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3-01-02 検疫

 慎二と一緒にいた娘たちが、異次元人であることがバレてしまい、厚労省と外務省のお役人に神社からどこかに連れていかれます。



 俺たちが連れていかれた建物は、異星人や異次元人など異世界人を対象とした検疫施設であった。


 ここの検疫は人間ドックに近いと言われたように、確かに内容的には健康診断の延長のような感じで、それほど身構えるようなものではなかった。

 ただ大きく異なる事として、検査場は感染防止処置が行われており、検査フロアに人はほとんどおらず、防護服を着た数人の人たちのみが働いていた。

 異世界人の中に感染の恐れがあるウィルスを持っている場合を想定しているとのことである。


 多くの検査は自動化されており、検査する人は別室から管理しているようだ。

 そして、装置周辺に設置されているLCDパネルに表示されている画像と、天井のスピーカーから聞こえる音声に従っての検査だった。

 そう、多分見えないところに人がたくさん待機していて、操作をマイクから伝えているようである。


 どうしても検査に人の手が必要な時は、さきほどの保護服を着た人が対応してくれている。

 彼らは、顔には毒ガスマスクのような空気フィルターが付いたマスクをし、肌が一切露出しないようになっていた。

 かなり物々しいが、人間に害があるウィルスや細菌をもった異世界人がいた場合の事を考えているようである。


 最初に、血液や尿採取のほか、通常の健康診断では行われない、唾液採取や、体のあちこちの体液や粘液が採られ、DNAなども検査されるようだ。


 体のあちこちを晒すことになるが、それは個室で機械相手の検査であったので、それほど恥ずかしくはなかった。

 この検疫作業で陰性が得られれば、あとは防疫体制ではなく、普通の対応となるらしい。

 しかし、その結果が出るまでは全員緊張状態が続く事になる。


 この検疫作業は、すでに判明しているウィルスであれば短時間でも検出できるらしい。

 しかし、今回のように未知なるウィルスを探す場合、条件をいくつも替えて行うために、何台もの検査機械を同時に使い数時間を要すると言う。

 採取した検体に対して、加熱と冷却のヒートサイクルを何回も与え、ウィルスのDNAを急速培養して量を増やして検査する必要があるため、結果が出るまでには時間もかかる。



 西脇さんや、宮守さんと、その同僚の人達は防護服を着ていないが大丈夫?

 彼女たちは、すでに我々との接触があり、我々の検査結果が出るまでは、ここで一緒に隔離されるらしい。


 我々が全員陰性であればその時点で解放であるが、もし一人でも陽性者が出たら、今後隔離が継続されるとの事。

 ご迷惑をおかけします。


 検査でちょっと面白かったのは、全身の3D形状計測があり、指定されたいくつかのポーズをして現在の姿が記録されるらしい。

 異世界人に対して、なるべく多くの体のデータを保存するため、身長や骨格、筋肉量、体脂肪や脂肪の付き方など、同時にたくさんのデータを取るようだ。


 あとで、3Dデータもらって全員のフィギュアでも作ってみるかな。



 宮守さんは自分も検疫を受けながらも、我々をサポートしてくれている。

 西脇さんは、ここは初めてのようで、全くの役立たずで、我々と同じく単なる一人の患者として検査を受けていた。


 到着後、午前中の検査はご飯抜きで、検疫検査のほか、胃部のX線検査など、空腹時の検査が中心に行われた。

 胃部のX線検査は、バリウムという白いドロッとしたシェイクみたいな液体と発泡剤を一緒に飲んで胃袋を膨らませ、前後に倒れる検査台の上で体をぐるぐる動かして、胃の状態をレントゲン撮影する検査だ。


 隣の操作室には誰もおらず、右に回れだとか、上下逆さまになった状態で止まって、など無茶な命令をどこからか、天の声が言ってくる。

 逆さまになったりしていると、右や左などと言われてもよくわからないよ!



 ちょっと怖かったのがMRIという測定で、なんか装置の中の巨大なドーナッツの中に吸い込まれて、ゴォンゴォンと大きな音がする測定である。

 そのMRIでの頭部の検査の際は、頭や体が動かせないようにがっちりと固定され、狭い装置の中に入って行くので、この時は閉所恐怖症のような恐ろしさを感じた。

 俺の脳の中にある、スレイト通信はMRI検査に何か映るんだろうか?


 あとは、一般的な検査が2時ころまで続き、ようやく遅いお昼ごはんとなった。 あぁお腹空いたよ。


 食事は病院食みたいなものかと思っていたら、意外とまっとうなご飯が出されてほっとした。

 ただ、検査の順番は皆ばらばらに行っているので、検査が終わった順に食堂に入り、個別に食事開始となったので、どうやらまだ来ていないメンバーもいる。


 一番最初は真希、次にサリーだったようで、既に食べていた。


 俺はその次で、ほぼ同時に西脇さんと宮守さんがやってきた。


 イザベラまでは、それほど遅くはならなかったが、貴子と、マリアが最後に30分くらい遅れてやってきて、ようやく全員揃うことが出来た。

 貴子に聞くと、ここの施設はサイズが幼女用にはできておらず、どの測定も台を持ってきたり、何かアダプタを取り付けたりして、幼女の体に合わせる作業が必要で、時間がかかってしまったようだ。

 マリアは、貴子のお子様設定を戻すために、その余波を受けたようである。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 ここは、検査施設の一室。

 西脇さんに外線から電話が入っていた。


 検疫のために、持ち物や着ていた洋服は、すべて密閉された状態で施設内に汚染荷物として保管されている。

 当然スマホも預けてある。


「西脇君、今そちらの施設から先ほど連絡が入った。

 まだ最終結果ではないそうだが、ここまでの検査結果だと、やはり3人ともAと考えて間違いない」


 どうやらAは異次元人を指しているのではないかと思われる。


「あと、あの子供については謎が多い。

 どうも、判断が付かないらしい。

 異常はないが、逆に生きた人間としては、何のノイズもなさすぎると言っている。

 ここまでの状況を勘案するに、たぶん彼女の細胞が人工的に再生されたと言うの事は、真実であると考えてよいだろう」


「局長、ということはDですね」


 局長と呼んでいるので、西脇さんの電話の相手は、どうやら外交政策局のトップのようだ。


「うん、子供はやはりDだ。


 それで、唯華君…… 本当に君は先ほどの話で良いのだな?

 無理する必要は無いんだよ……」


「おじさま、これまで公私に渡り面倒を見ていただき、ありがとうございました。

 地下(じげ)の家に生まれ、何百年ぶりに巡った機会であり、これは私に与えられた運命であると思います。

 そして、これは私自身の意志です。

 今、新たな時代の流れが、ここに始まりました。

 もしこれを逃すと、永きに渡る一族の後悔が、再び始まるでしょう」


「では、もうこれ以上私からは唯華に言うことは何もないな。

 御方には、私から君の意志を伝えておくよ。

 幸せになるんだよ。 そして、我ら一族の未来を変えてくれ」


「はい、ありがとうございます」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 食事後は、個別に呼び出されて、ここまでの結果に基づき追加の検査などが行われていた。


 一連の検査が終了すると、休憩ラウンジに集まってくる。

 ここは、ドリンクが自由に飲め、またちょっとしたスナックも置いてある。

 時間が潰せるように本やパソコンも置かれていた。


 さっきから娘達は、なにか熱心に読んでいる。

 みんな同じ本を読んでいるようなので、その表紙を見ると、


「異世界人 異星人・異次元人にもわかる、現代日本での生活大全」


 って書いてある。


 この本はどうしたの?って聞いたら、西脇さんからもらったという。


 彼女の部署で作って配布しているらしく、異世界から初めて日本に来ても、この世界での滞在について困らないように、絵本のようにやさしく解説してあるらしい。

 自分達には常識であるが、彼女たちが見ると知らない情報が詰まっており、すぐに役立つ内容らしい。


 なかなか面白いらしく、みんな熱心に読んでいる。

 生活情報や買い物の仕方など、先日から少しずつ体験したことなどについて書かれている。

 異世界からの人でもわかるように写真も多く、使い方だけでなく、一歩突っ込んだ正しい知識が説明されている。

 これまで疑問があっても気にせずに、調べずに知らなかったことが沢山説明されていて、俺がちらっと読んでも、なるほどこれは為になる。


 今、イザベラが見ているページは、電車でお出かけ編らしいが、電車に乗るであれば、切符やICカードカードの購入が必要。

 これらの買い方、自動改札の通り方、ホームでの電車の待ち方、降りる時の料金不足の対応など、実際に必要となる事が書かれている。

 これは、つい最近聞かれたことだ。


 読みながら実体験をしているような感覚で、いくつかのシーンにおける関連の説明も書かれている。

 続編なども読みたくなる内容だ。

 良い資料だと思ったら、奥付に書かれている執筆者は、なんとこの本をくれた西脇さんだった。


 こんな仕事もしているんだ。 著者サインをもらっておこうかな?



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 夜までに検査は全員終わり、ここの担当である宮守さんから話が行われた。


「それでは、みなさんお集まりください。


 まず、検疫につきましては、皆様陰性であり異常がございませんでした。

 あと、この世界にある病原体に対する予防接種と、いくつか治療をさせていただいた方もありますが、すべて終了しています。

 皆様の健康診断の結果を配布しますので、ご覧ください。


 厚労省の検疫としましては、以上で終了です。

 お疲れさまでした」


「では、わたくし西脇から今後の予定を説明させていただきます。

 危険度が高いウィルスの検疫につきましては終了しておりますが、念のために現在も培養を続けていますので、今しばらくこの施設でお過ごしください。

 また、女性の方につきましては、この後美容院を開設いたしますので、ご利用ください。

 そして、今夜は皆様そのままこちらの施設にお泊りください。

 夜はこのラウンジにアルコール類も準備させていただきます。


 明日朝は、皆さまには私が手配する車で、外務省までお越しいただきます。

 すみませんが、私は準備のために、一足先に東京へ戻らさせていただきますので、何かありましたらスタッフか宮守までお伝えください」

 そして明日は1日は、私がご一緒させていただきます。

 皆様、本日はこのような(・・・・・)施設でお疲れかと思いますので、明日はゆっくりと休める場所を私どもで(・・・・)手配させていただきます。

 よろしくお願いします」


「ねえ、美容院ってなに?」


「皆さんの髪の毛をきったり整えてたりして、この世界の生活に馴染んだ髪型にしていただきます。

 あと、採寸は済んでおりますので、同様に衣服も何着かこちらの世界の物を準備させていただきます。

 衣服は明日朝、こちらに届きます」


「「「えーーー!」」」


 その一言で、俺はすでに必要なくなったようだ。

 皆さん、ラウンジにおいてある雑誌の写真を眺め、あーでもない、こーでもないと皆で始まった。

 まだ真希はわかるが、なぜそこに貴子も混じっている?


 無事に検疫も終わりそうで、ちょっと安心ですね。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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