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3-02-02 独立

 とりあえず、日本政府のお墨付きを得た異次元人は、これで安心して普通の生活ができる。 のかな?



 西脇さんから、俺が今後どうやってこの娘たちを守っていくのか? と、痛いところを突かれてしまった。


 それが先日から俺が悩んでいる一番大きな所だ。

 しかも、強制退職で、今後の収入源も絶たれる事となると、やはり何か頼れる部分も欲しいし。


「まだ、どうするかは決まっていません。

 ただ、今回の件で会社を退職となると、現実問題として、すぐにでも経済状況が厳しいことになるでしょうね」


 ちらりと、サリーがおいしそうにご飯を食べている姿が脳裏を横切った。



「実は、異次元人だけではなく、主に異星人の方ですが、同様の事が何件か起きています。

 あ、そちらは別の省の担当なので私からは詳しく話せませんが、ちょっとした事情などで、やはり彼らも国元に帰ることが出来ず、この世界で生きていく必要があるのです。

 しかし、残念なことに、今この日本では、社会環境からも、法律的にも、彼らを来客や難民として受け入れることが出来ません。


 私はこの仕事についてから、一つの考えがあります。

 それは、皆さんのような方を受け入れることが出来る、新たな国がこの地球上に作れないかと考えています。

 いや、既に皆さんが現れたことにより、早急に作らないといけない段階になっています。


 ですので、加納様の問題を解決するためにも、加納様には申し訳ないのですが、私のこの異世界の人が受け入れられる国づくりの構想に力を貸しては頂けないでしょうか?」


 なんか、キラキラした目で俺に語ってくる。


「はっ!? なんか夢のような話ですね。

 俺にそんなことはできないと思うのですが、どうして俺なのでしょうか?」


「先ほどもお聞きしましたが、サリーさん、マリアさん、イザベラさん、それと貴子さんがこの日本、いやこの世界のどこかの国において、自由に暮らしていける方法ってありますか?

 今の世界の法律や常識では、どう転んでも無理だと考えます。

 でも、自分たちが作る国であればそれが可能です。

 そして、1つの国として他国と付き合うことで、異世界の人も受け入れられる、いや受け入れられなくともそこで暮らしていくことが出来ると思います」


「それについて、貴女(あなた)はどこまで本気なのですか?」


 はっ! と気が付いたように、彼女は語りだす。


「私の上司である局長、彼はいうなれば、この国の行政における、この問題の一番のトップに立つ担当者です。

 そして、私の叔父となりますが、以前から何度かこの私の考えは既に話しています」


 そして一呼吸おいて、


「私はすでに覚悟はできています。

 この計画を遂行するために、先ほど局長に辞職願を出してきました。

 もう退路は断ちましたので、あとは必死で為せばなんとか成るでしょう。 成るかな? まあ、背水の陣です」


「えぇ!? 辞表って、ここを辞められたのですか?

 それって、俺たちのせいですか?」


 それで彼は西脇さんをハグしていたのか。


 ところで、俺の返事を聞く前から、そんな勝手に話を進めてしまっていて、この人は大丈夫かな? ちょっとポンコツ女子?

 ここで断ってしまうのも一つだけれど、でも確かにほかに良い手は俺には考え付かないし……


「サリーは良い話だと思うわ」


 おいおい、これはそんな簡単な話じゃないぞ。

 収入の事もあるし、俺たち自身どうするかも決まっていないし、そんな中、他人をかまってそんなことまで出来るとは思えない。


 いや、そもそも国を作るなんて、どこに、どうやって作ればいいんだよ。

 どこかの土地を買って家を建てるのとはわけが違うぞ。

 ん? ヨーロッパの極小の宗教国家みたいな、そんな感じでもいいのかな?

 株式会社加納国なんて看板を掲げた施設を作って。


 いやいや、そんなわけないでしょ!



「俺もいきなりそのような事を言われても、すぐに返事はできない。

 もう少し具体的に君の計画を教えてくれないか?

 そして、考える少し時間をくれないか?」


「わかりました。

 ではまず、こちらの計画書をご覧ください。

 良いお返事をお待ちします。

 あ、このあと皆さんで行くところがありますので、そちらで昼食となります」


 そう言うと、彼女は既に準備してあった、かなり厚いレポートのような書類を渡してくれ、部屋から出て行った。

 まだ、出発まで時間はあるようで、ここで読んでおけっと言う事のようだ。

 資料は一部だけだったので、スレイト通信で共有しながら、その資料に目を通すことにした。



 彼女の計画書を要約すると以下のような内容であった。


 彼女の想定では、


 場所については未定であるが、日本のどこか山村の土地を買い取る。

 まあ、貴子の里みたいなところを想定しているようだ。


 国としての収支は、ぎりぎり小さなものを想定しているようである。

 かなりの部分を自給自足とすることで、日本の現金を使用を最低限に抑えると考えている。

 あくまでベースは日本円なのだな?


 水道光熱費のエネルギー政策については、自然の水や薪を使うと書いてある。

 うん、この時点で多分破綻だな。

 そもそも有限の土地の森林を伐採していくことでは、永く持たない。

 でも、よく読むと、バイオテクノロジーで、間伐材などの木材や植物を発酵させて、それを燃料として用い熱を生み、電気を得るとなっている。

 それって、どれくらいの電気が賄えるのかな?

 そもそも誰がその木を伐採するのかな? やっぱり、俺かな?


 添付の資料を見ると、最近の伐採は機械で出来るらしい。

 木を銜えて切った後、皮をむき、一定の長さに切断まででき、落とした樹皮や枝などはそのままバイオ燃料とする。

 切り出した木から木材製品を作り、それが輸出材料となるらしい。


 でも、その機械を動かすのにもガソリンが必要だぞ?


 さらに、いま日本では木材は安価な輸入材が多いため、すでに国内の林業が衰退していると聞くから、これで外貨獲得は難しいんじゃないかなと思われる。

 何しろ、木材は保管に広い場所が必要で、重いので輸送にも大きな費用が必要となる。 丸太は、宅急便のお兄さんに運んではもらえない。

 鉄じゃないけど、林業も重厚長大な産業である。


 その他に、異次元人の方の作る異国の料理の販売などとあるが、うちの方々に料理は……

 せいぜいサリーの家庭料理かな?

 しかも、その材料や調味料はこの世界の物だぞ。


 スタートアップでクラウドファンディングなんていうのも書いてあるが、いったい誰に出資してもらうの?

 それこそ、異世界人であることを隠してでは無理でしょう。

 それが出来ないから、こんなに困っていると言うのに……


 うん、収入についてはこれでは無理だ。

 さらに支出としては、自給自足では耐えられないほど食費が多いと考えた方が良いだろう。

 あえて、原始時代に戻る必要もないしな。


 どこまで知っているかはわからないが、彼女の資料は俺のスレイト前提ではあるが、資金的にスレイトに頼るような記述は含まれていなかった。

 貴子と俺のスレイトについてはすでにバレているので、もっとスレイトに頼ってくるのかとも思っていたが、そうではないようだ。


 そもそも土地を買うには、大きな初期投資が必要であるが、俺にそんなことを言われても困るしな。

 外務省で土地を買って提供してくれるつもりなのかな?


 ん? 資料の最後に手書きで何か書いてあるのを見つけちゃった。


「基本的に本計画は加納さんにお願いする」 って! なんじゃそりゃ!


 どうするんだよ、こんな計画だけで外務省を辞めちゃってさ。

 悪い人じゃないんだけどなー。


 ちょっと目の前が暗くなった気がした。


 いよいよトンデモ計画 加納国の誕生が近いのですかね?


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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