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1-03-01 長い休み

 長期休みに入った慎二君、今朝はまったりとした朝を迎えたようです。


 土曜日の朝、いよいよ長い休みの始まりである。


 昨夜は少し飲んだので、今朝くらいはもう少しゆっくり寝ていればよいのに、長らく続いた会社勤めの習慣から、今朝も早くから目が覚めてしまった。


 せっかく気持ちよく目覚め、ここからもう一度寝るのは何かもったいない気もするので、ちょいと早いが目覚めのシャワーを浴びる。


 昨夜買ったコンビニの袋からアンマガと、冷蔵庫からは冷たい紙パックの牛乳を取り出す。

 俺の好物のアンマガは、アンコとマーガリンを挟んだコッペパンだ。

 最近はあんこやジャムのほかにもいろいろなコッペパンも売っているが、アンマガは外せない。

 あと、小さな薄皮のアンパンが何個か入ったのも買ってある。

 特に甘党というわけではないのだが、ついアンコ物に引かれてしまう。


 今回出かける予定に合わせ、先日から冷蔵庫をカラにすべく、毎日調整をしてきた。

 そして休みモード中に何か食べられるように、菓子パンを買ってきた。

 パンだったら、残っても持って行けると持ったので、昨夜はコンビニで、少し多めに買っておいた。


 冷蔵庫には、あとはペットボトルやドリンク以外目ぼしいものは入っていない。

 生ごみ収集は火曜、金曜日なので、昨日の朝に処分したし……


 だいたい部屋の中の傷む物の処分は終わったかな?

 そんなことを考えながら冷蔵庫を閉じた。


 そして目線が玄関に移った時、見慣れない包が下駄箱の上に置かれていることに気がついた。


 小さな黒い包である。


 そういえば昨夜、いい気分で帰ってきた際、何か受け取ったような気がする。


 扉を閉めると同時に、鍵をかける前に玄関ドアがノックされ、


「お届け物です」


 って扉の外から声が聞こえ、ビックリした。

 しかし、朝になって、酒が冷めた状態で考えると、何かおかしい。


 マンションの玄関はオートロックだし、部屋の玄関インターホンは鳴っていないし。

 玄関に宅配ボックスはあるのに、なぜ使わないの?

 それに、昨日部屋に入る前、2階の通路には誰もいなかったのに……



 その小さな包は、黒い薄いプラスチックフィルムのような袋で包まれていた。


 さらに変だと思ったのは、黒い袋には宛名ラベルや配送伝票はついていない。

 黒い袋なので、一瞬中国からの通販商品かと思ったが、違うようだ。


 お出かけの件もあり、通販は最近頼んでいないので、怪しい荷物なのか?


 袋の端をつまんで持ち上げてみるが、黒い袋には宛先ラベルや袋を閉じたヒートシール跡はどこにもない。

 全体が一体の袋になっており、どこにも開け口の切込みやマークがない。


 指で引っ張って開けようとしたが、袋は伸びたり破れたりはしない強い材質である。

 玄関から持ってきて、パソコンラックに置いてあるハサミで袋の端を切ろうと思い、ハサミの刃を袋に軽く当てた瞬間、


『パチッッ』


 小さな破裂音とともに、黒い袋が一瞬で目の前から消えた。


 破れたわけでなく、本当に袋がパッと消えたのだ。

 そして袋の中身だったと思われるものが、パソコンラックのテーブルの上にゴトゴトンと大きな音とともに落ちた。

 ノートパソコンを畳んで立てかけておいてよかった。


 子供の頃、駄菓子で丸い形の羊羹があった。

 小さなゴム風船の中に羊羹が詰まっており、ゴムの皮を爪楊枝で突き刺すと、周りのゴム包装がプチンと一瞬で弾け飛び、挿した楊枝の先に羊羹が現れる。

 そんなものを思い出していた。

 ひょっとすると、おれの餡子好きの原点は羊羹かもしれないなぁ。


(ちなみに、今でも福島では玉羊羹と呼ばれ、銘菓として残っているようである。)


 もちろん今のは羊羹などはなく、手にハサミが残っていた……

 目の前で起きたことに、何が起こったのか理解ができなかったので、一瞬頭が逃避していたようだ。


 続いてカラカラカラガタンという音に、ハッと気が付き、あわててラックのテーブルの上を見ると、中からこぼれ落ちたであろう、一枚の黒い板と白っぽい銀メダルと2つの半透明な四角っぽい石のようなものが落ちていた。

 メダルは落ちたとき、テーブルの上でグルグルと回っていたものが、少し遅れて倒れた音だった。

 ガラステーブルの上で開けなくてよかった……


 恐る恐るそのメダルを手に取ってみた。

 見た目以上に、ずしりと重い感覚。

 さっき袋を持った時の重さとはとても思えない。


 500円玉の2倍くらいの直径がありそうだ。

 表面には模様があるが、あまりはっきりとは見えない。

 よくみると、見慣れぬ模様がある。


 メダルは、全体に白っぽくくすんだ、銀色の金属質感で、厚みもあり、その縁は溶けたように少し丸みを帯びている。

 メダルと言っても完全なに真円ではなく、すこし歪んでおり、どことなく古っぽさを感じさせる。

 色合いや質感からメダルは金属製であり、手で持ったときの重さはずしりと重い。

 近代の技術で量産されたメダルとは思えず、しかし玩具のような安っぽさはなく、古い海外のメダルなのかもしれない。


 なぜ、このような物が俺の下に送られてきたのか?


 送りつけ詐欺かな? お前はすでに開封したから、代金を払えって。


 メダルに気を引かれていたが、あと黒い板と2つの石が残っている。

 石は水晶なのか、白っぽい乳白色の石のようだ。


 立ったままというのも何なので、まずは黒い板を持ってリビングのソファーまで行き、ガラステーブルに置いて観察してみる。


 黒い板は、磨かれた石のような板で、角が丸められたら美しい長方形で、つなぎ目はどこにもなく、全体が1枚板で出来ている。

 表面を指で撫でてみると、ガラスのようにツルッと滑らかだが、顔が映ったりはしない。

 光が全く反射しない不思議な黒い素材のようだ。


 片手で持てるその形から、小型のタブレットPCをイメージさせる。


 ん? そういえば、これって、どこかで見たことあるな?


 少し思い出したが、昨夜この黒い袋を受け取る時に、これと同じような板を差し出され、俺が手を出したら、その黒い板を手の上に乗せられたっけ。

 そうだ、思い出した!

 黒い板を乗せられたかと思ったら、手の上に板はなく、この荷物が乗っていた。

 手品かと思ったっけ。

 どうやら、黒い板を乗せることが受取確認となったようであった。


 今黒い板を見たことで、昨夜のことを思い出してきた。


 さっき黒い袋は消えてしまったが、この板は触っても大丈夫かな?

 消えちゃわないか恐る恐る触るが、大丈夫のようだ。


 よく見るが、板には裏表の区別はなく、一枚の黒い石板のような感じだ。


 指でつかむのではなく、何げなく、昨夜の宅配受け取りと同じようにポンと手の平の上に板を置いてみた。


『ホワン』


 すると、音とともに、何の前触れもなく板の表面がぼんやりと光った。


 光りだした黒い板、部屋の中でいきなり火なんか噴かなきゃいいけどね。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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