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3-06-01 安息日

 服部さんが仲間に加わり、慎二君達も新たなステージへと突入です。



 ここのところ、日々何かに追われて、この世界に来たこの娘達とも、ゆっくり向き合う暇がなかった。

 娘達さんは、コンビニで買ってきた何冊かの情報雑誌と研修所に置いてあるPCで情報を集めている。


 昔はキーボードが打てないと使えなかったPCも、いまはマウスのクリックで、さらに指先タッチでも使えるようになった。

 俺はどうも今でもタッチではなく、マウスとキーボードでパカパカ入力する方が好きだけどね。


 真希も東京の知識はテレビによるものがほとんどなので、異次元人と一緒になってどこ行きたいとか、ここはどんなところなどと、ワァワァキャァキャァ賑やかだ。


 なので、最初に俺はマリアとデートである。

 ということで、今日は一日、俺と二人っきりで行動することになった。


 真希と貴子は、この宿泊施設の近くにある、黒い鼠をモチーフとした、テーマパークへ行くようだ。

 サリーと服部さんは、当然のごとく、仲良く食べ物屋さん巡り。

 イザベラは、珠江といっしょに図書館とホームセンターへ。

 唯華は今日は外務省で打ち合わせとの事である。 今、はっきり言って唯華が一番忙しそうだ。


 マリアとは初めての2人きりでのデートであり、お姫様をエスコートする王子様? としては、かなりドキドキする。


「マリアは、どこか行きたい場所とか、買いたいものとか、何かしたいことある?」


 俺達はタクシーに乗ると、マリアはプリントアウトした紙を運転手さんに見せ、ここに行きたいと伝える。

 マリアは、俺に「お城みたいなところですわ」 と、良くわからない答え。


 先日、今の宿泊場所へ向かう際に高速道路での移動となったのだが、その時に見えた場所らしい。

 ここはヨーロッパでないし、お城と言うと貴子と真希が行ったテーマパークが思い浮かぶ。


 タクシーは千葉の高速を途中で降り、人通りが減って少し寂しげな通りに入ると、


「ありましたわ。 やはりこの情報は正しかったです」って


 本当に、そこにはお城があった。


 でもここって、そういうホテルじゃないの?

 スタスタと中に入っていくマリアを追いかけると、マリアは再びプリントアウトを取り出し、「このお部屋はこれですね!」と言ってパネルを探す。


 うー、お城攻略とはいきなり大胆な計画ですね。


 時間がありませんわよと、急がすマリア。

 俺もこんなお城は初めてだよ……


「この間、わたくし山の中で慎二にエターナルをもらった時、ひどく気持ちが良かったのです。

 その後、検疫所で慎二さんのおかげで、わたくしの病気も治ったものと思うのです。

 それを試すためには、マナ溜りに大量のエターナルを流し込んでみたいと思っていましたの。

 でも、皆がいるところでそれを試すことができません。

 すみませんが、今日は思いっきりわたくしにお付き合いいただけないでしょうか?」


「そういうことですね。 わかりました。

 俺にできる事であれば、試してみたいと思います。 俺も興味があります」



 部屋に入ると、中もゴシック様式のアンティーク家具などが置かれて、ちょっと豪華な感じだ。

 大きなベッドに並んで腰かけると、マリアは思い出すように自分の身の上話をぽつぽつと語りだした。


「わたくしは自分のいた世界で魔法が使えました。

 しかし、他の王族が使う魔法の力に比べてしまうと、わたくしの魔法では力が無いに等しいものでした」


「わたくしは器用にいろいろな魔法は使えたのですが、その力はいずれも強くなく、また長く持続もできませんでした。

 その為、王家の魔術師の力としては、全く期待はされていませんでした」


「優秀な魔術師は王国最高の宝であり、特に大切に扱われます。

 しかし私の場合、魔法の力が弱いといっても、多くの魔法の秘密を知っているので、本来であれば敵となりうる他国や貴族に嫁がせたりは国としてできないはずです」


「しかし、王家に反発する一部の貴族と思われる者たちにより、私を国外へ嫁がせる、いや、実際は金銭で取引される事が裏で計画されていたようです」


「大きな魔法を使うためには、体内に大量のエターナルを循環させて、マナを貯める必要があります」


「マナが体のどこに貯まるかというと、魔術師により異なります。

 魔法が使える人は、大抵の場合、幼少期に体のどこかにマナを蓄える感覚が芽生えたと言います」


「多くの方はお腹の中、おへその下あたりにマナを集めるイメージをする人が多いようです」


「この前にもお話したとおり、わたくしの場合、子袋の中にマナを貯めるイメージをしています」


「魔術師同士でその話はしませんので、男の人の事はわかりませんが……」


 これは、恥ずかしくて話さないのではなく、争いになった場合、そこが急所となるから秘密にしているそうだ。



「意識しなくとも、普段から無意識のうちに空間のエターナルからマナを集めており、自分のマナ貯まりに蓄えようとするのです」


「先日、貴子の里で慎二から直接マナを頂きました。

 まだ黒いものを取り除く前でしたので、慎二から入ってくるマナは、その時わたくしが貯められるわずかな量を遥かに超えていました」


「マナ溜まりからあふれ出した大量のマナは、体内の経路を逆流し、わたくしの体の隅々にマナを流しこみました」


「大量のマナの逆流により、体内の経路で流れを阻害していた何かが一気に体外に押し出され、今考えるとその時消え去ったように感じます」


「その後から、体の中のマナの流れがものすごく良くなった感じで、これまで感じなかったこの世界のマナが、わたくしも感じられるようになりました」


「この世界の弱いマナですが、今ははっきりと感じ取ることができます。

 そして、初めて自分の中に少しずつマナが溜まっている実感がしています」



「これまでわからなかったわたくしの魔法の問題点だったものが、この世界に来てはっきりと分かりました。

 マナ溜りの問題もありましたが、わたくしにはマナを流す体内の経路が細く流れが弱かったようです。

 推測ですが、呪いの類の術により、それが体内のエターナルの流れを阻害するようになったのではないかと思います」


「集めたマナを運ぶ力が弱く、たくさんのマナを効率よく貯められない。

 時間をかけてためたマナも、一気に大量に放出できない」


「これは魔術師にとって致命的です」


「あの日のあとからは、弱いながらもこの世界でエターナルを感じられるようになりました。

 体全体の流れが良くなることで、エターナルに対する感度が高くなったのだと思います」


「魔法は、蓄えたマナを使って、周囲のエターナルを操る行為です。

 周囲にエターナルを感じとることができないような場所では、強い魔法の行使はできません」


「薄くともエターナルを感じる事ができ、わたくしが強いマナを持っていれば、魔法の行使は十分に可能です。

 なので、今はこの世界でも魔法が使えます」


 そこまで話すと、マリアは服を脱ぎ始めた。


「体を密着させることが一番慎二さんからエターナルを受け取ることが出来ます」


「えっ、じゃあ俺も脱いだ方が良いのか?」


「はい。 お願いします」


 俺も服を脱ぎだす。


「恥ずかしいようであれば、電気を消すかい?」


「いえ、このままで結構ですわ?

 いつも着替えや入浴などの際には、必ず誰かが側に仕えていましたから」


 あ、そうだマリアは姫だった。 俺の方が恥ずかしい。

 うん、サリーよりふんわりとした聖母?のような体つきだな。


「一番密着するには、どうしたら良い?」


「……」


 軽く目を閉じるマリア。

 俺はそのままマリアをベッドに寝かせ、最大限密着できるようにと、軽く抱きしめる。


 俺の自制心と呼ばれる(たが)は、自分で思っていたほどは強い物ではなかったようだ。

 俺達は、本能的に最大限の密着を求め合っていた。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



「それで、いまマナ溜りの状態はどうなんだ」


「おかげさまで、慎二からのエターナルが溢れ出たようです。

 途中で何度かマナ溜りを強く固めるイメージをしたのですが、それもできなくなるくらいマナ溜りはいっぱいです」


 あ、ひょっとしてあの時かな?

 なんか、ぎゅっと絞り込まれた感じが途中で何回か伝わってきた。


「今、マナ溜りは溢れるほどですが、体のどこも悪くないように感じます。

 魔法医はいませんが、これは治ったと思ってよいと思います。

 あ、忘れていましたけど、これによりわたくしは貴薬草は不要になりました。

 先日頂いたわたくしの2株分は、慎二が必要であれば、いつでも使ってください...」


 そう言いながら、マリアはすこし自分の体を確かめるような感じで手を当てながら、


「ん、でもちょっと待ってください。

 マナ溜りの近くに、何か少し違和感を感じますわ」


 そう言うと、マリアはトイレに駆け込んで行ってしまった。

 いきなり、100%を超えるようなチャージをしてしまって、ちょっとまずったかな?

 どこかに障害が出ていなければよいが。


 少しすると、マリアが少し恥ずかしそうな顔をしてトイレから出てくる。


「あ、申し訳ございませんでした。

 わたくしは大丈夫でしたので、そんな顔をしないでいただけますか?」


「無理をしちゃったのじゃないのか? どこか痛みはないのか?」


「以前お話したと思うのですが、わたくしの叔父がマナ溜りに結石ができやすく、できた石を取り出していたという話です。

 どうやらわたくしにも、それと同じ事が起きたようなのです。

 わたくしは今日が初めての経験でしたので、ちょっと変な感じでしたが、体内からは取り出せましたので、今はすっきりとしています」


「本当に大丈夫なのか?」


「ええ、これがその石です」


 そういって、マリアは何かを包んだハンドタオルを俺の前に出してきた。

 マリアがそっとタオルを開くと、その中には2センチくらいの透明な玉が入っていた。

 少し大き目のビー玉のようではあるが、占いの水晶玉を小さくしたように完全に透明であり、何か神秘的だ。

 体内にできる結石ってこんなにすごい物なのか?


 とても綺麗な感じだ。


「これ触ってもいいかな?」


「もちろんですわ。 たぶん慎二から頂いたエターナルからできたものです」


 その石は固くて、指でつまむとちょっと冷たい感じがした。


「以前マリアに聞いた話だと、表面は金属ぽくってキラキラ光ると言っていたが、これは透明だな?」


「そうですわね。

 確かにわたくしが子供の頃に叔父からもらった物とは違いますわね」


 あこや貝も、内部に異物が入りゆっくりと成長するとあの綺麗な真珠が出来上がる。

 透明な真珠のようなものかもしれない。


 これは透明度が高いので、静かに結晶が成長したようだ。

 普通の人間でも体内に結石ができるが、その時は大体よくない病気となる。

 でも今度は黒い石で無かったので、ちょっと安心した。


「あ、でもまだもう少し時間がありますわ。

 せっかくですから、もう少しこちらのお部屋を堪能しませんか?」


 と、俺たちはすでに溢れているマナ溜りに、更なる貯蔵を行うことになってしまった。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



「慎二、わたくしにとって、今日は一生忘れる事が出来ない思い出となると思います。

 私は、子供の頃より殿方に体を許す事になっても、心は許さないようにとの教えをずっと受けてまいりました。


 姫たるもの嫁ぎ先は、多くの場合、政略上の重要な相手となる場合がほとんどです。

 どちらかの国に政変があった場合、互いは敵となりうることも十分にあり得るわけです。

 いつでも国が中心に決断が出来るように、どのような対応でも取れるように、そのような心構えを元にした教育を受けてまいりました」


「あぁ、そうなのか」


「でも、今日わたくしはその考えだけではなかった事を感じております。


 わたくしは、多分、いえ絶対に、これからも慎二と一緒にいたいと思っております。


 父が受けたお告げで、病気が治せるといって、こちらに参る事となりましたが、お告げは正しかったようです。

 そして慎二からエターナルをいただけると言う意味だけではなく、わたくしはこちらの世界に着いてから、多くの心の安らぎを慎二からいただきました。

 わたくしは、王室と言う特別な環境で侵されていた心の病をも治して頂けたと思っております。


 そして、わたくしは慎二と一つになれたことで、今とても、とっても幸せでございます。

 いえ、決してサリーやイザベラから独占したいと言う意味ではございません。


 姫としては教えに対しては失格ですが、もう慎二無しでのわたくしは無いものと考えています。

 一人の女として慎二様を愛しております」


「マリア、ありがとう...


 今、マリア以外の女性も面倒見なければならない立場なので、君ひとりだけを愛するとは言えない。

 でも、だからと言ってそれは君への愛情が弱いと言う意味ではない。

 こんな俺で良かったら、いやこんな俺だからこそ君からの言葉はとてもうれしく思う。


 これから大きな山を登ることになりそうで、多くの困難があるかもしれない。

 でも、俺と手をつなぎ、一緒に登ってくれ。

 俺もマリアの事が大好きだよ。

 あらためて、これからもよろしく頼む」


 俺は、マリアの頭を軽く抱きしめた。

 お互いすでに心を開いていたつもりではあったが、どこかに残っていた、姫様と言う見えない壁が完全に溶け落ちたようであった。


 マリアに体内には何やら怪しい結石が出来たようです。


 本章に関する外伝があります。


 パラセル テクニカル外伝M - イザベラの摩導具日記 


 外伝M3-06-01 ホームセンターにて

 https://ncode.syosetu.com/n3132gf/2/


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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