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3-04-04 発見!都市鉱山

 火廣金が売れればしばらくは安泰ですね。



 国家予算を賄うためにはお金が必要なことはわかっているが、大きなお金を取り扱うことは難しい。


 その世界の重要な資源をパラセルに売り始めると、その世界から特定資源が枯渇し、世界危機をもたらす危険があると聞く。

 また、逆にパラセルから資源を大量に買った場合でも、やがて受給バランスやお金の流れを崩すことになる。


 従って、その世界にとって、ある割合を超えた資源の売買はやってはいけないことだ。

 パラセルとの取引においては、冗談のような量の取引であっても可能であり、簡単に世界経済への影響すら十分考えられるのだ。


 でも危険だと自分でも解っていながらも、パラセル取引を封印できないところが、悲しいかな、新たな貧乏国の王様ってとこだな。

 と言うことで、世界のバランスを壊さない範囲で、地球で価値が高く、換金性がある資源を買うことにしよう。



 パラセル取引について、さんざん悪い話を聞いたため、なんかちょっとビビっている。


 でも、サリーのお父さんのおかげで少し残っているパラスを使って、純金でも買ってみようかな?

 同じくらいの値段と言う火廣金は何も考えずに買えるのに、純金と言うと、なぜかビビっているチキンな俺。

 でも、地球経済に影響を与える量とは、どれくらいの量かわからないがな。


 ここは悩んでいても仕方が無いので、とりあえずさっきみたいに買ってみよう。


「アー、純金500グラムインゴットで10キロ買ってくれ」


 俺はすこし自分を納得させるように、ちょっと事務的な口調でアーに頼んだ。


『了解しました』


 すると... すると、なんと俺の前にいきなりドカドカドカンと大量の金の山ができていた。

 床一面に小さなインゴットが一杯広がっている。 目が点になる。


「あれあれ?」


 一個拾ってみるが、やっぱり重い。


「10キロってこんなになるの!?

 何だ! この山は!」


 皆んな目が点になる。


「慎二はさっき、火廣金は5個と言って買っていたよね?

 そして、今、慎二は10キロ買ってと言ったわ。

 だからアーは慎二の指示通り、500グラムインゴットを10キロ個分、そう1万個を買っちゃったんじゃない?」


 鋭いサリーのツッコミ。 えー? そこ略しちゃダメだったの?


「確かにキロとは1000個の事だけどさ...」


 私達はキロと言ったときに、グラムだとかメートルだとか、すぐに単位を省略して会話する。

 確かに直前の注文では、個数で頼んでいたし……

 人間は会話の流れから単位を読み取っているが、会話の流れだと、アーとしては前回の形式を自動的に引き継いで、やはり個数が正しいのかな。

 AIにとって、確かにさっきの言い方はあやふやだったようだ。



 そういや、俺は今それどころでない。 また逃避してた?

 それって、誤発注で破産? 大借金? これって一家離散のダメなパターンじゃ?

 アーに聞くと基本的にパラセルに返品と言う制度はなく、買ったものを再度売却する事になる。



 それもあるが、この床は大丈夫かな? さっき『ミシミシ』って、いやな音がしたような!?

 500グラムを1万個というと、うーん 5トンか……

 鉄筋建てでよかったって?

 そんなこと言ってられない! 床がやばそうなので、床に広がった金を、急いでストレージに収納した。

 手に持った1個を残してだけど。


 ストレージに入れたことで、少し落ち着き、今回出てきたインゴットをよく見る事にした。

 それが500グラムだとわかっていても、持ってみると金塊と思うためか、重く感じる。


 金の比重は19.32もある。 比重とは、同じ体積の水を1としたときの質量の比率なので、同じ大きさだったら、金は水の19.32倍も重いのだ。

 身近な金属である鉄と比べても、鉄の比重でも7.9くらいなので、金はなんとその2.5倍にもなる。

 だから、見た目よりも金は重く感じるのだ。



 さっきサンプルを1個残しておいたので、さっそくそれを調べてみる事にした。


 それは地球でよく見る、長方形のバー形状のインゴットではなかった。

 物差しで測ると、長い底の辺で縦横が7.5センチ角くらいの正方形で、厚さが5ミリくらいの四角い板状だ。

 これって、きっとセンチでなく、インチっぽいな。 3インチだな。


 四隅は丸められており、どうもインゴットと言うよりも壁にはめるタイルのように見える。 そう、どこか建材用っぽいのだ。

 この地球では、壁に金箔をはることはあっても、本物の金のブロックを埋めることは無い。

 もしそんな建物を造ったら、一体いくらかかる事やら。



 そういえば、気になっている金の値段を聞くために、今ストレージに入っているすべてのインゴットを査定してみる。

 これで俺も億万長者かな?


『査定では9.999パラスです』


 って? なにそれ? メガパラスじゃなくって?? なんか金額が間違っていない?


「アー、なんかこの査定って、間違っていないか?

 それとも、これって純金じゃなく、金のフェイクか?」


『パラセルでは、買取前に査定されていますので、偽物を買わされる事は絶対にありません。

 それに、これは地球で言う純金よりも、さらに純度が高い物です。

 火廣金や純金などは、それが妥当な買取価格のようですよ?

 不審な点があれば、パラセルに確認しましょうか?』


「え、確認できるのか?」



『買った商品に不審な点があれば、パラセルではサービスカウンタで確認ができます。

 ちょっとお待ちください。 只今、問い合わせ中です』


 そう言うと、アーは自分のスレイトで、いつものさらに小さいヘルパーさんと話している。


『いつも変な質問ばかりしてすみません。

 はい、どうもありがとうございました。


 あ、慎二分かりました!』


 アーよ、最後聞こえていたぞ! どうせ、俺からはいつも変な質問だよな!


「で、何だって?」


『やはり、それは純金インゴットで間違いないようです。

 慎二の考えているように室内の装飾用に使われる事もあるらしいです』


 アーによると、パラセルで純金はコモンメタルであり、特に貴重ではないらしい。

 この世界の鉄と同じような感じで、純金を大量に産出する世界があるようだ。

 しかも、そのような世界はたくさんある為に、それらの世界が競ってパラセルに大量に放出するために、金の価値は鉄よりもかなり安いらしい。

 まあ、実用的な用途では鉄の方が固いので使用量が大きく人気が高く、柔らかな金は利用用途が限られるらしい。

 特に電気が無い世界での金の需要としては、主に装飾用らしい。


 要は、綺麗だが、売れなくって供給過多になっているみたいだ。



「500グラムを1万個だから、5トンだろ? 違っている?」


 今スマホで見ると、6000円/グラムを超えているな。

 このスマホは先日外務省で唯華から渡された例のもので、軍用の秘匿回線を使い、専用のゲートウェイを通してインターネットに接続されている。

 そう、こちらの発信元を特定されないようになっているらしい。


 1トンは1000キログラムなので、もしそのままの値段ですべて売れると60億円か。


「ということは、5トンっていうと300億円くらい?」


 でもこれを一括で売却すると、金相場も大きく下がるかな?

 これで、俺たちが作る極小な国家であれば、国家予算に足りるかなぁ?


「いや、今の慎二の金銭感覚が狂っていると思うわ」


 計算は確かだが、感覚自体が狂っているようだ。

 最近、唯華の資料を何度も見ており、その資料の単位が億だったので、金銭感覚が狂ったのだと思う。


「これって、やっぱり一括で換金できないよな」


「まあ、金塊の出処がはっきりしていないと難しいかもしれません。

 あと、税務署が注意ですね。

 今、高額での金の買取については、還付される消費税が税務当局の調査対象になっています。

 金の取得が一時所得とみなされてしまうと、大きな税額がかかってきます。

 どこぞの国のように、急に大きな金の発掘量となり、気が付くと世界一になっているなんて方法はないでもないですね」 と西脇さん。


「日本で、自分の金鉱から掘ったと言うのはダメなのかな?」


「日本では、例え自分の土地だからと言っても、勝手に鉱石を掘って良い訳けではありません。

 採掘するのであれば、鉱業権が必要で、採掘権か、少なくとも試掘権が必要になってきます。

 鉱山で鉱石を採掘すると、それに対して鉱産税という税金が、鉱物の価格に基づき課税されますね。

 まあ、鉱産税はあまり大きくはないで、金鉱山であれば大したことはありませんが。

 自分で勝手に鉱業権ていうのは取れませんから」


「やっぱり、鉱山の権利っていうと、利権が絡んでくるのかな?

 日本の法律って、ほとんどが利権者を保護するようにできているから不便だな。」


「通貨レートが低い国家が、自前で大きな金鉱山を持っていると、その価値は大きいわね。

 金は、国際取引商品なので、国家間の価値は同じなので、安い費用で発掘された金はとても大きな外貨を得ることが出来るわね。

 今の産出国をみるとそれを物語っているわね」


「それ、どういうこと?

 金って、主な産出国は南アフリカじゃないの?」


「いえ、現在は違います。

 私たちの外務省で発行している、この資料を見てください」


 唯華のスマホの表示を見ると、2020年1月の金の産出量の多い国の表示が出ている。

 以下のようになっている。


 --------------------------------------------

 順位 産出国         産出量(t)

 1  中華人民共和国(中国)   401

 2  オーストラリア       315

 3  ロシア           311

 4  アメリカ合衆国(米国)   226

 5  カナダ           185

 6  ペルー           143

 7  インドネシア        135

 8  ガーナ           127

 9  メキシコ,南アフリカ共和国 117

 --------------------------------------------


「ここ10年以上、金の最大産出国はお隣中国です。

 まあ、産出量は毎年変化しますが、このところは中国が頭抜けて一番ですね。

 慎二さんが言われる南アフリカの産出量は、以前一番であったのですが、近年では中国の1/4です。

 1トン60億円ならば、金だけで年間2兆4000億円にもなりますね。 それが長らく続いているわけで……」


 材料の輸入なくして、掘った物が世界基準の価格で売れるものがあると言うことは、為替的に考えてもすごく有利だな。

 そうか、自分の国内産出であれば、どのように湧き出た金であっても、海外に同じに売れるのか。

 この辺にも、中国が躍進したからくりがあるのかな?」


「何とも言えませんが、昔は黄金の国と呼ばれていました日本ですが、今の金鉱山は、鹿児島県の1か所くらいしかまともには動いていないですね。

 そもそも日本の鉱山はかなり採算が厳しくて、ほとんど閉山していますから、権利を買い取った方が新たに取得するより楽かもしれません。


 そもそも普通の金鉱山って何トンもの大量の鉱石を掘って、精錬できる金なんてたったの数グラムですよ。

 更に、精錬の設備や粉塵や汚水の公害対策など、ものすごく経費がかかるのです。 普通は。


 でも、慎二さんにかかれば、精錬がいらないインゴットが出てくる新たな金鉱脈がどこからでも湧き出てくるのでしょ?」


「え、何のことかな? お主も悪じゃのう!」


「ほほほ! 国王様ほどではございませんわ」


「だったら、どこかの土地からプラチナのインゴットやカットされたダイヤモンドを採掘するのも面白そうだな。

 でも、やはりそれでも個人では売るのは難しいな。

 しばらくは必要な生活費分だけを現金化して、残りは黄金宮殿を建てるまで当面蔵の肥やしだな」


 黄金宮殿は、冗談であるがね。


「慎二はさっきの金をどうしたいのですか?

 国家宮殿を建てるために保存しておくのですか?

 もし慎二が売りたいのでしたら、私が交渉してみましょうか?」


「ええ! できるのか?

 だったら唯華にお願いするので、売れるだけ売ってみてくれ。

 見本にこれ持って行ってくれ」


「わかったわ。 たったの100トンね……」


 どこかの国に、外務省だけが知っている、闇ルートみたいのがあるのかな?

 そういって、さっきのサンプルを唯華に預ける。


「それと、当面の生活資金が必要なので、これ少し町で売っても大丈夫かな?」


「そうね、少しだったら大丈夫ね。

 だけど、売却するのであれば、この前に発行した特別永住者証明書が必要になるわね。

 それって、税金が係わってくるのよ。


 でも、入手経路を明かせないのと、経費ないのと、量が多いので消費税も絡んでくるので、普通に個人で売るとややこしいわよね。

 どれくらい売りたいの?」


「これからどれくらい費用がかかるか分からないからな。

 そうだな、国づくりは残りの金を使うとして、当面の俺たちの国づくり活動に、これから1年くらいかかると思うから、最初はそこまでの活動資金かな?

 あ、人数は多分増えるな」


「解ったわ、じゃあとりあえず活動費として10億円くらい調達しておきましょうか?

 じゃあ全体の金売却と別に、こちらは今回の迷惑料として外務省の上司に掛け合ってみるわね。

 別にお金を出させるわけではなく、金との交換だから、局長決済で何とかなるかもしれないわね。

 世界の国との交渉の中では、ドルが使いづらい場面もあるので、そのような費用のために、省内でもかなりの量の金をいつも準備しているのよ」


 ちなみに、唯華は活動費として20人*5000万円として計算したとの事だ。

 まあ、誰も根拠がある訳じゃないし、人数が更に増える事も考えられるので、少し多いかなと思うぐらいが俺も良いかなと思う。


「それは、なるべく早くにお願いできるか?

 それと、銀行に口座が必要だな。 特別永住者証明書で作れるかな?」


「はい、これ」


 そう言うと、唯華はすでに準備されていた2冊の通帳と印鑑と、キャッシュカードを渡してきた。

 あと、それとクレジットカードを何枚も。

 まだお金が無い時に作ったわけなので、準備が早いな。 でも最初の入金額は100円しか入っていない。


「これが、当面私達の活動資金と生活資金の管理口座ね。 目的が違うから2つに分けてあります。

 生活資金はサリーさんが管理してくださいね。

 活動資金はどうします? 慎二さんが持ちますか? 私が管理しますか?」


「これから唯華に調達してもらう資金だから、そちらは唯華が管理してくれ。

 俺はクレジットカードをもらっておけばいいよ」


「いずれにしても、口座とクレジットカードの名義人はどちらも慎二さんになっています。

 生活資金用は家族会員として全員の分を作ってあります。

 クレジットカードはプラチナ・カードですのでコンシェルジェサービスが受けられますよ。


 活動資金口座と連結したクレジットカードは私と宮守とサリーさんの分も作ってあります。

 サリーさんよろしいですか?」


「この世界のお金の流れは、今勉強しています。

 では、これは私が預かります!」


 サリーはお金のことを俺と唯華から任せてもらえ、自分の能力が生かせそうだと、とても嬉しそうだ。


 やはり、パラセルは気を付ける必要がありそうですね。

 いよいよ最初のお金の目途が立ち、いよいよ国家計画へと進みますか?

 ご利用は計画的にね!


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

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こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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