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2-04-02 保護

 ようやく見つかった貴薬草、大切に使いたいところですが...



 貴薬草を見つけ、キャンプベースへ戻る途中、イザベラがとんでもないことを言い出した。


「あの? 皆さんはどのように貴薬草を、ご自分の世界に送られたのですか?」


「え、今更そこ?!」


 イザベラは転移が始まる直前に異世界へ行くことを知らされたため、何も準備ができないうちにこちらに来たようだ。


「そういう意味では、わたくしも同じね。

 わたくしはこちらで治療できればと思っているので、特に何かを送る方法は考えていないわよ」


 自慢げに語るマリア...


「サリーはね、父との手紙のルートをあらかじめ作ってからきたので、イザベラにサリーの方法は使えないわね」


 あちゃー! この人たちは、いったい...


 とりあえずキャンプベースに戻ったら考えることにしよう。

 それに、エリクサーでないので、見つかった貴薬草を送っても意味がないかもしれないしな。

 これじゃ3歩進んで、2歩戻るだな。 でも、少なくとも1歩は前に進めたか。




 俺はいくつか確認したいことがあり、アーと話していた。


 その時、アーに『後ろ!』 と言われ振り返ると、俺の後ろからいきなり声がかかった


「加納君、それは新しいゲーム機か?」


 後ろを振り返ると、まだしばらく戻って来ないと思っていた真希が立っていた!

 マキが帰ってくるのは、早くても今日の夕方かと勝手に思っていたので、かなり油断していた。


 アーは真希が来たことを伝えようとしてくれていたみたいだが、俺は、少し考え込んでおり、気づくのが遅れた。

 3人娘も周りにいるので、気配などわからなかった


 しかも、真希を見ると、なんと彼女は腕の中に、服で包み込んだように小さな女の子を抱いていた。


「うー、ちょっと代わってくれ!

 あー、あやうく腕が取れるところだった。」


 背中は大きなリュックがあるので、バックの肩ベルトのようなものを首筋から前に回し、そのベルトの上に服を巻き付けた女の子を乗せた感じだ。


 急いでサリーが真希から女の子を受け取ると、上に掛けてあった服が落ちる。


 なんと、その女の子は全裸であった!


「私、 1時間くらい前にトランシーバで連絡したんだけども、応答がなかったんで、急いでここまで来たんだよ。

 本当は応援に来てほしかったんだが……」


「あ、そのくらいの時間だと、俺達洞窟の中にいたんだ。

 なので電波は届かなかったんだと思う。

 悪かったな」


「いや、

 こんな場所だし、君たちがいなくなったかと思って、すごく焦ったのよ」


「ところで真希、その子はどうしたんだ?」


 俺は、アーの話をそらして、スレイトをインビジブルにする。

 何気なく仕舞っているが、本当はバレたことに内心ドキドキだ。

 彼女も女の子のほうが先に気になるようで、スレイトについてのそれ以上のツッコミはなかった。


 他の娘にも、全員ここに集まるように声に出さずに呼びかける


「その子はどうしたのですか?」

 女の子を抱いたサリーを見て、イザベラが聞く。


「さっき途中で見つけてね、慌ててここに連れてきたんだ。

 石の上に座ってぼんやり空を見ていて、何を話しかけても返事がないんだ。

 喋れないのかもしれないな?」


 俺が渡した冷たいドリンクを飲んで、一息ついた真希が答える。


 年齢的には、幼稚園の入園よりは前といった感じの年であろうか?

 確かに、目は開いて瞬きはしているが、少し焦点が定まらない、ぼんやりした感じがある。


 多少土で汚れてはいるが、特に血などはついておらず、どこかが痛そうなそぶりはない。


「この子、裸でいたのか?」


「そうなんだ。 私も驚いたよ。

 見つけた時、大きな石の上で、何も着ないで膝を抱えて、ポツンと一人座っていたんだよ。

 体は汚れてはいなかったが、服や下着、靴などは周りに何も落ちてなかったんだ。

 何も喋ってくれないので、自分で脱いだのか、誰かに脱がされたのかもわからなかった。

 そこで無線で連絡を入れたのだが、接続でき(つながら)なかったんだ。


 軽く周囲を調べたが、その周りには誰もいなかったと思う。

 あまりそこに留まるのは危険かと思われたので、すぐにそこを離れたんだ」


 真希は、不審者や犯罪者が近くにいることを恐れたようだ。

 しかし、この娘も含め、スレイトの結界があるこの山中には、誰も入ることができないと俺は思っている。

 もし、誰かに連れてこられたのであれば、どうやってこの中に入ってきたのだろうか?


 真希は幼い子がすぐに食べられるようなものは持っていなかったので、取りあえず持っていた水だけは飲ませたと言っており、幸いそれは飲んでくれたようだ。



「慎二君は小さな子に食べさせられそうな食べ物を何か持っていないか?」


「菓子パンはどうですか?」


 得意のアンマガとオレンジジュースとコップをストレージから出し、真希に渡す。

 いきなり目の前に現れた食べ物であるが、真希も既に驚かなくなっていた。


 俺がさっきまで座っていた折りたたみイスを近くに取り、そこに女の子を座らせる。

 そして、真希がパンを小さくちぎって、甘い餡の部分から口の中に入れてあげる。


 少しの間、パンを口に入れた状態のままで反応がなかったが、餡の甘味が伝わったのか、少しずつ口を動かしだした。

 少しすると、カッと目を見開らき、口の中のパンを飲み込んだ。


「もっと!」


 初めて喋った!

 日本語だな。 多分。


 それを聞いて、真希ももっとあげていいか? というので、いきなり全部渡すのではなく、少しずつ小さくちぎってあげることにした。


 袋からパンをちぎる、口元に寄せると、いきなりパクっと一口でそれにかぶりついた。

 しかし、少し大きかったようで、すぐに苦しそうになったので、サリーが急いでジュースの紙コップを口元に寄せてあげる。


 香りで飲み物とわかったようで、自分でコップを手に持ち、ごくごくとのみほし、フーとため息をつく。

 サリーは女の子の手からコップを取り、残ったパンをあとは袋ごと渡す。


 サリーがニコッと笑いながらパンを渡すと、女の子もつられたようにニコッと微笑み、渡されたパンを食べる。

 残っていたパンをすべて食べると、今度はオレンジジュースをおいしそうにゆっくり飲み干した。


 意識が少しはっきりしたようなのでマリアが話しかけてみる。


「おなまえ、いえる?」


 女の子は首を傾げている。


 イザベラが、

「もっと食べる?」


 首を横に振る。

 おや?これはわかったのか?



 真希が俺の袖を引っ張り少し後ろへ移る


 そして耳元で、

「おい、彼女ら日本語話せるのか?」


 あっ! それもあったか……


「実は昨日喋れる方法が見つかった」


「見つかったってどういうことだ。いきなり日本語が話せるのか?

 それもお前の奇術ってやつか?」


「とにかくだ、昨日から話せるから、マキとも話せるぞ」


「お前と出会ってから、たしかに不思議だらけだな。

 ひょっとすると、その子もお前の不思議の子か?」


 俺は、ブンブン首を横に振り否定する。



 俺たちは、急いで下山の日程を計算してみたが、今すぐ下山しても、どう急いでも途中で日没を迎える。

 女の子の体調はさほど悪くなさそうであり、このまま暗闇を下山する方がリスクが高くなると思われるので、俺たちは明日の早朝に出発することにした。



 貴薬草のついでに?見つかった幼き子供。

 どこから入り込んでしまったのだろう?




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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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