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7-04-02 カノゼロ


 共同施設となる食堂や売店、そして個別住宅の設定が終わった。


 とりあえずカノ島での寝食は可能となったので、俺たちはこの島を開発するにあたり、最初に行わなければいけない事が有る。

 それは、島の計測であり、計画通りに島が再現されているかをチェックする必要がある。

 俺達はすでに島のどこに何を作るかなどの島割りを計画として作っており、それに従って島内に道路を敷設する予定だ。


 これには、道路の起点となる島のポイントに空間マーカを設置し、そこを結ぶように島内に道路を敷く。

 この上陸点が、島内すべての道路の起点となる、カノ0(カノゼロ)と呼ばれる基点ポイントになる。


 道路で、区分けされたブロックに対して島の各施設を作っていく。


 島は直径百キロメートルと、それなりの距離が有る為に、島の内部を移動する為の交通手段が必要となってくる。



 先日拠点で実験していた摩導カートは、カノ島内で使用する新たな乗用移動装置である。

 個人での移動用に利用できる、摩導シートにより作られた箱である。

 そして、俺たちはその摩導カートにより、いま島内を移動している。


 今後、島の中での移動は、この透明の小さな箱、摩導カートで移動することになる。

 と言うより、摩導カートこそが島内の唯一の移動手段である。


 現在は、まだ道路が出来ておらず、砂地の上を移動する事に成るが、風などにより砂が盛り上がっている場所などが多数あるので、今は少し高度を上げて移動している。

 全員の摩導カートは、先頭を走る俺のカートにくっついて、縦列で移動するように指示してあるので、カルガモ親子の行列のようだ。


 島は、計画した予定の状態で、すでに海水が引いており、上空からの摩導ボールカメラで見た限り、完全に丸い島となっていた。

 そして、その島を実際にカートで走ってみて、海中から持ち上げられた状態の、島の表面の状態を確認している。


 まずは到着した島の中央部から、西の海岸まで行き、そこから海岸線に沿って島を一周する予定だ。


 直径100キロメートルの島外周は約300キロメートルほどある。

 日本側である西の海岸までは50kmほどあるが、見渡す限り砂の大地で岩すらない。

 海水が引いたばかりの砂地は、草も生えておらず、さらに現在の島の気温は30度を超える気温となっているので、カートの外では今は蒸し暑さを感じる。

 まあ、カートに乗っている間は、室内は適温で、海の匂いも感じない。


 地上を観測しているので、カートは床も含めてすべて透明化した状態で移動している。

 すわって、空中を浮かんだ状態で高速に動いていると、ちょっと飛んでいるような感じに思える。


 しかし砂地ばかりで、途中で観察するものは特になく、カートは島の中央部から止まることはなく、15分ほどで走行すると海岸に達する。

 時速で言うと200キロぐらいで移動していたようだ。


 海岸線にまで着いたので、ここで一旦カートを降り、皆で海岸を素足で歩いてみた。


 さすがに絶海の孤島だけあってきれいな海水であるが、吹く風は湿気が強く、すこしねっとりとした熱い海風であった。


 これは、島の上昇中、海水温を高めて低気圧を発生させるていた。

 それまでの間、海底の摩導シートの表面温度を40度近く設定してあったが、島が海面から露出した時点で30度ほどに温度を下げたからだ。

 しかし周辺の海水や上空の空気を含め、まだ下がりきっていないためにまだ何日かは暑いと思う。

 しかし、周囲からの海水や空気が流れてきており、かなりの勢いで冷えているので、しばらくすれば過ごし易くなるのではないかと思う。


 何もない海岸で、波に向かって「海が好きー!」などと叫んでいても時間がもったいないだけなので、続いて島の外周を一周することにする。


 ここから左右2組に分かれて回る手もあるが、せっかくなので全員で同じ方向に一緒に廻ることにした。


 到着地点の空間座標を確認し、道路の通過ポイントが分かるように摩導マーカを設置する。

 道路は、満潮時でも海に埋没しないように、海外線を少し残した内側に入った場所への配置となる。


 海岸線は海に向かって少し下っているので、海岸に落ちている海藻や砂の粗さから満潮時の海岸線はある程度確認できる。


 我々は、島の最西の海岸から南に向かって、再び摩導カートで移動を始めた。


 摩導カートは一人乗りであるが、カートは摩導通信で常につながっている。

 会話が必要があれば、カートの内側の壁に他のカート内部の状態が表示が出来るので、隣に誰かいるように会話が出来る。


 しかし、まだ未開発の島は、行けども行けども砂浜の景色が変わらないので、お疲れのイザベラは寝たようだ。


 彼女は、今回島への移動に際し、必要な摩導具作成で連日徹夜状態であり、それがようやく完成し、少しほっとしたのであろう。

 まあ、俺も一緒にその作業もしてたのだけどね...


 イザベラの摩導カートのシートをフラットにして、ベッド状態になるように指示してあげた。

 そしてカートの窓以外を透明では無くして走行を続けている。 布団はないけれど、カート内は快適な室温だ。

 ゆっくりとお休みください。


 俺たちは、それから南端、東端、北端とまわり、それぞれ摩導マーカを設置していった。

 移動中、マリアなど何人かのシートも途中でフラットにした。


 その他の要所となる場所の何か所かに停止し、サリーと周辺を観測したが、いずれの場所も見事に何もなく、太陽の向きこそ異なれど同じ風景が続いた。

 そして、要所要所で作業をしながら3時間ほどかけて、最初に到着した海岸の場所に戻ってきた。



 摩導カートは、島の開発が進むと、島の中のあちこちに置かれることになり、摩導バングルや摩導リングで呼び出すことができる。


 誰も乗っていないカートは透明な箱であるが、IDを持った人がカートに乗り込むと、透明であった外観やシートなどは、あらかじめ設定した自分仕様のカートに変化する。

 透明なカートが、乗り込んだ時点で自分仕様のカートになり、自分のカートとして使うことができる。


 その摩導カートの運転は、摩導サーバで制御しており、すべての摩導IDの座標は摩導サーバが空間座標として一括して管理しているので、衝突事故はない。

 島が完成すると摩導カートは有償となる事を考えている。


 島が完成後の利用料金は最低通貨である1パラスで、自分の摩導リングに目的地を指定することで、そこまで移動ができる。

 課金は1日単位なので、基本的に生活に移動費としての1パラスが必要となる。

 乗った人物は、運転など特に何もする必要が無い。

 たとえ、お酒を飲んで酔っ払って寝ていても、「家まで」と一言いえば、ちゃんと自宅にまで到着する。




 摩導カートには、個人移動用のカートのほか、業務用のカートも準備している。



 摩導カートは道路敷設などの建設重機のタイプもある。

 これは、すぐに活躍する事に成るが、大きな摩導シートロールを複数個搭載し、島内に道路を敷設する事に成る。

 設置された摩導マーカを目指して、そこまで直線的の道路や島の周囲に沿った曲線道路を自動的に敷設してくれる。

 今回の主要道路として、3メートル幅の道路を上下2線として敷設する予定である。

 但し、将来的には拡幅もできるように、主要道路の用地はもう少し広く確保を考えている。



 それと、生活が始まった後に、一番活躍する事に成りそうなのが医療カートだ。


 これは普通の摩導カートと外観は同じ形をしているが、医療カートのシートは椅子であり、ベッドになる。

 そしてその医療カートのシートには、検査や治療機能が組み込まれている。


 医療カートは、自分で呼び出す以外に、摩導バングルや摩導リングが体に緊急的な異常状態を感知した時、自動的にやってくる。

 もしくは、具合が悪い訪問客などを見かけた場合に、摩導リングから呼んであげることもできる。


 患者は、現場に到着した医療カートに自ら乗り込むとカートの入り口は閉じら、シートに座ると、シートはベッド状にゆっくりと倒され、医療処置が始まる。


 患者の表面に付着した汚れやウィルス、細菌などは、カート入り口のフィルターにより遮断され、カート内部は無菌状態に保たれる。

 自分で乗り込めない患者は、シートはストレッチャーとなり、患者を包み込み、医療カート内に収納される。


 通常は前処理として、患者からの症状についての音声による聞き取りが行われ、それに合わせた治療が行われる。

 しかし、症状を自分で語る事ができない場合や、緊急性が高い場合は、カート内で処置が即座に開始される。


 検査はベッドの非接触型のセンサーにより、体温や血液・血管系、神経伝達系、リンパ系などの液圧や組成成分、伝達速度、組織状態などを、体全体の各部でスキャンする。

 レントゲンように平面やCT、MRIなどの様に輪切りをステップで粗くスキャンするのではなく、体全体の細胞レベルが1個ずつ精密にスキャンされる。

 今の医療で体温や血圧などは一か所でしか測っていないが、体全体をスキャンすることで、症状が出ている付近は、温度や血液・リンパ液など、他の部位とは異なった値を示し、組織や臓器の異常を検知しやすくなる。

 次に皮膚、各臓器、骨、関節、歯、視聴覚器官、筋肉、そして脳など固体として損傷が無いかをスキャンする。

 また、部分的に圧力を与えることで、部位による反応を調べる事も重要だ。

 打診や聴診、指先の感触などにより、患部を探るのと同様の反応をセンサでチェックしている。

 その間、検査結果はすべて、個人データとしてサーバーに記録され、今後の健康管理に用いられていく。


 ベッドは、そのまま治療台になっており、体はその状態でベッドに固定され、必要な止血や処置が行われる。

 ここでは怪我や病気の区別はない。

 センサーから得られた情報をもとに、損傷や修復したい臓器は固定され、修復される。

 ここで、症状が重い場合、ライトエリクサーを元にした治療薬の液体が用いられる。


 治療はチューブが口に咥えさせられ、チューブの液体を少し飲むことで摂取する。

 経口摂取が難しい重症の患者の場合、カート内が薬液で満たされ、患者は衣服のまま液体薬に浸される。

 この液体は、失われたり損傷した細胞を補い、けがや病気を治すものである。


 ベッドの面から弱い重力や斥力により、損傷個所に薬効成分の液体が流れ、患部が修復される。

 体内に入り込んだウィルスや細菌は、スキャンにより消毒・滅菌される。


 骨折がある場合は、折れた骨を正しい位置に再成形し、先ほどの液体により結合され、元の状態に再生する。

 病気やけがで損傷した場合、同様に、体内に浸透した液体により細胞レベルで再生され、修復する。

 弱った細胞は外部からエターナルを与え、免疫力が活性化される。

 がん細胞などで変質した臓器についても、同様に細胞レベルで置換され、再生される。

 細胞内に侵入した細菌も焼却される。


 病気や怪我をした場合、医療カートがやって来て治療を行う事に成る。

 そのため、島内には基本的にクリニックや病院という施設はない。

 必要においては、自宅内に医療カートが入ってくることで、自室が病院の出先機関の病室となる。


 したがって、単に患者を搬送する救急車は存在しない。

 ちなみに、摩導シートは耐火性が高く、また摩導ベインに接続された室内は、自己消火機能があるので、消防車も存在しない。


 摩導カートすごすぎ。 作ったのは俺だけど。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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