表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/221

2-05-08 記憶

お知らせ:

 2020/05/23 06:00頃に本編一部を外伝に移動しています。

 そのために本編ブックマーク位置が5話分減っていますので、新作が5話分戻っていますのでご注意ください。


---------------------------------------------------------------


 助けた幼女は、なんと慎二のお婆さんの貴子さんでした。

 もし真希が見つけなければ、危うく人がいない里に取り残してしまうところでした。



 貴子が目覚めた騒ぎの後、10分ほど経つと、皆が見守る中、貴子が再び声を発した。


「シー?!」


 彼女は一言つぶやくと、目の前にいる大きなシーの首に抱きついた。

 しばらく首に抱きついていたが、やがて周りをみる余裕が出来たようで、手をゆるめた。


「ここはどこや?」


 思考も、すこししっかりとしてきたようだ。


「あなたの名前を言えますか?」

 唯一の肉親である俺が話しかける。


「加納… 貴子じゃ。 ここはどこや?」

 確かに話し方が、見た目の幼女ではない。


「俺が誰だか判りますか?」


 小首をかしげながら、じっと俺を見つめて、


「はて、あんたさんは、どなたさん?」


「貴子さん、あなたは10年くらい眠っていたのです。

 俺は慎二。 あなたの孫の加納慎二です」

 わかりやすく10年とは言ったが、正確に言うと9年くらいかな? まあ、いいや。


 貴子は、最初なにか冗談を言われたと思ったらしく、不安げな表情で、少し顔がひきつる。

 しかし、少し俺を見つめているうちに、表情は驚きのものと変わった。


「本当にあんた慎二なのかい? うちの孫はまだ小さな子供じゃが?」


「大きな鏡ってありますか?」

 俺は宮司さんにお願いする。


 宮司さんは巫女に言って、奥の着付け部屋から姿見を持ってこさせた。


「貴子さん、今のあなたの姿を見てください」

 俺はそう言うと、姿見を貴子に見せた。


「な、 何じゃこれは!」

 鏡を見つめながら、顔や頭、体など両手をあちこちに撫でてみている。


「こ、これが私じゃと.. 嘘じゃろ?」


 まだ鏡を見ながら手をばたばたさせているが、隣で俺は話しかける。


「シー は、わかりますよね」

 といいながら、俺は視線をシーに向ける。


「うむ」と言って、貴子もシーを見ながら小さく頷く。


「あなたは里で倒れたらしく、あなたの命を救うために、シーがあなたの体を蘇生させたのです。

 その再生の作用で、体が若返ったようです。

 そして、倒れてからは、既に10年程の時間が過ぎています」


 貴子は理解したらしく、目を見開き、驚きの表情で、


「すると、おまえは本当に孫の慎二なのかい?」


 俺は黙って頷く。


「確かに面影が残っているよ。

 ちょっと見ぬ間に、随分と大きくなっちまったんだねえ」


 そう言うと、貴子は俺の頭を撫てきた。


「シー、今から貴子さんにいろいろと聴きたいのだが、質問により記憶の定着に異常が起きないか?」


『もう、すでに大丈夫と見受けられる。

 それよりも記憶を早く回復させるためには、いろいろ思い出した方が良いだろう』


 俺は顔を再び貴子に向け、質問を開始する。


「すっかり姿が変わられたので、我々もあなたが本物の貴子さんであることが、本当のところまだ確認できていません。

 目覚めたすぐで申し訳ありませんが、あなたの家族について、今思い出せる範囲で構いませんので、話していただけませんか?」


 そうして貴子と思われる幼女から語りだされた言葉は、すでにしっかりした言葉に変わっており、すべての内容はこの幼女が貴子であることを示していた。

 また、俺は子供のころ、貴子に山の小屋に連れて行ってもらった時のことも聞いてみた。

 それは当然二人しか知らないことであった。



「俺の判断ですが、俺の知っている情報や、俺と貴子さんしか知らない質問の答えも正しいです。

 俺は、あなたが本物の貴子さんで間違いないと思います」


 俺の判断を聞いて、名誉宮司から「オォ」と言葉が漏れる。

 その声に反応して、貴子は じいさんを見つめると、


「おやおや、宮司さんじゃないですか。

 いつもお世話いただきありがとうございます。 この中で、あんただけは変わらないね」


 10年前も既にじいさんであったので、あまり顔つきも変わらなかったのか、名誉宮司だけはすぐに判ったようだ。


「ワシも宮司はすでに婿殿に引き継いでおり、今では引退した名誉職である名誉宮司となっている。

 今じゃ、単なるじいさんだよ。 ワハハ」

 一人だけ判ってもらえた事に、じいさん宮司は嬉しそうであった。



「慎二殿、もしお差支えが無ければですが、白神様にいくつかお聞きしたいことがあります。

 もしよろしければ、白神様にそれがお願いできるか、聞いていただけないでしょうか?」


 貴子さんの件もあるが、この場の人たちとしては自分達の神様のことが一番大事だと思う。

 神様を目の前にして、恐れ多いようで、口の利き方も変だ。


 このあと、俺を介してだが、緊張した名誉宮司とシーとの一問一答が繰り返された。

 わざわざ俺を介すのは、神様に対して恐れ多くて、自分で直接声がかけられないそうだ。


 名誉宮司が代表して行われる質問は、この神社の由来やそれにまつわること、シーが現れていた時代についての話などが中心であった。

 シーからは、これまで古い絵や古文書にしか残っていなかった驚きの真実が次々と語られた。

 何度となく起きるどよめき。


 古文書に記載されていた多くの伝承が、かなり正しい事が証明された。

 祖先の多くの努力が聞かされたことで、シーの言葉のたびに、多くの人が泣を流しながらも、一言も聞き漏らさぬようにシーの話を聞いていた。



「日本の古文書で、各地に白い犬や狼の伝承が残されているが、それはシーなのか?」


『それがワレの事かどうかはワレは知らぬ。

 しかし、何人ものマスターは、この地以外の多くの場所を訪れていたのは確かだ。

 しかし海を渡って、外に出た記録は無い。

 マスターによっては、ワレは常にビジブルにして共に行動していたので、それが絵として残されたことはあると思われる」



「あの、加納様、私もお聞きしてほしいことがあります。

 それは、私どもの本殿から、こちらに分祀(ぶんし)が行われた経緯です」

 と宮森さんから質問が。


「シー、話せる範囲で、お前の経緯や、本殿のできた経緯、分祀が行われた経緯、そしてなぜこの地が選ばれたのかを教えてくれ」


『うむ。

 これからの話は、貴子の知識を参考に行う。

 ワレが初めて目覚めたのは、約5000年ほど以前の縄文と呼ばれる時代と考える。

 当然その時代には、今と共通した年数をカウントしている者など、まだおらぬので、当時の正確な年数はわからぬ。


 ワレを初めて起動したマスターは、薬草について詳しい者であった。

 彼がパラセルからスレイトを授かった、最初のワレのマスターだ。

 その時代は、まだこの国の地はほとんどが未開の地であり、どこも人の手が入っていないので、そこには多くの薬草もあったようだ。

 マスターとワレは、各地を共に巡って薬草を探し求めていた。

 長らく放浪した我々は良い薬草の群生地を各地で見つけることになる。

 そうして薬草の地を見つけると、マスターは保護のためのために、群生地に派生空間を作っていった。

 ただ、まだその時発見された薬草は貴薬草ではなく、良質の薬草と言うだけで、彼の求めるものではなかった。


 そして、派生空間を作った地を、その地元の人間に守るように教え、また次なる地に巡っていった。

 最初のマスターは残念ながら旅の途中で果てて、貴薬草には至らずにスレイトは停止し、ワレは一度消えることとなった。


 彼は、巡る各地に子孫を残しており、やがてその血を分けた子孫の中に、スレイトを起動できるできる因子を持った人間が生まれることになる。

 どこかから、その人間にはスレイトの存在が知らされるようで、幸いにもスレイトにたどり着き、起動できた場合、ワレはまた新たなマスターをヘルプすることを行ってきた』


「ん、スレイト適合者は、シーが呼んだんじゃないのか?」


『われは、停止し、マスターを持たない状態であるから、そのような事は出来ぬ』


「だったら、新たなマスターを呼んだのは誰だろう?」


『ワレは知らぬな。

 しかし、起動ができなかった場合、長き年月を待つだけの事だ。

 まあ、ワレにとってはひと眠りじゃがな。


 マスターを失ったスレイトは、最初の地に送られるように設定されていた。

 スレイトが戻る地の近くには貴薬草はできなかったが、そこは良い薬草地ではあった。

 そのために、最初のマスターはその地をスレイトが戻る地と定めたようだ。


 ワレが再び目覚めて、新しいマスターと出会うと、ワレは何も伝えずとも薬草を求めると言ってきていた。

 恐らくではあるが、ワレの元に来る前に、新たなマスターは何等かの話が伝えられていたのかもしれぬ。


 マスターを失ったスレイトが戻る地、そこがお主の質問の本殿という建物が出来た場所だ。

 最初、戻ってくるスレイトを収めるだけの、とても小さな(ほこら)でしかなかった。

 その祠が作られたのは、弥生と呼ばれる時代が始まるころだ。


 スレイトを求めて長い年月の間に、幾人ものマスターが祠を目指してやってきた。

 マスターからは、それを守る村の者に礼が振る舞われ、時にはスレイトの能力を使ったりして村人を助けてきた。


 村は発展し、やがて祠は少ずつ大きなものとされていった。

 そこに最初の社と呼ばれる建物が建てられたのは、いま弥生と呼ばれる時代、そう今から2000年ほど前である。

 そして、本殿と呼ばれる建物が建てられた時が今から1400年ほど前だと思う。


 多くのマスターはスレイトを手にすると、しばらくワレと共にその地の薬草を育てて、またしばらくするとその地を離れて、貴薬草を探して各地を巡る事となった。

 そして、平安と呼ばれる時代、今より1000年ほど昔の事だ。

 その時のマスターが各地を巡っているときに最初のマスターにより作られていたこの派生空間が見つけられた。


 そして、以前のマスターとワレが去るときには、普通の薬草しかなかったこの地に、僅かばかりであるが貴薬草が発見された。

 ワレには伝えられていないが、最初のマスターはここを去るときに、何か仕掛けたのかもしれない。


 ここを発見したマスターは、貴薬草が見つかったこの地を、新たなスレイトが戻る場所とすると決めた。

 そして、その空間の近くに小さな祠を設け、そこがスレイトの戻る位置に設定を変更した。


 やがて、その祠の地にも神社が立つこととなり、今に至っている。

 したがって、それが分祀といわれるこの神社の事であろう。

 本殿とか分祀とかの呼び方は人間が言っていることなので、ワレは知らぬ。


 この地に貴薬草が見つかったことで、それ以降のマスターはこの地で貴薬草を栽培することになる。

 マスターはその神社から、いつも食事を振る舞われていたので、薬草作りに専念できたと、いつも大変感謝していた。

 これまでのマスターの礼をワレはヌシらに伝える』


 神社の人たちは、これまでの感謝の言葉を聞けて、その苦労が癒される思いであった。

 そして俺は、白神様と従者の関係を少し訂正し、その時代で黒妖を持つものがマスターと呼ばれ、白神様は黒妖を守っている存在である事を伝えた。



 シーから話された内容から、誤って解釈されてきた伝承や権力者によって捻じ曲げられたと思われる話もあった。

 しかし新たな発見も含まれており、中には日本の歴史がひっくり返されるような内容すらいくつも含まれていた。


 よくある事であるが、古い話は時間と共に尾ひれがついて大げさなものとなり、古さによっては神格化している話すらある。

 しかし、今回の話はその日本の昔話に出てくる本人からの話であり、間違いようがない。


 神社に(まつ)わることについては、本殿の西森一族、分祀の八神一族で共有することとなった。

 これまでの伝承の誤りを正し、今回の事を語り継ぎ、ここから本殿と分祀が協力し、新たな一族の伝承にすることになった。


 それ以外の事は、両神社の秘密ということで、今は(・・)密かに仕舞い込まれた。 今は。

 関係者以外は俺達と貴子と、西脇さんと真希さんだが、まあ問題ないし...? ね。 ま、いっか。


 なんだか大変な事になっちゃったな。



 当然ながら、黒妖ことスレイトの事は知っていても、パラセルについては、神社の伝承にはなく、彼らはその存在すら知らないため、その質問は一切なかった。

 異次元人の事も特に触れられていない。

 ただ、貴薬草については、ここの人たちに知られてしまった。 いや、昔から知っていたのか。

 ああ、最近俺は秘密が多すぎるな。 心が苦しい……


 でも、少し話せたことで、秘密を共有できる人が増えてちょっと安心した。

 また、一同で記念写真を撮ったが、シーについては限定ビジブルとなっていたので、スマホなどの写真やムービーには当然写っていなかった。

 おお、なんか神様っぽいな。


 また神社に手書きの絵馬が増えるのかな?


 いよいよ、シーの秘密が神社に語られました。

 永きに渡り、守りし神である白神様からのお言葉に心震えたのはこちらにまで伝わってきます。

 自分が崇拝する神様に会える人なんて普通いませんからね。 良かったですね。


 アーも、将来神格化するのかなぁ?


 パラセル テクニカル外伝 - パラセルと異次元空間

 外伝P2-05-08 貴子の目覚め


 https://ncode.syosetu.com/n3633gf/3/



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

ルネサンス[復興]の女神様は、カノ国の摩導具により新たな文明の基礎となれるのか?

ルネサンスの女神様 - 明るい未来を目指して!

https://ncode.syosetu.com/n9588hk/

こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ