1-06-08 女性服問題、ふたたび
なぜか、異世界から女性が集まってくる慎二君、モテ期到来ですね。
夕方になってきたので、俺としてはそろそろ外出したい。
サリーにも、出かけることを話し、娘たちを順にシャワーを浴びてもらう。
ここでもひと波乱あったのだが、急がないと夜になる。
サリーには申し訳ないが、先日サリーに買ってあげた新品の服をマリアに着てもらう。
イザベラは背が高いので、サリーの買った服では小さいようで、俺のシャツとお尻が入りそうな(失礼!)、柔らかなスウェットパンツを使ってもらう。
イザベラは股下も長く、たとえ男物でも、俺のでは短いくらいである。 俺って…… シクシク
マリアにはブラのサイズが合わないようだが、ゲホンゲホン、急ぐのでノーブラTシャツの上に、俺のジャケットでそれを隠す。
下は、やはりお尻が入りそうな(失礼!)、俺のスウェット。
お尻だけ見ると、サリーは東洋人に近いような体型であるが、2人は西洋人体形だな。
着てきた服も、持ってきた服も、それではちょっと日本の町には着ていけそうにないし、武器を携帯されても困るし...
とりあえず、サリー用に買った服と俺の服を重ね着して、なんとか近所までなら外を歩けるくらいになった。
スウェットを履いての外出だが、外人さん体型が着ると、日本人のヤンキー娘姿には見えないな。
そんなこんなで、なんとか外を出歩けそうな服に着替えると、先日に行った駅近の大手カジュアル衣料品店まで全員を連れて移動する。
当然途中の街並みには興味津々だが、ここは我慢してもらって、今は急いで引っ張っていく。
先日のスタッフさんを探したが、困ったことに今日は見つからない。
どうしようかなと思っていたら、女の子が声をかけてきた。
「あら、先日はありがとうございました」
えっ? よく見ると、探していた先日のスタッフさんだ。
今日は私服だったので、わからなかった。
「あ、君を探してたのだけど、今日はお仕事ではないの?」
「ええ、日中のシフトですので、今日はもうあがりです。
先日の品に何か問題でもございましたか?」
「いや、そうではなく…… もう少し必要になったので」
といいながら、俺は2人に視線を向ける。
「あの、先日と同じように買いたいので、出来ましたら他のスタッフの方を紹介していただけますか?」
そう彼女に言うと、彼女は少し考えたあと、
「もしよろしければ、私がコーディネートしましょうか?」
「え、今日はお仕事もう終わりですよね。
お給料がつかないのじゃ申し訳ないですよ」
「この時間帯だと、コーデを頼めそうなスタッフはいないし、私も今日はこの後は空いていますので大丈夫ですよ。
洋服選びは好きですから!」
そんな時間外で申し訳ないとお断りしているのに、サリーが「わー! ありがとう」と言って彼女の手を握っている。
そして、皆に「この人、お洋服選びがとっても上手なの!」
って紹介してしまっているし……
「本当によろしいのですか?」
「かまいませんよ。
ところで、お客様は当店の商品で統一をされたいのですか?」
「いえ、特にブランドの希望はありませんので、自由に選んでもらって構いません」
「でしたら、やりがいがあります。
店員としての対応では、他店の商品は選べませんものね」
そう、くすっと笑いながら言う。
「ご予算は、前回と同じくらいで良いですか?」
「それでお願いします。
もし、揃いで合わせるのであれば、この子、サリーのも分も追加でお願いします」
「あ、申し遅れました。
俺は加納慎二と申します。
この子がサリー、 それと、えーと」
「マリアです。 どうぞよろしくお願いします」
「イザベラです。 私もお願いします」
「ちょっと事情があって、この二人はつい最近知り合ったばかりで、私もよくわからないのですが……
あ、それで今日のお礼と言ってはなんですが、この後皆で夕食に行こうと思っているのですが、もしよろしければご一緒にお食事いかがですか?」
「えっ、それはうれしいです。
だったら思いっきり頑張ります。
あ、遅れました。
私は服部由布子と申します。
では最初に採寸を済ませておきますので、皆さんあの試着室までお越しください」
服部さんの声が聞こえる範囲で、俺は単なる翻訳装置として、つかず離れずついて回っていた。
2人増えてしまっただけでも、男の自分が思っているよりもお金がかかってしまう。
この娘たちはまだ気づいていないが、この世界のファッションや化粧品などに嵌まりだしたら、一体いくら必要なのだか。
俺の稼ぎだけで今後暮らしていけるのか、少し、いや、かなり心配になってきた。 何しろ姫様だし。
お嬢さん方は、こちらの世界に腰を据える前提でやって来ているので、こちらの都合など関係なさそうだ。
どう見ても、どう聞いても、3人共が俺の元から出ていく気はなさそうだ。
元の世界に返す方法はなさそうだし、俺がいないと言葉が通じず、全員戸籍も無いので、仕事をさせることは現実的に無理があり、当面は俺が扶養するしかない。
お告げの人に責任を取ってほしい。
そうはいっても、この世界のことが解かってきた場合、このアクティブそうな娘たちが俺の部屋の中で、毎日じっと隠れているなんて絶対にありそうもない。
幸い、俺はIT系のエンジニアであり、どちらかというと世の中的には、稼ぎは良い方だと自分では思っている。
俺が4人家族のお父さんだと考えれば、妻と娘二人と置き換えれば、何とか俺の給料で養って、生活できないかな?
そう思いながら、自分をお父さんと思うなんて…… 俺はまだ独身だぞー!
やっぱり、お告げの人に面倒を見てもらいたい!
さて、洋服選びも終わり、支払いを済ませた皆さんの大量の荷物を、人影のない奥の通路へ持っていき、急いでストレージにしまった。
まあ、急がなくとも、収納は一瞬なのだがね。
そう、大量の荷物を抱えて歩いた、先日の学習効果がさっそく発揮されたことになる。
[なんて便利なんだ! ストレージ。 ありがとう! アー!]
ストレージはスレイトの機能であって、アー自身が操作する機能ではないが、なぜかアーに感謝している。
さて、全員の当面の服は、とりあえずこれで良さそうだ。
でも、最初から思っていたが、イザベラはすれ違う男共が、つい振り向くタイプだ。
身長もありスタイルも良く、こうして服できちんと決めると、スッピンではあっても外人さんのモデルみたいだ。
そう、すっごい美人という感じではなく、服のモデルさんみたいにちょっと無機質で端正な顔立ちなんだ。
そう、ギリシャ彫刻って言ったほうが良いかな。
マリアは、姫様オーラが出すぎているので、恐れ多くて男の人は控えてしまう。
この3人の中ではサリーが一番庶民的であり、かわいいといった感じなので、ほっとする存在だ。
さっきの服を選んでくれた店員さんを連れて食事に行く事にしようとしたが、買い物が終わった時点で彼女は電話をしており、少し難しい顔をしている。
「せっかくお誘いいただいたのですが、ちょっと急用が入ってしまい、今日はちょっとご一緒できなくなってしまいました。
もし機会がありましたら、今度ご一緒したいと思いますので、今日はこれで失礼します」
「え、では次回しっかりとお礼させていただきます。
今日は長い時間本当にありがとうございました」
「お姉さん、 昨日選んでもらった服も大好きです。
今日はありがとうございました」
そういうと、3人とも覚えたばかりのお辞儀をして、彼女を見送った。
「さて、では皆食事に行きますか?
今夜はどこに行こうかな」
すると、サリーがもじもじしながら、
「あの、慎二……
食べるのは何でもいいの?」
「ああ、いいよ。
ここまで皆に聞いた話だと、食材としては肉系がよさそうだが、何か食べたいものがあるのかい?」
「えーとね、昨日行ったお店にね、もう一度行きたいなーって思って」
「え、ハンバーガーって、また同じもので良いの?」
「うん!」
「じゃあ、もう少し高級なハンバーガーのお店にしようか?」
「いえ、昨日の店がいいの。
食べてみたいのがあったので、今日はそれも食べてみたいの。
お肉と卵が挟んであるのが食べてみたいの。
ダメ?」
そういえば、昨日隣の席の人がそれを食べていたな。
あの勢いで食べていたのに、よく周りまで見ていられるな。
まあ、確かに食べれそうな肉を探るには、ハンバーガー屋さんは良いな。
「じゃあ、もう一度同じ店にしよう。
みんなそこに行くからね」
「絶対に美味しいから、皆で行こうね!」
そう言うと、返事も待たず、先頭を切って歩き出すサリー。
店から外に出ると、相変わらずきょろきょろと周りを見渡す二人に対して、まだ2度目の外出だというのに、すでに自分の街のように堂々と歩きだすサリーを見て、少しおかしな気分になった。
人というのは、意外とすぐに環境に馴染むものだな。
そう思っているうちに、近所のハンバーガー屋さんに到着した。
今日は3人いるので多めに買うこととして、昨日と同様に基本の各種類を買うことにした。
味を見るために、半分ずつ食べようとしたら、サリーにきっちり人数分を買ってほしいとせがまれた。
自分で包みを開けて食べるのが楽しかったらしい。
でもそれだと、一人4個だとすこし多く買いすぎてしまうな。
それに卵入りか。
さすがにこれじゃ食べきれないよな。 ま、いっか。
「すみません、ではビーフ、エッグ、チキン、フィッシュの4種をそれぞれ4個と、ポテトのLを4つ、オレンジジュースL3個、コーラLをお願いします。
店内で食べますが、さすがにこの量だと残るかもしれないので、あとで何枚か袋をいただけますか?」
席に座り少し待っていると、一回の調理ではさすがに多かったようで、ドリンクとポテトと、出来たものから順に3回に分けて持ってきてくれた。
説明しようとする俺を遮り、サリーが説明を始めた。
この店に来たのは、おととい土曜日の事であるが、一度の説明だったのに間違いなくよく覚えているな。
なんて感心している間に、戦いは既に始まっていた。
少し出遅れてしまったが、今日はすべて人数分買ってある。
俺も来ているビーフから食べ始めた。
しかし、とりあえず皆さん度の食材の適応も問題が無いようである。
次を持ってきてもらう前に、すべてが食べ終えられてしまっている。
「この世界では食事に食器などのカトラリーは使わないのですね。
わたくし、手で持って食事したのって初めてです。
とても楽しくて、美味しいですわ」
「パンで挟んで紙で包んであるので、手で持てるのですね。
これだと工房で忙しい時でも食事ができます
とてもおいしく、次はまだなのですか?」
「すごいでしょう!
皆、この店がきっと気に入ると思ったの!」
そんな好評のうちに、最後の注文分のハンバーガーがやってきた。
すべて食べ終わっても、まだ名残惜しそうなので、俺はデザートを追加で注文しに行く事にした。
「お持ち帰りの袋でしたね。
何枚必要ですか?」
「いや、美味しくって全部食べてしまいました。
後、冷たいスイーツを追加したくって、それを4つお願いします」
お店の店員さんはニコッと笑い、また番号札を渡してくれた。
席に戻り、
「この世界の物を初めて食べて、お腹は大丈夫かい?」
「ええ、問題ありませんわ」
「大丈夫です。 まだ少しであれば食べられます」
自慢げに、ニコニコしているサリーを始め、3人共よく食べる。
たぶん、異世界の人たちはスリムなのに、日本の女性よりも大食らいのようだ。
ソフトクリームをシェイクしたドリンクが来ると、皆必死でそれを飲んでいる。
ストローで飲むこと自体、初めてなうえ、それを思いっきり吸いこまないと、シェイクしたクリームは飲めないので、みな真剣だ。
でも、口の中に入ると甘くて冷たい初めての味に驚き、無言で皆タコぐちになっている。
無事に食事も終わり、お店を出る前に全員お手洗いをすますように、サリーに案内をお願いする。
何しろ、外のトイレでは俺が世話することができないので、サリーが立ち会い、済ませてもらう。
なんかデジャブみたいだが、この後はスーパーで食材の追加に行く必要がある。
この人数で散財していると、かなり早い時期に資金を食べ尽くしそうなので、これからはなるべく自炊中心だな。
今回はストレージがあるので、重い物でも、嵩張るものでも、冷凍食品もどんと来いである。
そして、再びスーパーで散財することとなった。
あ、そういや寝具もいるな。
今日こそは思い出せてよかった。
このまま帰ってしまったら大変なことになってしまうところだった。
スーパーを出た足で、夜までやっている大手インテリアショップへ向かい、ベッドやマット、寝具一式を3セット分買うことにした。
本来なら両手に大量の荷物で、とても買い物を続けることはできなかったはずだ。
これもストレージ様のおかげだな。
それと、皆で寝る部屋で、サリーと俺が1つのベッドというわけにはいかないので、サリーのベッドも買った。
部屋を埋め尽くすベッドは、日中はストレージにしまい、寝るときにだけ出せば、きっと何とかなる。
まるで、毎日押し入れにしまう布団のようだな。
駐車場で買ったベッドの箱をストレージにしまうが、帰ってからこれを3個も組み立てていると、俺はいったい何時になったら寝れるのだろうか?
ちょっと暗くなる慎二であった。
いよいよ、4人での生活が始まりました。
フレーフレー! 慎二!
あ、ちなみに私はお告げの人じゃありませんよ!




