1-05-06 一夜
サリーはようやく探し物を見つけることができました。
探すのを忘れたときに、見つかることもあるようですね。
正直言って俺は今困っている
いろいろな事が頭に浮かんでくるが、一人シャワーを浴びながら考えているのだ。
とりあえず、サリーが次元を超えてまで探しに来た探し物は、先ほど見つかり、それはすでに送った。
それが彼女の目的の物であるかは、今しばらくはわからない。
しかし、いまの問題はそこではない。
サリーの世界では、彼女はすでに成人年齢を超えているらしいが、ここ日本ではまだ未成年の娘さんだ。
この場合の年齢って、この地球での換算でいいのかな?
それともサリーの国の年齢が正しいのかな?
1年の基準が地球と違う場合、日本の年齢自体が意味を持たないしなぁ……
あ、日本でも女性は16歳で結婚はできるか……
そもそも、この地球であっても、それすら国によって違うか。
そんな娘をひとつ屋根の下、今も元気な男の子と同居して、今後も彼を抑えられるだろうか?
かと言って、俺の近くにいないと翻訳機能が働かないので、生活するにしても言葉の問題があるし、そもそも戸籍が無いってどうしよう!
あぁそうだ!
気が付いたけど、解決方法ではない! そう、戸籍がないと結婚すらできないよね。
彼女は、ここで働くつもりのようだが、そうすればすぐに目立っちゃうよな?
そして、公安の人に見つかったら、違法入国者として捕まっちゃうのかな?
どうすれば、彼女を無事に匿ってあげられるのか、これは問題だ。
シャワーを浴びながら、そんなぐちゃぐちゃした頭で次から次へと考えこんでいると、背中でカチャッと音がして、扉から少し冷たい風が浴室に流れ込んできた。
「何かあったのか?」
と、声をかけたが、無言のままシャワーを浴びている背中に誰かが軽くしがみついてきた。
濡れちゃうよと言って振り返ると、さっき着替えたはずの彼女が、なぜか裸で俺の背中にくっついている。
背中にあたる2つの突起を感じ、「おお神よ」と、男の子は天を仰いだ。
肩越しに見える、シャワーに濡れるガーゼが痛々しい。
今朝一度取り替えたが、濡れてしまったので、またガーゼは替えたほうが良さそうだなぁ……
あぁ、俺の頭は今完全に現実から逃避してる!
焦る俺を離さないようにしがみつきながら、背中で彼女はぼそぼそと何か話しだした
こんな場合、何をすれば良いのか、何を答えたら良いのか?
更に思考が停止した状態で話している。
そういえば昨夜からシャワーを浴びてなかったから、傷口を濡らさないように彼女にシャワーを持ちお湯を掛けてあげる。
「体や髪の毛も洗うかい?」
「はい」
そう答えられたが、彼女が動く気配はない
彼女のつぶやきも聞き取りにくいので、仕方なく、そう、しかたなく俺は彼女の方を振り向く。
「私が奴隷になってまでこの世界に来たわけは、実は1つだけではありません。
一つは至急薬草を見つけること。これはすでに叶えていただきました。
そして、これからも父へ薬草が届くように探します。
ここからは、慎二には拒まれるかもしれません。
パラセルから贈られたスレイトは、マスターと繋がりがある子孫、もしくはその血を受け継いだ者にのみにマスターの権利を残せる可能性があります。
私は次元を超えてしまいましたので、父のスレイトは私の兄弟が繋いでいくものと思います。
私の願いは、私と慎二との繋がりに、慎二のスレイトを託してもらいたいと考えています。
私はまだ男の方を知りませんが、私は慎二であれば、慎二さんと一緒に生きていきたいと思っています」
「それって、俺との子孫を残すってことかい?」
「この世界と、私の世界とは異なる世界です。
その為、生物としては互いに子作りが叶わぬ種族であるかもしれません。
しかし私としては、私の血を、この世界に私という者が生きていたことの証を残したいと思います。
商人のように打算的な考えである事もわかっています。
でも、私の直感は、慎二さんが私の求める人であると告げています。
わたしは、この世界で生きていくのであれば、慎二さんと一緒がいいと思っています」
告白されて、ちょっといけない雰囲気になりそうだったので、俺はシャワーを止め、バスルームから出た。
そして、棚から新しいバスタオルを取るとサリーの頭にかけてあげる。
俺は自分のバスタオルで頭や体を拭きながらサリーを見ると、サリーはまだバスルームにいてバスタオルを頭に掛けたまま、俺の顔を裸でじっと見続けていた。
それじゃ風邪をひくよ、彼女の頭に掛けたバスタオルを取って、体を拭いてあげる。
肩は強く拭かないように、手を上げさせて拭いていると、彼女の手が下がってきた。
やばいと思った時、サリーを見上げた男の子と触れてしまった。
「キャッ」
と一言いうと、彼女は手を引っ込めてしまった。
男性を誘惑とか、商人はこういう事に馴れているかなと思ったが、本当に必死だったようで、まだ下を向いて震えている。
「拭いたよ」
すると、彼女は何も答えずに、顔を上げて見つめてくる。
そして、俺を見つめていた瞳がそっと閉じられた。
『やばいょ!』、『やばいょ!』、『流されるな!』
さっきから頭の上を舞い叫ぶ何かに俺も目をつぶり、魔の力にでも操られたかのように口吻へと。
そして若い二人はそのまま流されていく。
何ら準備もせずに事におよび、『しまった』と思った時は既に手遅れで、今ベッドの俺の横で彼女はスヤスヤと寝てる。
電気もつけっぱなしで寝てしまった?ようで、彼女にかけたブランケットが艶めかしいシルエットを浮かびあがらせている。
俺も火照った体が冷風によりちょっと寒くなってきたので、冷房を止めて電気を消して再び寝ようと思ったが、裸の女の子が隣で寝ていると思うと、また緊張してきた。
俺の肩に、可愛い重しが乗っかってしまった。
まあ、一人くらい何とかなるさ。
一つ屋根の下、若い二人の幸せな時間となりましたとさ。
めでたし、めでたし。




