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2-05-05 雁の使い

お知らせ:

 2020/05/23 06:00頃に本編一部を外伝に移動しています。

 そのために本編ブックマーク位置が5話分減っていますので、新作が5話分戻っていますのでご注意ください。


 いくつかの秘密を暴露した慎二たち。

 何とか無事に切り抜けられますように。



 神社での話し合いの休憩中にスマホに連絡が入り、俺は人影がない場所へ移動し、ストレージからノートPCを出し、少し作業を行った。


 外務省の空間計測システムから、マリアとイザベラの転移を計測した観測データを出力する方法を、俺は出張所で外務省 特別調査9課に伝授しておいた。

 特別調査9課の観測担当者は、その方法に従って操作が行なわれ、無事に生データの抽出が行われ、今そのデータがサーバーにアップロードされた。



 そして神社にいる俺は、サーバからダウンロードした生データをノートパソコンで表示した。

 俺は、バイナリダンプで16進数のリストが高速にスクロール表示されている画面を眺めている。


 俺の目がとらえた情報をアーが読み取り、高速に流れる表示画面から文字を認識し、元のデータに変換していく。

 そう、画面の文字を認識し、データにデコードする動的OCRである。


 コンピュータの中のデータを、アーに伝える方法として、この神社ですぐに出来そうなのが、今のところこれしかなかった。

 インターフェースが存在しないので、この世界のデータをアーに渡すためには、一度俺の目や耳もしくは触覚を通じて渡す必要がある。

 まさか、アーや俺が、USBコネクタやLANコネクタを口で(くわ)えて、データを取り込むなんて宴会芸当はできないからね。


 もしこの転送に失敗した場合、データに含まれるチェックコードで引っかかるはずであるが、今回は一発でうまく転送できたようである。

 アーは、チェックコードを確認したあと、すぐに解析を開始した。


 アーによると、発着地点と変位のデータの抽出は、何の問題もなく、すぐに終わったと伝えてくる。

 しかし、転移発生からすこし時間が経過していたため、移動地点の計算量が膨大となり、アーでも少し時間を要しているようであった。

 パラセルで購入したマーカはストレージに収納してあり、アーには計算結果ができ次第、座標を書き込んでもらい、即座に設置するようにお願いしてある。


 計算にはしばらく時間を要したが、今考えられる一番近い位置をマーカの座標が設定され、目的の座標に配置された。

 残りは、今の座標を中心にマージンを含めた位置へ予備を3個配置し、合計4個を最初の次元に仕掛ける。


 続いて、もう一か所の計算を始める。

 もう一つの次元にも同じように計算を行い、やはり4個のマーカを仕掛ける。


 ここは神社内なので、アーが姿を現すのはまずい。

 アーは、まだ俺達と真希以外にはバレてはいないと思う。

 メンバーにしか見えないアーが、少しやつれて見えるのは気のせいか?


 これでマーカは設置できたので、これについては少し時間ができた。

 後は、設置したマーカの位置が正しいことを天に願うだけであった。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 私はサリー。

 慎二から、イザベラとマリアの世界に送る手紙の文面を考えてほしいと頼まれたの。


 マーカをイザベラとマリアの世界に設置したらしいのだけど、まず設置できたかもかなり怪しいらしいのね。

 だって、設置場所がちょうど地面の上に出ていればよいけど、1cmでも下にずれれば、それは地面の中よね。

 とにかく不確かな物らしいので、計算してもらった地点の周りに予備としてマーカを3個設置してもらっている。

 次元空間は常に動いているので、誤差があると変な場所に設置されてしまうことがあるのね。


 また、マリアとイザベラの2つの世界に設置するために、予備3個を考えて、手紙は8枚準備しなければいけないのかなぁ。

 慎二によると、コピーと言うものがあるので、手紙は1枚準備すればよいと言っている。


 最初に送る手紙は、エリクサーを送るのではなく、手紙が相手に届いたかを確認するためのものです。

 届けたい人から、届いたことを確認できる返信をもらうことが目的よ。



 今回設置したマーカは、何回使っても大丈夫なようなの。

 でも手紙を送るときに使う転送石は、1回使ってしまうと、それはもう使えないらしいの。

 またパラセルから買う必要があるわ。 沢山のパラスがいるわね。

 そう、これはイザベラやマリアがこの世界に転移してくる時に使った方法ね。


 あと、今回は、アーが調べてくれた裏技? を使い、マーカが設置されてある先方から返信を受け取ることが出来そうです。


 マーカの空間にある物をこちらに転移させるためには、転送石の転移先と転移元の座標を入れ替えて指定することで出来るようです。


 普通、転送石ではこちらの物を先方へ転移させる石なので、送り出すこちらの座標は指定する必要はないの。 というか指定する事が出来ないの


 だけど、送る側にマーカを設置して、転送石の転移先としてそのマーカを設定すると、転移元と転移先とが同じ座標になっちゃうのね。

 同じ座標での循環転移はできないので、ここで初めて転移元の入力が出来るようになるんだって!


 転移元に先方にあるマーカ座標を指定すれば、先方のマーカにある物が、逆にこちらに転送されてくるという、神技ね!

 これはスキミングと言う裏技らしいのだけど、この世界の中で何度か試してみて、うまくいったわ。


 転送するものを指定した場合、それが置かれるまでは転移は始まらないようね。

 でも、転送物を指定しないと、何か置かれる前に先方の空気や地面がすぐに送られてきて転移が完了してしまったので、この指定も難しいわね。

 だって、相手が何を置くなんて、こちらからでは見えないので、最初の手紙できちんと指定するか、あとは想像力ね。



 拾った人が手紙を届けてもらえるためには、文面はオープンな形式で、拾った人も、届けられた人もそれが読める事が必要ね。

 なるべく誰にも分かり易いように、簡単で短い文章がいいわね。

 文面で、これが大事な手紙だと分かってもらえないかしら?


 それと、送る手紙には、何かを付けようかと思っている。

 例えば金品を付けて、これを受取人に持って行ってくれたら、付いている金品をあげるみたいな。

 でも、その方法は最悪ね。

 価値ある物であれば、あるほど、見つけた人の懐に入っちゃって、届かないわね。 ん? 商人の感よ。

 大事なことは、この手紙からお金の臭いを感じさせない文章にしないと届かなくなる。


 なので、受取人にはとても重要であるが、それ以外の人には無価値のモノである必要があるわね。

 それと、手紙がなるべくすぐに見つけてもらえるように、少し目立つものがいいわね。

 理想的には、手紙を見つけた人が、それを読んで、すぐに届けてあげたくなるような文面や物って何かないかな?

 でも、届いた先が屋外であった場合、風や雨に影響されにくく、また動物が食べたりしないようなものがいいわね。

 ということは、2人の持ち物か、家紋とか……


 でも、王家の紋章を手紙や物に入れちゃうと、それ自体が価値を出しちゃうから、落ちている手紙としてはうまくわないわね。


 うーん。 これは難しいわね。

 思わず髪の毛を掻きむしりたくなってしまったの。

 そこで、はっと気が付いたわ。


 そう、髪の毛。

 送る物にイザベラとマリアの本人の髪の毛の小さな束を付けるのは有りかな?

 これだったら、多分他の人が欲しいとは思わないし、受け取った方は髪の毛の色などを見て、多分本人からの手紙と判ってくれそうだ。

 女性が自分の髪の毛を親に送る手紙に付けるのは、何か深い意味を感じ取ってくれないかな?

 髪の毛の束の方が目立つから、髪に付けられた便りにも見えるな。

 どうか二人の関係者にまで届けてください。


 うん、今回はこれで行こうかな?


 手紙用と言って慎二からもらった紙はちょっと変わった紙なのね。

 一見すると普通の薄い紙なのに、水にぬれても大丈夫で、手でひっぱっても破れない。

 これは合成紙と言っていたわ。 不思議な紙ね。


 1枚の手紙に、2人の国の言葉でメッセージを書く。

 これは手紙を拾った人が、送り先に届けてくれるような文面にしなければいけないし、また返信を促すような文面でなければならない。


 そして、マリアの世界に宛てた文面を作ってみた。


『この手紙を拾った方は、カルダシア国の門番か衛兵にこれを届けてください。 お願いします。

 そして手紙を拾った場所を、必ず覚えておいてください。


 この手紙を届けられたら、お礼を渡し、手紙を拾った正確な場所を聞いてください。


 お父様、お母様、私は異国の地に着き、無事に暮らしています。

 私からの手紙の証として、私の髪の束を手紙に付けます。


 もし、私の家族がこの手紙を読んだならば、家族のどなたかの髪を付けた返信を、手紙を拾った場所に置いてください。

 家族の髪の毛を付けることで、私に手紙を返すことが出来ます。 お父様の大切な髪の毛でなくともかまいませんよ。

 マリアクリスティナ』


「慎二、マリアの手紙って、これでいいかな?

 あと、たくさん送るとマリアたちの髪の毛も無くなっちゃうから、最初に送るのはそれぞれの世界の中心のマーカだけでいいと思うよ」


「うん、ありがとう、 サリー。

 同じように、イザベラの文面もお願いするね。

 もらったデータからだと、設置したマーカが、どちら側の世界に設置されたのか、まだわからない。

 こちらの送り側にも、マーカを2つ置いて、2通を別々に送るよ。

 返信が来たマーカを見れば、マーカと繋がっている世界がわかるからね」



 問題は、急ぐ病人を抱えたイザベラの方ね。

 こちらの手紙の受取人は、師匠か親友なので、イザベラと血縁関係ではないわ。

 エリクサーを送るためには、本当に受取人であるかを最初に確実に判定する方法が必要ね。

 イザベラが彼らの毛髪を持っていないので、マリアと家族のDNA比較のような方法は使えないわね。


 先方の世界で入手ができ、確かに本人を確認できる何かが欲しいわね?!


 ここはやはり本人、イザベラに聞くしかない。


「何かイザベラが特定できるものって、イザベラの世界に残っていませんか?


「摩導具の中には、作成した人が自分が作った物であるとわかるように、それぞれ異なる小さな目印がつけてあります。

 私の摩導具の印を転送石に登録して、先方に残っている私が作った摩導具を返信の手紙に添えてもらうと良いのかもしれません」


「そうね、送り先はイザベラがいた工房だから、どれがイザベラが作った摩導具はわかるよね。

 それでいいかもしれないわ」


 小さな髪の毛の束を付けた手紙を転送石で送ると、すぐに引き取りの転送石を準備する。


 引き取りの転送石にはマリアの髪の毛のDNAを登録し、その家族のDNAが付けられた手紙があれば、転送するように設定を行ってもらう。

 イザベラの分は、別の転送石を使い、彼女の持っていた摩導具の印を登録し、それと同じものがついたものが見つかった場合、周囲の者を転送するように設定してある。

 それぞれの世界のマーカをターゲットとして、マリアとイザベラそれぞれ2個づつの転送石を使用してもらったわ。


 最初の手紙にはすぐに返信はあるとは思えないわ。

 もし長らく待っても返信が無ければ、予備に置いたマーカを順に試す必要があるわね。

 イザベラに残された時間は無いかもしれないが、ここからは焦ってもしょうがない。

 あとは、私の商人の感に賭けてみましょう!


 手紙を送る方法が見つかりそうですが、肝心のエリクサーが出来るのは、まだ先のようですね。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

ルネサンス[復興]の女神様は、カノ国の摩導具により新たな文明の基礎となれるのか?

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こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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