9-02-03 共同食堂
誤字報告頂きまして有り難う御座います。
早速反映させていただきました。
まだ人口が少ないこの島では、食事については共同食堂でのみ供給している。
もしくは、売店で購入した食材を食べることは出来る。
そうは言っても、場所によっては食堂まで移動するにはそれなりに時間がかかるので、開拓現場から食事時間に戻れない人に対して、この食堂からの配達を摩導カートデリバリが行っている。
この島で生活するための、食材の生産がまだ始まっていないために、常に国外からの食料調達が必要である。
なるべく早い時期に、島内における自給自足が必要であるが、人口が少ないうちは摩導コンテナによる日本からの調達を利用させてもらうつもりだ。
それと、最近パラセルから購入した食材についても、いろいろ試している。
当然この世界にない食材も多く含まれるために、場合によってはとんでもない食材に出会える、出会ってしまう可能性を含んでいる。
まあ、中にはとんでもなく不味い物もあるのであるが...
食材として肉を見た場合、多くの種類が揃っているが、当然この世界にはいない動物の肉も多い。
この世界にない食材を自分達で調理するのはとても大変なのだ。
どのような動物なのかすらわからない肉。 知らない方が幸せの場合もある。
購入している物は、パラセルの食材カテゴリで売っているものなので、食べても多分死にはしないとは思うのだが...
なので、常にエリクサーを手元に準備しながら試食を試すことになっている。
食べられる植物であったとしても、特に注意が必要だ。
見た目がこの世界と似た野菜であっても、この世界の改良され続けた植物を食べ慣れてしまっていると、原生種に近い野菜は灰汁やえぐみが強く、香りも強い。
それらを、美味しく食べられるように調理することは難しい。
マリアやサリーの世界では、食料としては肉と穀類が主体で、果物は食べるが、野菜は茹でた添え物や肉の香りづけに使い、生では食べないとのことであった。
もっとも、この日本ですら生野菜を生食するようになったのは、まだほんの百年ほどの歴史しかない。
摩導具が利用できるイザベラの世界では、小さな労力で農作業ができるため、農業も盛んであったようであり、野菜を使った料理もふんだんに食卓に上ったようだ。
それでも、火を通さない生野菜というものは、ほとんど食べなかったようで、野菜好きの俺としては、なるべく早く野菜の島内栽培を実現したい。
しかし、その彼女たちもこの世界にきてから食生活が変化し、普通に生野菜も食べるようになった。
僕らの風呂場に体重計が置かれたのは秘密だけれど。
サリーはオレンジキャップの生ドレッシングが特にお気に入りで、今では好物の1つになっている。
この食堂ではストレージの収納された新鮮な日本の野菜が用いられているが、知らない異次元産のキノコや野菜が時折こっそり紛れており、食堂を賑わせている。
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皆は島の各所で様々な作業を行っているため、みんなが一堂に揃って食べられるわけではないが、食堂はここ1か所しかないので、自然とここが顔を合わせる場所となる。
この食堂の支払いは、腕のリングやバンドルにより、国内電子通貨であるパラスにより支払われる。
島の建設中は、共同食堂での食事は無料配給も考えたが、パラスの使用になれることや、島内での流通事業を開始させるためにパラスで支払う事とした。
通貨単位であるが、パラセルで使用する通貨の名称のパラスを用いているが、この2つは全くの別物で、カノ国パラスは本国内と拠点のみで用いられる。
また人気の食堂の売店コーナーには、衣服や生活物資のほか、日本のスナック菓子やお酒などもたくさん並んでおり、最近は別棟に移動してミニスーパーの様相を呈している。
最初は日本で物資を購入し、ストレージに保存して持ってきていたが、摩導コンテナの定期便が出来てからは物量が増えたので別棟を建てたのである。
別棟ができてからは、無人店舗となったので、食堂スタッフはかなり楽になったようだ。
食堂は、夜間は酒を飲みにやってくる連中もいるので、それなりに遅くまでは営業しているので人気が有る。 と言うより、酒を飲める店というのも今のところ、ここしかないが...
キッチンカーであちこちのイベント会場などに出かけて料理を販売していた、松井姉妹の姉である松井実果に、島で唯一の食堂の運営を任されていた。
彼女の料理はかなりファンが多く、どれも美味しいものであった。
島内の人数が増え、やがて食堂にも料理人が増えてくることになるが、味や料理の指導、新しい料理の開発など、指導としての仕事になりつつあった。
しかし、やはり彼女は自分で接客しながら料理を振舞いたく、妹の松井枝奈により摩導カートを改造した摩導キッチンカートを作ってもらったもらった。
そして、自分の休日の時に、島のあちこちに出かけて、キッチンカーで店開きをしたりしている。
もし島中央の服部姉妹の黄金像の前で、キッチンカートを見かけたら、ぜひ食べてみてほしい。
この黄金像の前にキッチンカートが出た時は、それは特に気に入った新しい料理ができた時に行われる秘密のイベントだからだ。
今、島では食材としてパラセルから仕入れた、この世界にない植物の栽培実験が行われている。
そのために、王宮エリアに専用の実験農場が作られた。
安全性や調理法が確立しないと販売はできないが、食べた際の安全性ついては、研究エリアに研究設備で評価と、漢方薬の薬品工場に試験をお願いしている。
それらの王宮エリアにある実験農場での植物の開発は松居妹 枝奈の担当である。
一般農場と異なり、王宮エリアの農園に立ち入れる人は限定されている。
松井姉妹は当然入れるが、栽培は王宮の植物栽培担当であるラッセルさんがやってくれているので、松井姉妹は採取された野菜や果物の試食や調理方法の研究である。
安全が確認された果物系の中から、いくつかの新しい味の発見があり、今フルーツとして食べる事やそれらを調味料やフレーバーとしての試作を行っている。
強い香りのものがあり、その植物単独だと、ひどく、ひどく臭いの物であった。
思いっきり希釈したり、他の物質や香りに組み合わせると、初めて良い香りに変化する事がわかった。
これら、カノ島で作られた新しい野菜やこれらから作られた料理、香辛料や香料は、カノ島の新しい特産品として輸出されることになる。
カノ島が出現時には、島内ほぼすべてが砂地であった。
それは今も変わっていない。
その為に植物を育てる為には、そのままの土壌だとうまく育てることは出来ない。
現在のカノ島には、一般農場として島内で消費される植物を育てる植物プラントと、栽培の試験的に栽培する研究農園、それとは別に王宮エリアに植物実験農園を建設した。
砂地であるカノ島で、多くの植物は育てる為に、特別な方法を採用している。
植物プラントでは主に島内で消費される生野菜と根菜を中心に、摩導コンテナを用いた巨大なプランターを砂地に並べ、その上を摩導シートで覆い、密閉された空間で育てられる。
植物工場で、植物栽培用の土をプランターに敷き、種や苗が植えられる。
そののち、プランター天井を摩導シートで蓋され密閉された摩導コンテナは、植物プラントエリアに向けて専用道路を走っていく。
コンテナが目的の栽培地に到着すると、コンテナは自分で畑として順に並んでいく。
工場でプランターに入れられる土壌には、あらかじめ生育に必要な上質な肥料が加えられている。
密閉されたコンテナ内の空間の温度、照度、湿度、酸性・アルカリ性、水分、空気成分など植物の生育に最適な条件が摩導シートで管理されて植物は成長する。
収穫の為に工場に戻るまでの期間は、プランターを覆う摩導シートがはずされることはなく、植物は有害菌に汚染されていない無農薬野菜として育つ。
土は無菌ではなく、生育を助ける菌など、食べて安全で、植物に有用なものは肥料とともに積極的に取り入れられている。
1つのプランターの土壌は工場で均一に撹拌されており、均一な生育環境で育つため、収穫時期もほぼ同じで育つ。
プランターの土壌の水分や養分は、接続した摩導べインから適宜補充されている。
密閉状態で生育することで、病害虫や雑草の種などが混入することが無いので、農薬散布や除草などという概念は必要ない。
収穫時期となったプランターは、再度コンテナとして自走し、植物工場まで進み、そこで自動的に刈り取りされる。
完全無農薬による無人プランター栽培を行う事に成る。
食堂では、この野菜の特徴を生かした、いろいろなメニューが作られており、島民をはじめ、多くの観光客の舌をうならせることになる。
また、本国での栽培植物は、日本で無病害虫の認定を取っているので、日本に戻る際の植物検疫の必要が無く、果実や野菜は空港でのお土産品として人気が出始めている。
この植物プラントで作られた野菜の一部は、パラセルへの試験販売が開始された。
生のままで食べられる無農薬清浄野菜という謳い文句で売られ、ドレッシングとともに人気が出てきている。
島の中心部付近にある研究農園では、少しずつ条件を変えて植物を栽培しており、そのデータをもとに大型植物プランターの生育条件が決められている。
この研究農園では環境として低温から高温まで農地を構成していて、その一部は観光用に公開している。
ここの蓋がないプランターでは、さまざまの季節の植物を一同に見られるため、そこは摩導カートの観光ツアーのコースに組み込まれている。




