表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/221

3-03-01 始まりの里

 いきなり鳥取の地を訪れる事になった慎二たち。

 始まりの里で、何か収穫があるといいですね。



 6時台の便で羽田を発った俺たちは今、鳥取空港に降り立った。

 ここは名探偵が出てきそうな空港だ。


 そう、ここには貴子のスレイトの初代マスターが開いた土地があり、そこを視察に来た。

 宮守珠江一族の本殿を訪れるのは、そのついでだ。 いや、決して珠江に誘導されて、ここに来たわけじゃないぞ。


 俺、サリー、マリア、イザベラ、幼女貴子、真希姐さん、外務省の唯華、今回の首謀者である珠江。

 総勢8名は、早朝の横浜のスーパー銭湯から直行してきた。

 昨日、正式に日本への入国を果たし、外務省から日本国政府が発行する特別永住者証明書の発行を受けた。

 これにより、飛行機の搭乗者名簿にも正式に記載ができた。


 まあ、飛行機の中ではご想像通りであったが、サリー達と貴子を窓側に座らせて来た。

 昨日のジェットコースターのノリがまだ続いているようで、俺の隣のサリーはすごく楽しそうだ。

 姫様の隣には珠江を、イザベラの隣には唯華を座らせた。


 なんと貴子は、長き人生の中で飛行機は今回初めて乗るらしい。

 はたから見ると、小さな子供がはしゃいでいるように見えて、微笑ましい。

 今日は時間がないので、羽田で買っておいたサンドイッチを機内で美味しくいただいた。


 今日はかなりのハードスケジュールが予想されていた。

 神社は鳥取空港から1時間ほど車での移動予定なので、珠江があらかじめレンタカーを予約してある。

 本殿の方が車で迎えに来ると言われていたのだが、何とかそれは断った。


 俺は、明日午前中に西脇と会社へ退職届を出しにいく予定なので、今日の最終便で必ず帰る必要がある。

 そう来週になってしまうと、俺の2週間の休み明けとなり、いろいろと支障が出るために、西脇と決めたギリギリのタイミングである。

 引っ越しの準備などもあるので、本当は終日家にいるはずの予定で、山陰になど来ているはずではなかったのだが... 俺は、なぜ今ここにいるのだろうか。


 こんな調子で、本日の移動について、神社の方に主導権を握られてしまうと、かなりやばいことが想像できるから、足は自分たちで確保した。

 その本殿には、日程の最後にちょっとだけ寄らせてもらう。


 到着後、一番の目的である里の調査に向かう。

 今回は真希の運転ではなく、多少なりともこの辺の地理に詳しい珠江の運転で移動だ。

 もっとも珠江も、子供のころから東京育ちなので、こちらには時々訪れる程度らしいのだが。

 とにかく看板の地名が、さっぱりと判らない。



 こちらの薬草畑は、本殿の奥にある山の中にある。

 『貴子の里』と紛らわしくなるので、こちらは『始まりの里』と呼ぶことにした。


 車を降りて、沢づたいに1kmほど登った奥に里はあるようで、距離としてはそれほどではないが、山なので現地がどのような状況になっているかわからない。


 横浜を出発するときから、皆は登山服に着替えてやって来ている。

 今朝、温泉施設で大きなリュックなどをストレージから取り出した。

 その際、唯華や珠江はストレージを初めて見るので、ワン ツー スリーと一応お決まりのフレーズを言っておいた。

 あ、真希はもう目をつぶらなくてもいいよ。 お気遣いありがとう。


 俺たちは、山から下りてきた時の装備がスレイトに入っているが、貴子や唯華の登山の服装は、珠江によりすでに準備されていた。

 一体いつから俺たちが、ここの山にやって来る計画が練られていたのか、背筋に冷たいものを感じる。

 まあ、採寸は施設で行われているので、誰か買いに走ってくれたのだと思うが、山に登る確率はかなり低かったのではないかと思う。



 登り口に当たる場所に車を駐車し、俺たちは道に沿って登り始める。

 畑があるようで途中までは人が入っている道がある。


 道も行き止まりとなり、地図で見るとすでに半分くらいまで来ているが、ここまでは20分ぐらいでついた。 やはり道があると早い。


 ここは道に接したように川が流れている。 こで河原に降り、ここから沢づたい登って行く事になる。

 それほど多くの水量ではなく、水の中に入らなくとも、しばらくは石や岩の上を歩いていけそうだ。


 スマホのGPSマップを見ながら登っているが、この辺では電波は届いているようである。

 もし派生空間が作られているようであれば、そこからはGPSが使えなくなる。

 やはり、ここからは時間がかかるようだ。


 幼い体の貴子が歩いていけない場所は、真希の背中の背負子に乗せてもらっている。

 今回は良いものを準備してもらった。 前回これがあればどれだけ助かった事か。


 まあ、もっともこれはストレージが有ったらならではの芸当だけどね。


 沢も小さくなり、やがてなくなるが、そのまま進んでいく。

 山の頂に高圧送電線が横に走っているのが見えてくる。

 その送電線の下を抜けると、下りが始まる。


 少し進むと、例のお知らせがあった。


『ゲートを通過しました』

 と、アーがいう。


 ここで道は合っていたようだ。

 俺はゲートを一度戻り、全員で手をつなぐように伝え、再びゲートに入って行く。

 やはり、ここも貴子のヘルパーであるシーが作った場所のようで、俺たちは無事にゲートを通過することが出来た。

 予定より少し早く、1時間30分くらいで里の端に着いたようで、何とか11時前には到着できた。


 ここは貴子の里と似た感じがする場所である。

 薬草が生育する環境は似ているのかもしれない。


 ここで、シーを呼び出す。


「シー、ここが初代のマスターが、最初に薬草畑として開いた地で間違いないか?」


 シーは一度ぐるっと周囲を見回し、ここ千年くらいで変わりが無いかを確認している。


『うむ。

 ここで間違いはない。

 ここの空間は閉じていたので、他の人間が入ってこれぬ。

 よって、時間の経過だけではさほど大きな変化は認められぬようだ』


 シーはここが始まりの里であっても、特に感激もないようだ。 ま、そうだよね。


「それは、貴薬草が存在しないと言うことか?」


『それは、我にはわからぬ。

 我には、そのような存在を感知する機能はない』


「ありがとう」


 貴薬草については自分で調べるしかなさそうだ。

 ここは植物のみが生育しているガラパゴス島みたいなもので、まああの孤島ほどは長くを過ごしてはないが、それでも1000年近く経過しているので、生き残った植物の種類は、ある程度全域に広がっていると思われる。

 空間が異なるので、鳥や昆虫など新たな種子を持ち込むものがいないので、種子を広める力が弱い植物の場合、この年月の間に絶滅したと思われる。


 なので、ある程度の範囲をサンプルすることで、この空間の価値は判別できるのではないかと思っている。


 これからの予定として、2時間ぐらいこの周囲を探索して、その後昼飯、下山することとした。


 つい最近、同じような作業をしたので、皆何となく自分がすべきことは判っているが、今回はテントの準備はしない。


 まずはドローンを飛ばし、周辺の画像をキャプチャしてもらう。

 これはイザベラにお願いしておこう。

 この里の話を伝えるために、珠江が知っておく必要があると思ったので、イザベラと一緒にドローンの画像を見るように言ってある。 貴子もここでお留守番である。


 サリーとマリアと唯華と真希に、前回の調査でも使った赤白棒のピンポールを持ってもらう。

 そして、上空のドローンから4人のピンポールが50mの四角となるように、マリアを基準にして皆に移動してもらう。


 地面にはかなり起伏があるので、ドローンで上空からの映像が無ければ、少し大変な作業だ。

 マリアがピンポールを持ち、1つのコーナーに立ち基準点となる。

 残りの3コーナーは、トランシーバによる指示で、ピンポールの位置を調整する。


 イザベラは操縦に集中しているようで、珠江が代わりにトランシーバで指示を出す。

「サリーは、あと一歩唯華の方へ歩いて、そこでストップ!」

「慎二さん、四角になりました」


 唯華や真希とはスレイト通信は使えないので、トランシーバが再び活躍だ。

 スレイト通信を使う為にはメンバーに加える必要があるが、現代世界で生活してきた彼女たちを、今更俺の共感覚の下に加えるのは、まずプライバシー的に無理だと思われる。



 俺は現地とドローン画像を確認したのち、ピンポールの内側表面をストレージに収納し、表土の査定をかけ、すぐに元に戻す。


 パラセルの査定価格を見ると、多少値段が付く薬草は含まれているようであるが、今回はそれの採取が目的ではないし、時間もないので、そのままにして更に別の3か所に同様な計測を行い、合計100㎡を査定した。


 さすがに、ごく短時間であっても、自分の目の前の地面がいきなり消えるのを目撃すると、スレイトの事は聞いていた唯華と珠江であったが驚きが隠せない。

 あ、あともう一人、この前里に一緒にいたが、これは見せていなかった真希も同様に驚いていた。


 薬草は空振りであったが、ちょっと面白いものを発見した。

 さっきの広い範囲の査定では引っかからなかったが、適当な場所をランダムに査定していた際にそれが見つかった。


 前回貴子の里と同様に、査定範囲を二分の一を繰り返すことで範囲を狭めていったところ、査定額が高い場所を絞り込んだ。

 そこは薬草ではなく、湧き水が貯まった場所であった。

 普通の水に見えるが、高い査定値である。 まあ、貴薬草に比べられるような額ではないがね。


 査定額をあげている成分は判らないので、とりあえず溜まっていた水を10リットルくらいストレージに保管して、後程分析を依頼することにする。

 あと、場所を記録するために、もう一度ドローンをあげて写真で位置を記録しておく。


 そんなことをしているうちに予定時間となり、昼飯を食べる事にする。


 あれだけ買っておいたストレージ飯も、毎回のバカ食いが祟り、そろそろ終焉の時が近くなってきている。


 また補充をしたいが、今のところ限られた予算を無駄に消費したくないので、悩みどころだ。

 唯華から国家予算が付くのであれば良いのだが。 やっぱ、俺が払う税金か……

 俺達だけの極小国家じゃ、国家予算は家計と同じことだな。


 スレイトパワー全開での探索となったようです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

ルネサンス[復興]の女神様は、カノ国の摩導具により新たな文明の基礎となれるのか?

ルネサンスの女神様 - 明るい未来を目指して!

https://ncode.syosetu.com/n9588hk/

こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ