9-01-05 カノ国と税金
カノ国には税金と呼ばれる仕組みが無い。
いや、正確に言うと、税金として明確に特別に徴収している金銭はないのだ。
この国においては、パラスが唯一無二の通貨である。
パラスは摩導バングルや摩導リングのIDで管理された電子通貨であり、現金というものはこの国では発行していない。
そして国が発行しているすべてのパラスは、1パラスに至るまでサーバー内で常に管理されている。
カノ国では、個人がもつパラスの保有量をアカウント口座で管理するのではない。
カノ国で発行された最低単位であるパラスそのものが、現在の持ち主が誰であるか、所有者の個人IDを保持している。
少し言い換えると、加納慎二の口座に10パラスがある というような数量を基本とした管理ではなく、サーバー内でデータとして管理される10個のパラスデータ、1個づつに「このパラスは加納慎二の物」とそのパラスの持ち主のIDが書かれており、管理された全パラスデータの中に、その個人IDのパラスが合計10個あれば、その所有者の現在の残額は10パラスとなる。
パラスでの支払いという物は、自分の持つパラスのIDを支払う先のIDに書き換える事で行われる。
というように、個人のパラス口座という物は実際には無く、一つの大きなパラスデータベースでカノ国に存在するすべてのパラスが管理されている。
カノ国では現金取引をなくし、国のサーバー上でのみ管理されている電子通貨を用いるため、通貨発行という大きな経費を削減し、このような仕組みを簡単に実施することができる。
また、カノ国国内において、パラス以外の通貨を使用して商取引を行うと重罪となる。
そして外国通貨を単に持ち込むだけでも違法となる。
これは日本における、拳銃などの扱いと同じで、単に所持しているだけでも重罪と言うやつだ。
軽微な物でも許してしまうと、偽造通貨と同じで、国の通貨に対して信用不安を引き起こすことに繋がり、厳罰する事にした。
従って、カノ国へ入国する前、それは日本を出国するまでに、自分が持っていくすべての現金をパラスに両替しておく必要がある。
カノ国以外で発行されたキャッシュカードやクレジットカード、電子マネーの類、これらは所持していても罪とならないが、カノ国のいずれの店舗でも使うことが出来ない。
ただし、すべての日本円が無くなると、カノ国から日本に帰ってきた際に困る事に成るので、出発の空港にカノ国の施設が有り、白いリングに紐づけて日本円を帰国まで預かってくれるサービスが有る。
カノ国内では電子通貨であるパラスで支払う際には、支払い側には手数料はかからない。
しかし、パラスを受け取る際、自分のアカウントにパラスが入金される時に、5%のパラスチャージ手数料というものが必要となる。
これはクレジットカードや電子マネーでの支払いと同じで、店舗などの受け取る側では売り上げに対してカード手数料が発生しているのだ。
一般の人においては、給料を受取る時が入金となり、店舗であれば、売り上げ金を受けとる時が入金になる。
また、カノ国へ入国する際に、アカウントに入金する時も、同様にパラスチャージ手数料が必要となる。
パラスのアカウントに入金する際に手数料が発生しているのだ。
カノ国で仕事をすると、作業が終わるごとに、国から給料がパラスとして支給される。
そして、毎回入金される金額の中から、パラスチャージ手数料の5%が差し引かれる。
これが、この国で唯一必要な手数料であり、申告して払う税金は特にない。
手数料と呼んでいるが、国が徴収する手数料なので、実はこれは税金と同じ行為である。
カノ国は、クレジットカード会社のように、カノ国が通貨管理と言う実際の仕事に対する報酬が国の利益となっている。
カノ国では、金銭を受け取る側が支払う所得税となっており、お金を支払う側が徴収される消費税ではない。
日本でも、給料を受取るときに所得税は天引きされており、商売であれば1年分まとめて確定申告や決算申告を行い、後ほど所得税や法人税として支払っている。
お金をもらう、お金が増える時においては、その経費として多少お金が必要でも、さほど目くじらを立てる事はない。
手数料が100円必要なATMで1万円引き出す時、ATMから9900円が渡されると目減りして損した感じがするが、10000円支払われた際に、別途手数料として100円が見えないところで引き落とされた場合、さほど損した感じがしない。
自分が儲かる際には、見えない手数料は許容されやすいが、お金を支払う時というのは、保持していたお金から減る時なので、たとえそれが僅かな金額であったとしても慎重になる。
消費税のように本来買った商品では無い余分なお金を払わされると、とても損したと感じて精神的な負担となる。 これが消費税が嫌われる大きな原因でもある。
ましてや消費税10%は、すでにわずかな金額といえるものではない。
給料など入金される回数よりも、買い物など支払いは何回も発生することが多いので、消費時の課税は損した感じを何回も受ける事になる。
なぜ消費税が嫌われるかというと、このような心理的要因も高いと思われ、国民の賛同が得られにくい徴税方法である。
さらに言うと、小さい消費税の税率は気にするが、大きな地方税や所得税の税率をきちんと把握している人がどれ位いる事か。
とにかく日本では、お金を稼いでも、使っても税金が必要なのだ。 お金を動かすと常に税が取られているのだ。
日本の場合、税金はまだまっとうな運営をされているが、その徴収方法や運営がひどい社会保険料が有るのだが、それについてはここでは触れない。
カノ国は、国の経費を極力減らし、それぞれはわずかな収益であるが、国自らが稼ぐことで、国が運営できるように頑張っている。
外国からの訪問客の入国申請や審査は、日本にある大使館であらかじめ行われ、その際に旅行者には一回限りの白いリングが発行される。
その白いリングはIDを示す入国ビザとなり、通貨パラスを保持する財布になっている。
繰り返しになるが、カノ国にパラス以外の通貨を持ち込むことは重罪行為となる。
あらかじめ持ち込むお金はすべてパラスアカウントに入金しておく必要があり、その際の為替交換にはパラスチャージ手数料が含まれる。
日本円を為替交換してパラスアカウントへの入金は、日本にあるカノ国大使館と出発空港でのみ行うことができる。
そして残った日本円は、自分の白いリングに紐づけて出発空港で預けることが出来る。
誤って島までカノ国以外の現金を持ち込んでしまった際には、入国をやめるか、空港の入国前に所有の現金の破棄を行う必要がある。
とにかく外国通貨の持ち込みは重罪であり、カノ国に入国してからの両替やクレジットカードや外国電子通貨での支払いはできない。
白いリングのように一時的なアカウントしか持たない一時入国者は、所持していたパラスアカウントは、カノ国から出国した時点で、IDごとアカウントも消滅してしまう。
しかし、カノ国民は永続的に使用できる金色の国民リングを持っているので、アカウントにパラスを持ったまま出国してもアカウントが消えることは無い。
その為に一時入国の訪問客は、帰国時にパラスが残っている場合、飛行機に乗り込むまでの時間、空港にある売店で、手土産を買って残ったパラスを消費することが一般的になっている。
売店は日本製品が、日本で買うより安く買えるので人気のようだ。
それと特別な方法として、出国時、残ったパラスで、円貨幣を購入することが可能となっている。
ちなみに、日本円へ通貨の両替場があるわけではなく、これは両替ではない。
金の記念コインが売られている売り場では、日本の貨幣が外国コインの土産として、、磨き上げられて専用のパッケージに入れられ、他の土産物と同様に売られている。
他の商品と同様にコインをパラスで購入するのだが、空港内でこの専用パッケージを開くと、外国現金となり、違法になるので注意が必要だ。
日本で日本円をパラスに交換入金して、カノ国で商品を買うと日本の半額くらいの値段で買うことができるので、とても安く感じる。
これは、カノ国で売られている日本製品が一括調達され、販売での利益や消費税が掛けられていないので安くなっている。
消費税以外に日本で高額な税が掛けられている物であればさらに安く感じる。
例えば、日本ではビールなどに消費税の他に酒税が掛けられているので、特に安く感じる事に成る。
島が訪問客に解放された当初は、円からパラスへの交換レートは1パラスが十円として開始された。
円をパラスに交換して、カノ国で買い物をすると、高級品などは半額程度で買える事に成る。
しかし、さきほどの、土産として磨かれた500円コインのパッケージを1個買うと、その値段は100パラスである。
これはパラスを日本円へ両替するのではなく、あくまで土産を買う事に成り、交換レートで考えるとあまり良くないということだ。
ところで、カノ国の空港売店では日本政府が発行する日本国の購入しか販売していない。
日本の紙幣は、日本銀行という1つの銀行組織が発行する通貨であり、これはカノ国売店では販売していない。
そう日本の貨幣と紙幣では、発行者が違うのだ。
紙幣や貨幣の表面には、それが持つ価値と発行者名が記載されている。
1万円札などの紙幣は、日本の政府から独立した中央銀行である日本銀行が発行する日本銀行券である。
この軽い紙を銀行に持って来れば、日本政府が発行する貴重で重い貨幣に替えてあげるよという銀行の証文状、兌換符である。
そのようなわけで、カノ国は日本国が発行する貨幣のみを取り扱っている。
帰国時にこの売店で外国コインを買っても、空港内であればコインのパッケージを開けない限り何も問題はないが、このパッケージであっても再入国する時に持ち込むと没収の上罰金となる。 さらに、パッケージから取り出してコインを所持したままカノ国を移動すると、逮捕されてしまうので、特に注意が必要である。
また出国に、空港でこの日本のコインを大量に買うと、機内預かりの無料で預けられる重量範囲を超えてしまい、とても高額な超過手荷物料金が必要となるため注意が必要だ。
パラスに交換すると通貨を戻す時に損をすると言って、ギリギリのパラスしか持ち込まないかというと、ほとんどの人はそんなことはない。
何しろ、商品がとにかく安く買えるため、どちらかというと最初からその買い物が目的の人も多く、多くのお金をパラスに両替して持ち込み、帰りには両手いっぱいにお土産や商品を買って幸せそうに帰ってゆく。
当初、自衛隊の輸送機しか飛んでいなかった頃は、小さな空港売店であった。
自衛隊の人の口コミで人気が出て、最近は民間機も飛行するようになり、空港売店はお隣の大きな倉庫に広がった。
そこの倉庫の棚には、商品が箱のまま並んだ倉庫型卸売ショッピング店舗の様になっている。
島内の売店と同じく、ここもレジが無い店舗であり、白いリングに残ったパラスの範囲内で棚から商品を取り出せる。
倉庫に置かれたショッピングカートには、パラス残額と、カートに積み込んだ商品の合計額が表示されている。
そして、そこが空港なのか、大型ショッピングセンターなのかは、すでにわからない様相になっている。
日本から摩導コンテナで一生懸命運んでききて、今度は訪問客がそれをそのまま持って帰るって... なんか矛盾も感じるが、それはそれ。
売店で販売する商品に利益は載せてはいないが、パラス交換に5%かかっているので、販売経費は非常に低く、それで国の利益としては充分稼げている。
しかし、こんなところにも転売屋は暗躍しており、高額製品を買いつけにくる。
転売屋には、特にカノ国産の金製品がねらい目らしく、日本に持ち帰り売却すれば、高額な飛行機代ですら完全に元が取れてしまうのだ。
空港にあるショッピングセンターの中には、金製品が置かれているコーナーがある。
転売屋たちは、金商品の売店への入荷日程をどこからか聞きつけてやってくる。
そして、棚に入荷されると同時に、我先状態での完売が繰り返されている。
その為、この棚は常に在庫切れの看板が出されており、金製品が一般のお客さんの目にはほとんど触れないため、この情報はあまり知られていない。
しかし、ショップに商品が並ぶ前に日本でパラスをチャージしておかないと、棚から取り出すことが出来ない。
そして、他のバイヤーに買われてしまうので、一回限りのアカウントであるが、買える事を前提としてパラスをたっぷりとチャージしてくる。
ところが金製品が買えずに、パラスが使い切れないとどうするのかなと思っていたら、高いお酒やタバコなど日本で再販がしやすい商品を仕入れて帰るようだ。
金ほど利益は出ないので、少しでも飛行機代の足しにしているらしい。 金が買えれば大当たりの博打みたいなものだな。 ゴールドラッシュか?
そういえば、昭和の時代には、海外の空港で免税の酒とたばこをほぼ皆さん全員が買っていたらしい。
とにかく、カノ島空港でのショッピングは大人気の様である。




