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2-02-03 里へ到着

 次元のゲートを抜けた慎二たちは、お婆さんの里に無事に着いたようです。



 とりあえず里には到着したので、まずは休憩することにした。


 途中何回か早めの休みを取りつつの登山であったので、4時間くらいかかってしまったが、出発が朝早かったので、なんとか10時過ぎに着いた。

 休憩が無ければ、実際に歩いていたのは半分ぐらいなんだけどね。


 真希の荷物をストレージから出してあげる。


 あっ、ワンツースリーって言うのを忘れてた。

 ま、いいか。 ゲートの事もあったし、今更か。


「みんな、何が飲みたい?」


 サリーたちは、皆オレンジジュースがほしいという。 本当にオレンジが好きだね。

 俺はコーラかな?

 真希はどうする?


「冷えていれば、私もコーラと言いたいところだが、そうだなー」


「ほい、冷えた缶コーラ」


「何これ! キンキンに冷えているじゃない?!

 これも手品なの?」


「今はそうと思っておいてほしい」


「ありがとな」


 彼女は慎重にプルタブを開けるが、山道を持ってきた直後にもかかわらず、コーラが噴き出すことはなかった。



 サリー達にはペットボトルの冷えたドリンクをそれぞれ渡す。


「これはどうするの?」


 イザベラはペットボトルを自分で開けるのは初めてだった。

 すでにスクリューキャップを開けたことがあるサリーが、自分のボトルを手本に、無事に開けられた。


「これで、どうして液体が漏れないの?」

 上級工員さんの興味はそこですか?


 俺も自分のコーラを開け一気に半分ほど飲む。


 マリアが何を飲んでいるのですかと聞いてきた。

 マリアも昨夜飲んだ、あの黒いコーラだよと教えてあげると、


「わたくしも、そちらをいただけますか?」

 と、まだ開ける前のオレンジジュースのボトルを俺に返してきた。


 炭酸は大丈夫なようで、コーラが気に入ってくれたみたいだ。


「これはとても泡がきつい飲み物ですが、わたくしの国でもお酒などで、泡が出る飲み物はありますわ

 今のように、少し疲れた時、飲みたくなる飲み物ですわね」


「うん、サリーも旅してた時、鉱泉水って言って、泡が出る水を飲んだことがあるよ!」


「私の世界では、見たことはなかったわね」



「お昼までには少し時間があるが、今朝は早かったのでちょっとブランチにしよう」

 朝食は、温泉宿で作ってくれたおにぎりを、送ってくれた車の中で頂きながら来た。


 まだ飲み物が残っているうちに、俺はストレージからカレーパンを取り出した。

 そう、商店街にお願いして、作ってもらったあのパンだ。

 まだほんのりと温かい。 どうやら夕方最後に作ってくれたようだ。


 初めて食べるカレーの味に大騒ぎ。

 しまった、カレーパンより先に、まだカレーを食べさせていなかった。


 真希も、

「美味しいカレーパンですね。 東京の味がします。

 揚げたてに近いものが、こんな山中でいただけるなんて、魔術ならではですね」


 うっ! 皮肉かな? どこまで気が付いているか? そろそろ話すべきか迷ってくる。


 食べ終わると、俺はテントを出し、組み立てることにするが、その前に、離れたところにキャンプ用の簡易トイレを設置する。


 小さなテントの中に、尿を固める凝固剤が入った便器があり、簡易椅子に座って使えるものだ。

 あと、使用後の黒い袋を捨てるための、密閉式の小型のポリバケツもテントの横に設置しておく。

 テントの中には暗くなると光るLEDのランタンをぶら下げておく。

 これであれば、夜でもトイレテントの位置が判る。


 設置すると、すぐにサリーが使いたいと、まだ説明前なのに入っていった。

 便器の袋は最初にセットしてあるから、すぐに使って大丈夫だ。


 サリーが使い終わった後に、黒い袋の取り換え方を説明し、他の女性にも説明しておくようにお願いした。


「これは、お湯が出ないの?」


 ちょっと残念そうにサリーが言う。

 すみません。 魔法のような道具ではありません。 ここでは紙を使ってください。



 真希は、一人が使う小型テントを持ってきており、この後単独で里の中を調べたいと、ここにはテントを張らないようだ。

 毎日ここまで戻ると捜査範囲が限られてしまうので、その一人用のテントで、途中でビバークするとのことである。

 探索する里の広さがまだわからないので、今から出発して4日後の火曜日の夜までに、一度こちらに戻るという。

 俺の滞在が最大1週間と聞いているので、場合によってもう一度でかけて調査すると言っている。


 連絡はスマホで... と言って、ここは電波が入らないことを思い出した。

 マキのスマホも同様にアンテナは全く立っていなかった。


 以前来た時、携帯電話が使用できないのはわかっていたので、事前にショッピングセンターで小型のトランシーバを調達してきている。

 免許は必要ないタイプではあるが、見通しでは1Kmは通信できる、きちんとアンテナが付いたトランシーバだ。

 俺たちはスレイト通信ができるようになり、既にトランシーバは不要となっている。

 予備のバッテリも買ってあるので、これは真希に貸すことにしよう。

 まあ、スレイト通信も、どこまで離れて継ながるの実験をする必要はあるけどね。


 イザベラとサリーがトランシーバに興味を持って、自分も試したいと言う。


 トランシーバは携帯電話と異なり、 |PTT ボタン《Push To Talk》を押している間は送信となり、ボタンから指を離すと受信に切り替わる。

 単方向の通話方式なので、話し終わったことを伝えるために、メッセージの最後に「どうぞ」を着ける。

 まあ、「オーバー」とか、「送れ」などとも言ったりするようだが。


 トランシーバを受け取ったサリーは、早速小走りに駆けていく。


「イザベラさん、聞こえますか? どうぞ!」


「サリーさん! 聞こえます、聞こえています! すごいですね! 摩導具にもこんなのはありませんでした! そうぞ!」


 おいおい、真希がいるのに、いきなり摩導具なんて言っちゃってるよ!


「サリーさん! 今度はマリアが話しています。 聞こえていますか? どうぞ!」


「マリアさん、よく聞こえますよ! はあはあ! どうぞ!」


 サリーはまだ走っているようだ。


「サリー、そろそろこちらへ戻って来てくれ。 どうぞ!」


 俺が持っていたトランシーバと予備バッテリ2個を真希に渡す。

 真希はベストのフックにトランシーバを取り付け、バッテリはポケットにしまった。


 はあはあ言いながら、サリーが戻ってきた。

 どこまで走って行ってたのやら。

 おもちゃを咥えて、野山を駆けて行く子犬の姿を思い浮かべてしまった。


 真希さんが装備の点検をしているようだが、ちょっと困った顔をしている。


「どうしましたか?」


「ざっと見渡せる範囲だけでも、私が持っているスマホのマップと、ここは地形が違うようだ。

 それと、スマホのGPS機能が働いていない。

 GPS衛星が1つも拾えていないようだ」


 GPSは宇宙を飛んでいる衛星からの電波を使って動いているシステムだ。

 GPS受信機が3個以上の衛星をとらえると、受信機の位置が判る。

 〚外伝に参考図あり〛


 スマホやカーナビには、このGPS受信機が入っているので、通常は自分がいる場所がマップに表示される。

 しかし、衛星からの電波が受信できないこの場所では、GPSを使うことができない。


「場所が判らずに、ここに戻ってこれますか?」


「まあ、最初山に入った時は、スマホ地図もGPSなんか持ってなかったから、とりあえず大丈夫さ。

 私は山の師匠に鍛えられて、山歩きはいろいろ教わっているからな」


「山の師匠? って何ですか?」


「あぁ、役場の課長、そう私のおじさんの知り合いらしいのだ。

 課長よりもかなり年上の方で、山に落ちている石を拾うのが趣味らしく、私が山に入ると言った時に課長が紹介してくれて、何回かその教えを乞うたのよ。

 判らないことがあったら、師匠と呼んで、いつも相談させてもらってきたのよ。

 まあ、山に入るのも今回が最後と思うので、残念ながら師匠からもこれで卒業かな」


「ところで、真希さん、今日のお昼はどうされますか?

 食べ物は沢山持ってきていますから、よろしければ食べられてから出かけませんか?」


「いや、ありがとう。 さっきカレーパンを頂いたし、大丈夫だよ。

 昼は遅めになるだろうから、ご飯までここで待っているのは時間が惜しいからね。 私はもう出発するよ。

 スマホが使えないので、トランシーバは助かった。 君たちも頑張ってくれ!

 では、行ってくる!」


 そう言うと、真希さんは大きなリュックを背負って出発していった。

 なんか、以前のイメージと違って、とてもさっぱりとした姉さん肌の人だな。


 真希には言えないが、この里に携帯電話やGPSの電波が届いていないところを見ると、ゲートで電波も遮断されていると考えられる。

 しかし、その空間の内側であればトランシーバの電波は互いに通じるようで、ちょっと安心した。


 当初、こちらで公開していました人工衛星高度についての解説図は、下記外伝に移動しました。


 パラセル テクニカル外伝 - パラセルと異次元空間

 外伝P2-02-03 里へ到着 解説図

 https://ncode.syosetu.com/n3633gf/2/



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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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