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7-06-03 防衛計画


 今回の服部由布子の拉致事件について、俺達は大きな衝撃を受けた。


 守りについては、カノ島や拠点の周囲に巡らせた強力な摩導シールド。

 これでどのような侵攻についても安全だと考えていた。


 また住民が摩導バングルを付けていれば、それだけで安全だと思い込んでいた。


 しかし、結果的にそれらだけでは守ることが出来なかったわけだ。

 幸い結果としては無事に救出が出来たけれど、そうはならないための対策が必要だ。



 我々のような小さな国の場合、国民の数が少ないため、全員が仲間であり、一人々が国としての役割の一部を占める重要性が高い。


 今回のように、誘拐されて人質に取られた場合、たとえそれがたった一人であっても、国として様々な影響が考えられる。

 場合によっては、それによって、この強固な摩導シールドすら解除させられることが余儀なくされる事もあるだろう。


 どれだけ防御が物理的に強固なものであっても、それを運用する我々の弱みをつかれた場合、それはいきなり脆弱な物となってしまう。

 特に1つの防御に依存していた場合の影響は甚大だ。


 実際に、今回小さな島の存在を発表しただけでこの騒ぎが起きてしまった。

 この島自体に有望な資源があるわけではないが、限られた地球上での領土として見た場合、それを欲しがる国もあると言う事だ。

 我々は、それに対しての心構えが少し足りなかったようだ。


 さらに、これからは摩導具を世の中に出し、代替エネルギーを提供し、万能薬のエリクサーを供給し、パラセルとの貿易を控えている。

 これら有望な資源が1つでも出てくると、さらなる侵略や攻撃を受ける可能性が高い。

 従って、今のうちに俺たちは、一度皆で話し合うことにした。



 そして、今回の件をもって2つの考えが必要であることが判った。


 1つは島や拠点の防衛計画である。


 今、摩導シールドにより守られているが、それだけに依存しない方が良いと言う事だ。

 もし強固な壁が存在する場合、そこの侵攻しようとする敵は何を考えるであろう。


 ・壁を壊す事。

 ・壁をなくすこと。

 ・壁が有っても侵入できる事。

 ・壁が有っても、内側を滅ぼすもしくは降参させる事。


 多分、相手は軍事の専門家であるので、俺たちが想定しなかったような攻撃で仕掛けてくるのではないだろうか?

 地上で繋がっている拠点であれば、周りを取り囲み、一切の供給を止める兵糧攻めなどを仕掛けてくるかもしれない。


 我々の施設は、どこかで海に接続していれば、水は確保できる。

 また、食料についてはストレージで大量に保有しているが、さらにスレイトメンバーにより、別の場所からストレージに補給できるので心配はしていない。

 マナクリスタルにフォースを利用しているため、電力など、外部からのエネルギーとなる燃料は必要ない。


 これらのカノ国の秘密が隠されていること自体が、俺達の最大のアドバンテージであるとも思っている。


 マナクリスタルについては、そのうちに世界に広まっていく事に成ると思うが、パラセルやスレイトによるものはそうなっても秘密で通すつもりである。

 国が大きくなってくる場合であっても、パラセルについてはすべてを開示することなく、秘密は維持した方が良いと考える。


 基本的に平和主義を掲げるカノ国ではあるが、攻め込む敵に対しては積極的に排除を行う方針を取る事とした。

 その為の、自衛兵器の開発が急務であるが、これまでの武器と異なり、まず既存の攻撃兵器を無効化する為の摩導具を開発する。

 さらに、進行国に対して制裁を行い、攻撃をやめさせる事が必要となるだろう。

 そうでないと、いくらカノ島で防御していても終戦とはならない。



 現在の世界でも似たようなことを考えている国はある。

 それは永世中立国を宣言しているスイスだ。

 アルプスの山並みで酪農などのイメージの、とても平和な国に思えてしまう。


 ヨーロッパでは国と国が陸地で繋がっているために、古き時代から侵攻・侵略が繰り返されてきた。

 戦争となると、いくつかの小国が連合を組み、列強となる国家に対して対峙すると言う事が行われてきた。


 永世中立宣言は、そのいかなる連合陣営とも永久に軍事的に手を組まない、他国とは非同盟国として中立の立場を周辺国家に対して宣言した事に成る。


 ここで勘違いしてはならない。

 どことも手を結ばないと言う考え方は、逆に何処の国も永世中立国を守ってくれない。


 そして、中立とは、軍隊や武装を持たない意味ではない。

 逆に、有事に際して、自分たちの国は自分で守る必要がある。

 それこそ、周囲国のすべてが敵となる事すら考えられるわけである。


 スイスでは、国としてその覚悟が出来ていると言う事だ。

 その為に、スイスには軍隊が有る。

 そしてそれを守る国民には兵役の義務が課せられている。


 そう、スイス国民には徴兵義務が有り、男子は徴兵され、退役後も小銃などを持ち、予備役軍人として30年近い軍人として勤める義務がある。

 これは、全人口の1割ほどが軍人として国を守っていることになる。


 小さな国であるスイスは、総人口でも日本の人口の数パーセントでしかない。

 その少ない人口であっても、自国を守るスイス軍隊の人数は、予備役を含むと日本の自衛隊の隊員の何倍も大きい。


 また、国づくりに際しても、国外からの攻め込みに対して、橋やトンネルなど国外との主要な通路は、有事の際には取り壊しが行えるように設計されている。

 さらに核シェルターなどは、最悪の事態を想定して、全国民の退避を考えて設けられている。


 本気で自国を守ると言う事は、それくらいの覚悟が必要となる。



 カノ国では、平和を望むが、それを逆手に取ってくる国はあると考えている。

 実際、それが今回起きてしまったわけである。


 であるので、カノ国国民は、義務として全員が防衛団へ加盟する事にした。

 ただ、これは軍隊と言うよりは、消防団の延長のような自警団である。


 基本的に、カノ国には警察や消防、救急と言った組織は無く、無人で対応できるものは摩導カートで無人対応し、人の手を借りたい場合はこの自警団が対応に当たる事に成る。

 なので、これはカノ国民全員が自警団に属しているという意識を持ってもらう事に成る。


 カノ国や拠点の防衛はこの国民全体の自警団組織により、自分たちで自分たちを守っていく事に成る。



 それと、もう一つ見つかった課題として、今回の事件のように個人が狙われた場合であっても、それを保護する仕組みが必要になってきた。

 特に、拠点など、カノ島を離れて働く場合、異次元人がいる国と言う、カノ国民への悪意を持った相手と接する事が発生するため、その対策が必要だ。


 今のところ、個人のセキュリティと言う意味では摩導バングルが一番有効である。

 しかし、今回のように突然麻酔や毒を盛られたり、混雑や雑踏のなかで危害を加えられた場合であっても、身を守る必要がある。


 そこで、まず物理的な処置としては皮膚表面の固化を考えた。


 しかし皮膚を直接固化すると生活に支障が出る事が実験で判ったので、あくまで皮膚表層の1ミリメートルほど外側に強化した摩導幕を設ける事にした。

 そしてその幕をフィルタとして機能させることで、薬品や毒など体に障害を引き起こす恐れがある物が体内に取り込まれる直前に、有害成分をフィルタでカットオフ出来るようにする。


 カノ国外に出る際には、自動的にそのフィルタ機能が働くように摩導バングルに機能を追加した。


 それと、緊急事態の際に、拠点やカノ島間、更には地球上の様々な点に対して高速に移動できる手段の準備が必要となった。

 これは先日より考えていたが、更に早急の対応が必要となってしまった。



 いずれにしても、慢心し対策を怠る事が一番怖い。

 当然、敵も新たなる対策を行ってくることは明白である。

 今回の由布子の誘拐を教訓として、これからは更なる対策を行うことを心に誓った。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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