の各地で発見され、多くの摩導具が発掘され、大量に埋蔵されたマナクリスタルが発見されることにつながりました。
それが、時代を経て広まっていき、イザベラの世界の文化や技術として定着したとのことだ。
そう摩導具文化の幕開けです。
発掘された摩導具は、摩導工房は買い取られ、解析されて同じものを作ることで、大量に作られて価格も下がっていき、そして庶民にも広まっていきます。
しかし残念なことに、摩導具の動作原理がわからないため、発掘された摩導具を単に模倣するだけのものであり、新たな摩導具は全く作られることはなかった。
生活に必要な多くの種類の摩導具が発見されていたため、わざわざ苦労して新しい摩導具を作ろうとするものが少なかったのかもしれない。
その後、世界では摩導具の採掘がおこなわれ、発見された遺跡のいくつかに、壁に北の地にある施設の地図や、その施設の絵が残されていた遺跡があったそうです。
まあ、各遺跡には同じ絵が描かれていたようなので、この世界でも壁に地図を張ることがありますが、どうもそんな感じのインテリアであったのかもしれないわね。
そこから、私の探査に行きましたが、マナクリスタルについての神話としてその北の地の話が語り継がれたとのことです。
ただ、古代遺跡の壁の絵は、多くの人がその遺跡を訪れたことが悪かったのか、やがて壁はボロボロになり、今では1つも残っていません。
気が付いた時点では既に間に合わず、模写されたものすらなかったようです。
なので、今となっては北の地は幻の伝説なのです。
今日はイザベラの摩導具の歴史のお話でした。
ということで、今回で自立編は終了です。
慎二はこれまでの生活を捨て、異次元から来た娘たちも新たな身分を得て、全員がこの世界で自由に活動ができるようになりました。
これからは、各自の能力を生かして、新たな航海へ進み始める事になります。




