3-04-03 お金が欲しい!
慎二たちは、火廣金で少しお金のあてが見つかったようです。
うまく現金化できると良いのですが...
まだ現金化できるか結果は判らないが、もし火廣金が良い値段で買い取ってもらうことが出来れば、しばらく息がつけそうだ。
でも、こういったものって、大量に出てくると希少性が失われて、一気に買取価格が暴落することは想像に容易い。
今回はたまたま珠江経由で売却が可能な物が見つかりそうだが、まとまった資金を得るためには、我が国で合法的、かつ大量に現金化できるものをパラセルで買う必要がある。
そう高い物は買えないので、パラセルで安く買って、この世界で高く売れる物が必要だ。
それについて、みんなで話し合うことにした。
これまでの話から、
・小さくて安い価格で購入でき、効率よく日本円への交換可能な物。 例えば宝石類?
・日本の法律に触れないこと。 人に害を与える物や、禁止されている物は高くてもダメ!
・この世界の経済や環境に打撃を与えることが無いこと。 まあ、俺達くらいが使う金額では大したことはないが。
これから俺たちは、新たな国を作るためには、国土開発、すなわち道路の敷設など山の土木工事が必要で、大きな金額が必要となる。
たとえ陛下から土地を無償で譲られたとしても、(貰う気はないが)使える土地に改良するためには大きな工事が必要で、1億円程度では全く足りない。
宅地造成には、造成地全体の設計が必要である。
まずは、山や土地を買い取り、役所の許認可を取り、造成地までの道路を作り、実際に山を切り開き、土を盛ったり残土を捨て、そして整地して区画を作り、電気や光回線、ガス、上下水道などインフラをそこに引く。
それでようやく初めて住宅地として売ることが出来るが、売る事だって大きな努力が必要だ。
しかも、これらの作業発注や売れるまでの造成費用の資金確保はデベロッパーの人たちが行っている。
当然専門家でない俺達では、そんなことはできないので、どこかのデベロッパーの人と組む必要になる。
国づくりとなると、これらリスクをとてつもなく大きくしたものとなる。
一体それにはどれだけの血と汗と涙が必要となるのだろう。 俺には考える事すらできない。
要は、それくらいの金額を調達する覚悟が必要と言うことだ。
この世界のエネルギー資源は石油、石炭、ガス、あとなんだろうな?
でも、冗談ではなくって、アーに聞くと石油も石炭もパラセルに出品されているようだ。
たとえば、どこかを掘った事にして、パラセルからタンカー100隻分の石油が手に入ったとしても、そんなもの俺たちの手に余る。
手に入れた後、どうやって運用するのだ。
なので、俺達だけで取り扱えることが出来る為には、小さくて高価な物が扱いやすい。
あ、そうだ原子力発電所! 原発ってウランの核分裂の熱でお湯を沸かして発電しているんだよな。
ということは、ウランって高いのかな?
ン? なに? ウラン鉱石はパラセルでは見つけられないの?
ウランって天然資源だろ? どこにでもあるのじゃないの?
買えないのね?
商品として、売って無いみたいだ。
ここで、この話は終わった。 残念。
いや、残念というよりも、もし買えたとしても、俺達だけで放射性物質をどうやって扱うんだ。
それに、放射性同位元素等規制法ってのがあって、法律により規制されているので、俺たちが取り扱うことはできない。
私達はすぐにお金がほしいので、買い取って、すぐにお金にしてもらえるものが良いわけだ。
そういう意味で、エネルギー資源は、例えパラセルで買えたとしても、この地球で売りにくいですね。
まあ、火廣金のように希少金属やレアメタルと言うのも良いかもしれないが、この辺は市場性が低く、誰でもが欲しがるという物ではない。
簡単に考えると、金や貴金属、宝石と言うことになる。
その辺の知識もないが、逆に素人だからできてしまうこともあるのではないかと思っている。
「この世界って、不便ですね。
サリーの世界であれば、商会は商人からなんでも自由に買い取っていました。
サリーは、この世界にないいろいろな食べ物をパラセルで買って、それを販売するお店がいいと思います」
ああ、サリーのお父さんがそうだったね。
確かに売れるかもしれないが、食品についても更にうるさいんだよ、この国は。
サリーに触発されたイザベラは、
「私は、この世界にない、いろいろな道具をパラセルで買って、それを販売するお店が面白いかなと思います」
きっと、この前に行ったショッピングセンターに触発されたかな?
すかさずマリアは、
「だったらわたくしはお酒ですね。 いろいろなお酒をパラセルで買って売れば皆さん喜ばれますわ」
そうですね。 でもお酒も法律で強い制限がかかっています。
しかし、本当に何でも法律で縛ればいいってものじゃないと思う。
確かに安全と言う魔法のような言葉に縛られて、日本では人々の生活が著しく制限されて本末転倒になってしまっている。
法律と言うことであれば、パラセルで買ったものを日本で売買すると何か法律的に引っかかるのかな?
売買に伴い、消費税はかかると思われる。
細かいところでは領収書の収入印紙税か。
たかが領収書の印紙と言っても、金額が大きくなると、とんでもない金額になる。
売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書と言う規定で金額が決まっており、金塊は課税対象商品であり、1億円の金塊となると、税が付くので1億円を超えてしまう。
すると領収書の収入印紙は1億円を超え2億円以下となり、4万円が必要だ。
10億円を超えると、20万円の収入印紙を貼る必要がある。
金額が入った契約書や請書などにも収入印紙がいる。
取引がおかしくっても、何か政府が保証してくれるわけでもないのに。
しかし、現在は銀行で振り込んでしまえば、相互に金銭授受の証拠は残るので、あえて領収書を発行する必要はない。
今の時代に領収書の収入印紙の意味はそぐわないと思うが、なぜ誰も言わないのだろう?
1億円ってとても大きな買い物で、そんな高額な物は自分の周りには無いと思っているでしょうが、実はそんなことはない。
さっきの宅地造成を考えてみればわかるように、小さなマンションだって、作るのには1億円ではできていない。
1区画の部屋の価格はたとえ数千万円であっても、1棟のマンションとしては何億もかけて作っている。
町にはたくさんの家があり、建物があり、道路があり、駅がある。
小さな町内の一画を作るだけでも、それを作るときに使われるお金としては、1億円なんて小さいお金なんですよね。
なにしろ、俺が西脇からもらっている国家建設の計画書では、金額の単位部分に億円と書かれているから……
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そういえば、パラセルとの商売と言えば、先輩となる貴子がいたよな?
「貴子は薬草を売って儲けたパラスはどうしていたのかな?
で、何を買っていたんだ?」
「いや、わたしゃ何か買ったことなど一度もないぞ!」
「え! うそ! じゃあパラセルから1回も物を買ったことが無いの?!
どうして⁈」
「どうしてと言われても、そんな物どうやって買うんじゃ?
誰も教えてくれんかったからのぅ」
「何のためにシーがいたのさ?
じゃあどうやって生活していたのさ?」
「食事は神社から差し入れがあったから、飯には困らんかったし、着るものなどいろいろと差し入れてもらうから何も困らんかったぞ。
シーは私の唯一の話し相手じゃ」
えー! だからあんな清貧な生活してたのか。
迷惑かけていた神社の皆様に顔向けができないな。
それで、溜まっていた沢山のパラスで、シーは貴子を再生したのか……
貴子は俺以外と話す時は、それなりに普通の女の子の話し方になってきているのに、俺と話すときにはなぜか婆さん言葉に戻ってしまう。
地方から出てきた人が、電話で親や地元の人と話す時に、言葉が戻ってしまうのと同じか?
俺たちは、パラセルの取引について、再び考えさせられることになった。
しかし、いろいろな事を制限する法律があるこの世界で商売するのはかなり至難の業だ。
もっと簡単に考えていたが、いざ商売をしようと考えてみると、かなり難しいことが判った。
でも、パラセルをうまく使うことで、先日ほどまで夢のように思われていた国づくりであるが、すこしは近づいたことを知った気がする。
まあ、口火を切ってしまったので、皆で暮らすためには国づくりを真剣に考えるしかないな。
お金が少し入りそうなので、ちょっと余裕が出来てきた現金な慎二くんですね。
でも、捕らぬ狸の何たらってのもありますから、ご注意を!




