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1-03-05 異次元からの奴隷

 チャージした結果のギフトが奴隷だって!

 どんな奴隷が送り込まれてくるのでしょうね? はい皆さん、怖いですね。 恐ろしいですね。



「奴隷って、それなんだよ!」


 アーに突っ込み終わるより早く、俺の目の前が白く光りだした。


 驚いて、俺は腰掛けていたベッドから立ち上がった。

 そう、立ち上がったつもりであったが、立ち上がろうとはしたものの、足に力が入らない。

 そして、その場で女の子座りのようにペタリと座りこんでしまった。

 いわゆる、びっくりして腰が抜けた?!


 光が収まってくると、その中に1人の女の子が俺の方を向いて、同じようにぺたりと座り込んでいた。


 麻なのか、亜麻色あまいろの薄目の布地をしばった服に、手には大きめの麻袋? を握っている。


 顔色が悪く、目をつぶったままで微動だにしない。

 死んでるの!?

 急いで耳元で呼びかけても、強くゆすっても、応答がない。


 見たところ、呼吸もほとんどしていないようなので、やはり死んでいるのかも知れない。

 仕方がないので、心臓の音を確かめようと、洋服の上から心臓付近に耳をあてると


(ムギュゥ?)


 優しい弾力が耳に伝わってくる。

 すると、それがきっかけなのか、「うぅっ」 という声が女の子から上がった。


 耳を当てた状態であったが、とっさに離れようと押さえた俺の手は、お約束どおりお饅頭(ぱーい)を掴んでしまった。


「うっっ」 との声と共に、女の子はそれまで閉じていた目をカッと見開いていた

 俺は女の子の上から飛びのくと、女の子は大きく呼吸をはじめた。


 そして少し俯くと、彼女は両手で顔を覆い隠すようにして泣きはじめた。


「大丈夫ですか?」


 って、俺が声をかけた事で、ようやく目の前にいる俺という存在に気がついたようだ。

 パッと顔を上げ、いきなり両手で俺の服の胸ぐらを掴みかかり、意味の判らない言葉を発し、泣き叫びながら俺に迫ってくる。


 とりあえず、「鷲掴みしてごめんなさい」と謝るが、まだ俺の服をつかんだまま泣き叫んでいる。


 これは事故だから、何も触るつもりじゃなかったよ、本当に。

 ゴメンナサイ。 心から謝ります。

 しかし、何言ってるか、さっぱりわからん。


「困ったなー」って呟いたら、アーが


『マスターに言語変換辞書と機能の実装を推奨します。

 実装後に言語変換の使用を推奨します。 ダウンロードしますか?』


 俺がアーにお願いすると言うと、アーは女の子にしゃべりかけ始めた。


 アーも、最初はうまく会話ができなさそうだったが、何回か言葉のやり取りをしていると突然、


『言語仕様の推測が終了しました』


『対応言語ディクショナリのパッケージダウンロードを開始します』


『言語変換の設定が終了しました』


 とアーが言う。


『言語変換を実行します』


 その直後から、何故か俺は娘の言葉が理解できるようになっていた。


「お願いします。 お願いします。 助けてください」

 娘が普通に日本語を喋っているかのように普通に聞こえてくる。


 ああ、ずっとそう言っていたのね。

 俺が、タッチしたことを怒っていたのじゃなかったのね。

 ところでアーさんよ、君は何をしたの?


 彼女に、「どうしたの?」


 って声をかけたら、がばっと顔を上げ、


「ことば……わかる、の!?」


 と言ったあと、泣きやんだ。

 俺がしゃべる言葉も翻訳されているのかな?


 互いに会話ができることが分かり、ちょっと落ち着いてきた娘は、自らを名乗り始めた。


「泣いてしまってすみません。

 初めまして。

 私は、ドリームフィールド商会 会頭の長女、サリー ドリームフィールドです。

 サリーと呼んでください」


「初めまして。

 サリーって、ひょっとして君って魔法使い?」


「はい?

 いえ、私は商人の娘です?

 こちらの世界では、魔法使いという職か名前があるのでしょうか?」


「いや、さっぱり忘れてくれ」


 しまった。

 サリーって聞いて、変なことを聞いちゃったよ。

 ちょっと赤面してしまった。



 ここでサリーをよく見ると、部屋の中なのに靴を履いている。


「あっ、ここでは靴を脱いでね」


「え、床で靴を脱いで大丈夫なのですか?」


 履いていた革のショートブーツを脱いでもらった。

 そして、再び部屋の床に座らせる。



「まず、君は何故ここに来たの?」


 サリーは思い出したように、さっきと同じように叫び出す。


「あぁ、お願いです! 薬草、薬草です。

 私に薬草を売ってください!

 お願いします。

 お願いします!」


 薬草って、いったい何のこと?

 やばい薬かな?


「俺は薬草?なんて物は知らないよ」


「そんなこと言わずに、私の全てを差し上げますのでお願いします」


「ちょ、ちょっとまって!」


「すみません…… そうですね、忘れていました。

 私はすでに奴隷として売られてきたのでしたね。

 でも、もし私の話を聞いてもらえるのでしたら……」


 そこで、⦅グウッ⦆て、いきなり大きな音でお腹がなった。

 どちらのお腹が鳴ったのかわからないが、きっと俺ということにしよう。


「ちょっと待って」


 俺はキッチンへ行き、さっき食べようとしていたアンマガと牛乳と2つのコップを持ってくる。

 そう、俺の好物、甘い小豆餡とマーガリンを挟んだコッペパンだ。


 彼女は不安げな眼差しで、俺を目で追う。

 狭い室内なので、どこかにいても見えるので心配はない。


 今は小さなブリックパックの牛乳が一個しかないので、パックに付いているストローは使わずに、紙パックの端を開き、2つのコップに牛乳を分ける。

 そして、彼女の目の前でコップに2つに注ぎ、俺が最初にそれを飲むことで、これは毒が入っていない安全な飲み物である事を示す。


 さっきまで泣いていたが、目を見開いてシッカリ俺の動作を見ている。

 更にアンマガを真ん中から2つに折り、片方を無言で手渡し、残ったのアンマガを齧って(かじって)見せる。

 彼女は受け取ったアンマガを見つめなから、その割った端を恐る恐るほんの小さく口に入れてみた。

 最初パンの部分だったが、二口目くらいで餡が口にはいると

「甘いっ」て小さく呟いたあと……


 いきなり大きくかぶりついて、傍目も気にせず食べ出した。

 見事な食べっぷりで、ほとんど瞬間的に持っていた半分のパンが消えた。


 そして、今度は躊躇なくコップの牛乳を一気に飲み干した。


 もっと食べる? って齧りかけの俺のアンマガを見せると、コクリと頷き、それも彼女の胃袋へと消えていった。


 少しの間呆然とした表情だったが、はっと我に返り、真っ赤な顔をして

「ごめんなさい、ごめんなさい」と言い出した。


「大丈夫だよ」

 俺はそう言いながら、俺のコップを差し出すと、今度は少し落ち着いたようにゴクリゴクリと牛乳を飲む。


「すみません。

 このところ何日も食事が喉を通らぬ日が続き、恥ずかしいところをお見せしました」


 そう言ったあと、彼女は部屋をぐるっと見て、


「良かった、私は無事に着いたのですね」

 と言った。


 俺ははっとして、

「君が、スレイトを俺に送ったのか?」


「いいえ、スレイトは私の父も持っています。

 薬草を父へ送り届けるために、父が見つけたパラセルの裏技というのを使って、私はここへ送られました。

 ここは、いったいどこなのでしょうか?」


「ここは、日本だけど……

 紹介が遅れた。俺は慎二 加納慎二。

 かのうがファミリーネームで、しんじが名前だ。


 君は奴隷としてパラセルからここに送られてきたようだけど、それってどういうこと?」



「私の父は商人で、こちらに来る前に初めて話してくれたのですが、スレイトを使ったパラセル取引もしていたそうです。

 今、私の家族や商会が大変なことになっています。

 いますぐ私が薬草を見つけないと……私たちはお終いなのに、それでも薬草が手に入れられなくて……」


 サリーは、しゃべるのを少し躊躇って(ためらって)いたが、続けて話し始めた。


「パラセルを使っている各世界の商人たちの中には情報屋という者がいて、パラセルにより検索される商品の情報を集めているそうです。

 彼らは各地に巡らせた多くの情報源を持ち、それらから集められた話を合わせることにより、公開されていないパラセルの商品状況をつかんでいます」


「その情報屋の商品の一つとして、パラセルが探している商品を予想し、この情報も販売しています。

 そこそこ高い情報料金でしたが、私たちが求めている薬草のために、パラセルが新しいスレイトを発行する可能性が高いという情報を得ました」



 やってきたのは、なんとかわいい奴隷さんでしたね。

 慎二君はこれからどうするのかな?


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

ルネサンス[復興]の女神様は、カノ国の摩導具により新たな文明の基礎となれるのか?

ルネサンスの女神様 - 明るい未来を目指して!

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こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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