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9-02-05 防戦


『緊急!

 カノ島に向けた弾道ミサイルの発射が確認されました。

 カムチャカ国からカノ島を着地点として設定されています。

 このままの軌道の場合、到着予想時間は900秒後にカノ島に落下すると推定されます』


 アーがポップアップして緊急メッセージを告げている。

 先日から監視して来た北方の国、今回カムチャカ国からついに攻撃が命令されたようだ。

 そして、その通常でない弾頭の影響を避けたかなり離れた海域には、同国の海軍の艦艇が数十隻待機している。


 最初通常弾でないかもしれないとも推測されたが、目的がカノ島の占領を考えているので、着弾時に爆撃被害は出るが、放射能等の汚染は考えていないようだ。

 そして、その弾道ミサイルの着弾をきっかけとして、戦艦による上陸作戦を実行する命令が出されている。


 自分たちが攻撃されるのであるが、その内容が既に完全に把握していると、焦りなどが全く無く、かなり上から目線での対応となってしまう。

 しかし、人が乗っていない弾道ミサイルの速度はかなり速い。


「アー、カノ島のシールドに弾頭が接触した場合、どれくらいの影響が有るか?」


『弾道弾の場合、放物線の自由落下で到着するために、シールド接触時はかなり海水面に近い高度で接触するものと予想されます。

 シールド内のカノ島に直接被害はありませんが、爆風により海面・海中に衝撃が発生します。

 また、弾頭内容によりますが、周辺の海洋汚染が危惧されます』


「では、そのまま無視していても大丈夫なのか?」


『攻撃を一度でも開始した場合、それが失敗すると更なる大きな効果を発生させる弾頭での2次、3次攻撃の可能性が考えられます。

 これ以上の攻撃をさせない為には、相手の攻撃力では当国に対し全く効果がないことを示すことが必要です。

 もしくは、当方の攻撃力が先方に対して圧倒的に優れていることを示し、相手に脅威を抱かす必要が有ります』


「うーん、でもこちらからの攻撃は俺達のポリシーに反するしなぁ...

 しかたがない、摩導リフレクターを使うか。

 アー、準備にどれくらいかかるか?」


『すでにストレージ内に準備されていますので、弾道弾の最高高度に配置頂ければすぐに使用できます』


「弾道弾は、あとどれくらいで、最高高度に到達するのか?」


『あと6分後に弾道弾は最高高度に到達します。

 それ以降の弾頭軌道は、放物曲線による自由落下を開始します。

 最高高度に達する前に推進用のロケットブースターは切り離されますので、それ以降の弾頭の誘導は不可能となります』


 摩導リフレクターは、リフレクターに対して物体の運動の移動方向を反転させる摩導具だ。

 慣性の極性を入れ替え、物体に損傷が発生せずに、移動方向を反転させることが出来る。


 現在これは摩導シートとして作成してあり、俺のストレージに収納してある。

 4個の摩導ボールカメラで摩導シートを吸着して、弾道弾の軌道上に展開する事で、最高高度に到達した弾道弾を元来た軌道に戻そうとしている。

 ボールを斜め上に投げた際に、最高到達点の正面に壁があった場合、壁に当ったボールは投げた位置に戻ってくるのと同じような感じだ。


「摩導シートに接触した際に爆発を起こした場合、地上に大きな影響は出ないか」


『反転場所は太平洋上ですので、被害想定は考慮の必要はありません』


「反転した弾道で死者等は出ないか?」


『先方はこちらに対して、それを期待して発射してきています。

 この攻撃は当方では感知できずに、さらに防御は不可能と考えて使用されています。


 先方基地周辺は火山帯に近く、周辺に民間の施設はほぼなきものと思われますので、反転落下した場合、推定される被害としてはその多くは発射施設への被害と考えられます。

 特に慎二が悩む必要はないかと思います』


「こうして悩んでいる時間は無いのか...

 判った。

 アー、では弾道弾軌道の最高到達点座標に反転フィールドを展開してくれ。

 間違っても、他の地点に落下して被害が出ないように、慎重に設置してくれ」


『了解しました』


「それと、世界に向けて緊急のメッセージを配信したい。

 薫ちゃんはすぐに準備できるかな?」


「はい、慎二さんですね?

 スレイト通信聞こえていますよ!

 すでにそちらに向かっている途中ですので、すぐに着きます」


 西野薫ちゃんには、先日スレイト通信を解禁してある。

 彼女は、カノ国のスポークスマンとしての仕事も担ってもらっているので、スレイト通信が使える事が望ましい。

 カノ島にいる他のスレイトメンバーたちも、スレイト通信で俺の対応している状況は共有されているので、自発的にこちらに向かっているようだ。


 薫ちゃんは、カート内で軽くメイクをしてきたようで、到着するとすぐに配信を開始する事となった。


「では最初は私から中継を始めますので、アーさんよろしくお願いしますね」


『了解しました。

 摩導カメラでの中継準備は何時でもスタンバイOKです。

 では、5,4,3,2』


「はい、こちらはカオルチャンネルです。

 これから、カノ国から緊急のメッセージを世界各国に配信します。


 では、カノ国代表からのメッセージをお伝えします」


「皆さん、こんにちは。

 私は、カノ国代表の加納と申します。

 先ほど、わが国カノ島に対しての攻撃が行われた事実が判明しました。

 この攻撃は、カムチャカ国にあるミサイル発射基地からカノ島に向けて弾道弾が発射されています。

 現在弾道弾は楕円軌道を描き、わが国を目指した飛行を行っています。


 私どもは、この行動につきまして、断固抗議を行います。

 我々は、この行為につきまして、このカオルチャンネルを通じまして、その状況のすべてを公開していきたいと考えております。

 なお、この配信の情報が正しいことは、各国の軍事監視網で確認いただけるものと考えております。

 また、攻撃がやまない場合、攻撃を行っている先方について、私共が得ました情報をも同時に配信させていただきます。


 繰り返しますが、攻撃がこのまま実行された場合、大きな問題となります。

 我々は戦争を望んではおりませんので、即時に攻撃の中止を申し入れます」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



「司令、諜報部から(カノ)国が世界に向けてのメッセージを発しているとの報告が入っています!

 どうやら先ほど我々が発射したミサイルへの抗議メッセージと思われます」


「そんな馬鹿な! 反応が異常に早すぎるぞ!」


「先方は確実に我々の動きをトレースしていますので、先制攻撃としては失敗ですね。

 どこから我が国のこのミサイル基地の発射情報が敵国に洩れているのでしょうか?」


 ここは大きな連邦国家の中に属する、カムチャカ国の軍事施設。

 カノ島向けの弾道弾を発射した基地だ。

 この小国は連邦国の東の外れの辺境地区にあり、この国土には多くの火山が含まれており、人が住める温暖な平野はほとんどない。

 そのために、産業も農業にも乏しく、貧しい国家であり、常に温暖な土地への侵攻を夢見てもいた。


 弾道弾はこの基地近くにある地下格納庫から発射され、地下の発射場と言う、地上や衛星からの偵察では発見しにくい場所に隠されていた。

 その為に、これほど早くにこの基地から発射したミサイルが検知されるとは考えていなかったようだ。


「司令、カノ国ののメッセージには、明らかにこの基地から発射した事の情報が含まれています。

 実際のミサイルの軌道が正確にトレースされており、発射地点以外に、着弾予想地点まで明示されています。

 これですと、我々が彼らを狙った軍事行動を起こした事が明確に示されています。

 諸外国からの非難を避けるために、こちらから自爆コードを送りますか?」


「馬鹿者!

 敵に見つけられたからと言って、なにをうろたえる。

 勝てば官軍、文句を言う相手がすべて消え去れば、非難なんてやがて消えゆくものだ!」


「はっ!

 大変申し訳ございません」


『司令部。 こちらミサイル管制センター。

 最高度に向けて最終ブースターの切り離しを行いました。

 自己の推進力は失なわれましたので、これ以降は慣性による飛行に入ります。

 まもなく、最高高度到達となり、それ以降は自由落下による加速が開始されます。


 あっ...

 ミ、ミサイルの軌道が変化しました。

 観測機器の故障と思われます。 しばしお待ちください。

 えっ、 あぁぁ、 どうした! 何が起きている。


 あっ、もし訳ございません、機材トラブルかもしれませんが、軌道が反転し、上昇時の軌跡の中に入っています。

 再度確認を行います。

 以上! こちら管制センター』


「おい、何が起きている!」


「はい、司令。

 ミサイル管制センターでトラブルのようです。

 でも、既にミサイルロケット部は切り離され、弾道の慣性飛行に入った後ですので、いずれにしましても姿勢制御は出来ません。

 あとは、そのまま先方のポイントに向けて落下するものと思われます」


「そうか、では成功したと思って良いのだな...」



『こちら、諜報部! 司令部、カノ国からの配信を受信されていますか?』


「いや、こちらは作戦遂行中であり、そのような配信を見る余裕はない!」


『先方の配信では、こちらの発射した弾道弾を先ほど跳ね返したと発表していますが、確認を願います!』


「何だと! どういうことだ? 弾道弾を反射しただと!」


「司令、わが国のミサイルは多段式ロケットの先に弾道弾を搭載したものです。

 その先端である弾道弾を打ち返す事など考えられません。 なぜならば最高高度は一千キロメートルを超えています。

 それを打ち返すなど、ありえない、うん、ありえない、絶対に有り得ない」


『こちら管制センター。

 先ほどの計器の報告は間違いないようです。

 確かにこちらに向かって弾道が落下してきているようです。

 それと、先ほどから通信障害が発生し始めており、弾道弾の制御部との通信が遮断されています。

 現在地上からのレーダー波でのみの観測に切り替えました』


「何が起きているのだ? その影響は?」


『こちら管制センター。

 何が起きているか判りません。

 今言えることは、落下中の弾道弾の自己破壊が不可能と言う事です!

 言える事は、あと3分でここを中心とした半径1キロメートル以内に確実に落下します』


「なに! わかった。

 本時刻を持って、本作戦の終了を命じる。

 基地およびその周辺の人間は直ちにシェルターに非難せよ。

 出撃中の艦隊は帰投せよ! 以上だ!」


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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