2-03-04 魔法教室のお時間
テントの中でエターナルについて、マリアから説明を聞きました。
「わたくしは、子供のころまでは魔法が使えていましたわ。
というより、国でも上位に入れるくらい、魔法の力、そう魔力は強かったと思います。
以前お話ししたように、呪い? か薬? か、わかりませんが、わたくしのエターナルの流れが悪くなり、それ以降は強い魔法が使えなくなりましたの。
また、マナ溜りに体に悪い黒いマナが貯まっていると魔法医に言われています。
黒いマナでマナ溜りが埋まってしまうと、魔法使いは死んでしまうと言われています...」
「マリアのマナ溜りは、今どうなっているんだい?」
「元の世界では、マナ溜りが埋まってしまうまで、あと数年ではないかと言われました。
しかし、こちらの世界はエターナルが極めて薄いようなので、わたくしが感じるところでは、悪化はそれほど進んでいないと思います。
こちら世界には魔法医がいませんので、誰もそれを調べることはできませんが、わたくしは症状がすこし軽くなっているようにすら感じていますわ」
「それだと良いのだが、あまり無理をしないようにね。
そういうことであれば、真希が帰ってきたら1週間とは言わずに、エターナル濃度が高いここを離れよう」
「いえ、今申しましたように、慎二さんがわたくしに直接触れて頂けていない時は、エターナルはほとんど流れて来ていませんので、問題はありませんわ。
わたくしとしては、もっと触れて頂きたいのですが」
「あ、ずるーい。 サリーも触れてもらいたいなぁ!」
おいおい、チミタチ、チミタチ、何を言い出すのかね。
「私も、 触れて欲しいです……」
イザベラも、下を向きながら耳を真っ赤にして、ポツリとつぶやいた。
紳士な俺は聞こえなかったふりをして、一旦ドリンクタイムにする。
スレイト通信が働いているので、実のところ聞こえないなんて事は、絶対にないのだがね。
でも、イザベラも少し心を開き始めて、ちょっと嬉しかった。
お茶をしながら、話しは続く。
「魔法は、その理屈を理解し、マナ溜りに貯めたマナからエターナルを取り出し、魔法を行使しますの。
魔法とは、マナ溜りを持つものが知る学問と技能です。
国の中に、自然にマナ溜りを持つものが時折現れます。
しかし、それは未熟なマナ溜りであり、そのまま成長すると、やがて消えてしまいますわ。
体内のエターナルの流しかたと、魔法の発動方法、魔法自体の知識と、マナの貯え方、そして流し出し方など多くの知識や操作技術、それらのいずれかが欠けても魔法を使うことができません。
そのマナ溜りの発達は、成人前の子供の時が良いので、わたくしの国では定期的に子供の魔法適性の検査を義務付け、未熟なマナ溜りができていないかを調べています。
他国でも魔法適性がある者も生まれているのでしょうが、幼少期にマナ溜りを発達させて、さらに正しい魔法の学問と技術を与えないと、魔法使いにはなれません。
我が国の魔法学問と技術は当然門外不出ですわ」
「ふーん、 魔法は体質と、学問と技術の習得ってのが、あるのだな」
「ええ、わたくしは先生では有りませんので詳しい理屈は語れませんが、わたくしが理解している魔法の発動というのは、次の様な感じです。
自分のマナ溜りから取り出したエターナルを体から外に出し、周りの空間に満ちているエターナルをそれにくっつけます。
そうです、小さな粒のエターナルを空間に放出し、その場にあるエターナルをそれにくっつけて、周りに大きなエターナルの粒を作ると思ってください。
当然それは、目には見えませんが。
自分で出した空間の粒を動かすことで、大きな粒となったエターナルを引き寄せたり、遠ざけたりできます。
そう、自分で出したエターナルの粒は、自分の意思で動かすことが出来ます。
そして、引き寄せたり遠ざけたりを繰り返すと、粒々が空間を行ったり来たりします」
俺の推測ではあるが、自分のマナ溜りから出たエターナルは、この世界で言う静電気や磁気のようなものを帯びていて、動かすことができるようだ。
「この時、粒々同士を、力をかけないように、フワッとした感じで擦り合わせるイメージをします。
それを何度も素早く繰り返していると、やがて粒々同士がくっつくようになります」
ん? 擦り合わせることで、やはり静電気の発生か?
「さらに、それを早く繰り返していると、その中に光る粒が現れます。
さっき貯めたマナを使い切るためにも、今ここで試してみましょう」
彼女は両手の平を少し離し、向かい合わせると、先程の様に手の間に光る粒ができ始めた。
「わたくしは今、手の中の粒々を高速に擦り合わせるイメージをしています。
今光っているこの粒を、皆さん指で触ってみてください。
この大きさならば触っても大丈夫です」
俺達は、マリアの手の間の光の粒を指で触った。
「きゃ!」
「あぁ!」
「あっ! なんかピリッと軽くしびれたぞ!」
みんな面白そうな顔をして互いの顔を見ている。
皆一様に髪の毛が逆だっているのだ。
そうだ、この感じはやはり静電気だ!
「自然の雷ほど強いものは無理ですが、小さな火花ならばできます。
今すべてのマナを放出しますので、今度は決して触らないで下さい」
そう言うと、手の向きをすこしずらし、テントの外に向けた。
光はテントの外にスゥーと移動し、みるみるそれが明るく光りだした。
「今、粒を早く、強くこすっています。
更に周りのエターナルを混ぜて、更に大きく強くこすってみます」
そう言うと、手を空に向けた。
強くなった光が、再びスゥーっと空高くに持ち上がると、ピカッ! と光り、バチンと大きな音がした。
驚いた! どうやら静電気から小さな雷ができたらしい。
「そんなに力を使って大丈夫なのか?」
「いえ、これにはフォースはほとんど使っていません。
あ、こういう周りに及ぼす力の事をフォースと呼んでいます。
わたくしは、エターナルの流れ方を変えているだけで、使っているフォースは最初の光る粒と、さほど変わりません。
でも、いまのでマナ溜りは空になりました」
さっき少し手をつないだだけで、これだけの事ができるのであれば、すごくエネルギー、いやフォースの効率は高い。
マリアの世界の魔法使いは、さぞすごい事ができるのだろうな。
「マナを使い切りましたので、ここからは説明だけです。
普段は、エターナルの流れというものは、風のように定まっていない方向に流れています。
わたくしのマナ溜りからエターナルを流すと、そのエターナルに沿うように、周りのエターナルを揃えて流す事ができます。
流れる方向と強さは、自分が出すエターナルに従います。
また、あまり大きな動きはできませんが、最後に出すエターナルを強めに流すと、わたくしがエターナルを出すのを止めても、しばらく同じ流れを保つことができます。
流れる速度をすごく遅くして、止まるくらいまで遅くして同じ場所で光らせると、それが魔法の明かりになります。
しかし、これは電気を使った明かりの方が簡単ですわね」
それで、長時間使う明かりは、魔法では難しいと言ったのか。
「どれくらい光っていられるのか?」
「最後に大量のエターナルを流し込めれば、空間にわたくしのエターナルが残っている限り光つづけます。
それがどれだけの時間と言うのは、魔法使いや周りのエターナルによっても異なりますのでわかりません。
特にわたくしはそれほど強く魔法が使えなかったので、一番強く出したときでも、10分持ちませんでした」
確かに10分では、夜の明かりとして使うにはちょっと短いな。。
「これまでは、柔らかい粒々を、やさしく擦っていました。
今度の説明では、ツブツブを、ぎゅっと力をかけて、ツブを潰すようなイメージしながら擦ります。
強く擦り始めると暗く赤くボンヤリ光ります。
その状態になったら、全体を強くぎゅっと握り潰します。
すると、そこにポッと炎が出ます。
周りに燃えやすいものがあることろでこの魔法を使うと、火をつけることができます」
ああ、摩擦熱だな!
「それを強く繰り返すと、赤い炎はだんだん白くなり、やがてその炎は金属をも溶かすことができます。
でも、さすがにこれは上級の魔法使いでないとできません」
うわー! すげー! 金属をも溶かすんだ。
「じゃあ、逆に冷たくする事ってできるの?」
「これは少しお見せした方がよさそうですので、すみませんがもう一度すこしマナを貯めさせてください。
あ、体に問題ないくらいで構いませんので」
すでに自分の好奇心に負けており、俺は迷う事もなく、マリアと少し手をつないだ。
「それでは、わかりやすいように水を冷してみます」
彼女は空中に500円玉くらいの小さな水の玉を出す。
おいおい、その時点で驚きでしょ。
「今度は、水玉の周りに有るつぶつぶを、外に向かって引っ張るような流れを作ります」
引っ張りますというと、空中に浮いた水の玉がいきなりパンッ!と凍りついた。
浮いていた玉をつかんで手渡されると、確かに冷たい! 氷だ。
水の周りにある空気による断熱膨張による冷却か!
「それ、サリーが食べてみていい?」
また君が、食べるのかね?
「もちろんですわ。 どうぞ」
「うーん。 冷たくっておいしい!」
「この状態で、氷の中のエターナルの動きを止めると、氷は更に冷たくなります。
エターナルの動きを完全に止めるのは、大量のマナを一度に必要としますので、やはり大きな魔法が使える者でないとできません。
はい、残念ながら、わたくしにはできません」
分子運動の停止までできるのか……
「それより、今どうやって空中に水玉を出したの?」
「この周りには、小さな水の粒がたくさん浮いているので、エターナルで水の粒を選んで、そこに吸い寄せただけです。
目には見えませんが、空中にはいろいろな小さな粒が浮かんでいます」
あぁ、錬金術かとおもってビビった。
単なる水蒸気の結晶化か。 って、感覚がマヒしてきたかな?
でも氷になっても浮いていたよな?
水蒸気を吸い寄せたって、どうやったの?
「ここには水の粒がたくさんありますので、水であればたくさん作ることができます。
周りの水の粒を集めるだけであれば簡単なので、普段は先ほどの方法を使います。
ここに無い場合は別の物から作れなくもありません。
ただ何でも作れるわけではありませんが」
「はあ???」
そう言うと、彼女は近くの空中からバケツをひっくり返したような滝? を出した
すぐに止めたが、雨でぬれた地面に、更なる水たまりができてしまった。
「今度は、集めた水を、小さな水の粒として散らします」
そう言うと地面の水溜まりがすっと消えた。
もう世界びっくり人間のチャンピョンに決定だ!
この娘ならば、一人でもこの世界で生きて行ける確信を得た。
「それと、」
マリアはちょっと考え込んでしまった。
「え? まだあるの?」
「えーと、ここまで雷、光、火に水に氷と乾燥を見せましたよね……」
地面に向かって、
「これは土ですよね。
これに粒々を混ぜてこすって潰します」
そこには丸い野球ボールくらいの泥団子が出来ていた。
「触っても大丈夫か?」って聞く。
「はいっ」て言ってサリーが拾い上げ、俺の手に乗せてくれたが、硬い。
「これを、もうちょっと強く固めてみます」
空中に浮かすと、土団子はプシューと白い煙を吐き出して、ビー玉ぐらいまで小さくなり、丸い石になっていた。
「そのまま固めると、とても熱くなるので、周囲の水を加えながら冷やしながら固めました。
石から出た煙は、冷やすために出た水の粒なので、白く見えます。
これは、粒々を中心にぎゅっと寄せて、強く押しつぶすようなイメージで固めたのですわ。
水の粒のように、土の粒を中心にギュッとすると、バラバラだった土がくっつくいて固い玉ができます。
逆にパアっと広げると、くっつく力が解き放なされ、また土のつぶつぶに戻ってしまいますわ」
あ、これ兵器級だ。 銀行の金庫のダイアル錠だって壊せそうだな。
「あの、ところでマリアさんや、さっき俺の手を少ししか握っていないのに、なんか沢山魔法が使えてないか?」
「あら、そういえばなんか調子が良いですわね。
でも、さっきの球でお終いのようですわ」
目前で展開された大マジックショーに、俺たちは唖然としていた。
これがマリアの本当の実力か!
「魔法って、すごいな……
マリアの王室の人って、皆がこんなに魔法が使えるのか?」
「いえ、皆さんはどちらかと言うと、それぞれ専門の魔法を習得し、その魔法だけが強く使えるようにいつも訓練してますの。
わたくしは強い魔法ができないので、その代わりにいろいろな種類の魔法を沢山勉強しましたわ。
でも、今ぐらいの小さな魔法の力では、王宮の仕事としては足りずに、他国と戦争になった時の魔法としては全く役に立ちません。
言うならば、器用貧乏みたいなものですわね」
どこでそんな日本語を? あ、それは俺の知識か。
やはり、マリアの魔法ってすごいようです!




