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7-02-02 各国の反応


「わが合衆国は、この島をどうすべきと進言するか?」


 ホワイトハウスでは、シンクタンク研究員が大統領の質問に答えている。


「はい、大統領。 では、こちらのレポートを後程ご覧ください。

 要約を申し上げますと、我が米国は本件については無視することが良き選択であると考えます。


 この海域はわれわれのハワイの庭先であり、確かに我が国への影響が全くないとは言いづらい部分が有ります。

 しかし、既に独立宣言が出された以上、それを無視して海軍を動かすことは難しいでしょう。


 日本だけであれば、外交交渉(あつりょく)で自由に出来たのですが、3国合同での発表が行われていますので少し事情が異なります。

 特に、フランスと台湾がその承認を出しているのが厳しいですね。


 まあ、わが国の防衛網的には、このエリアは他で完全にカバーできますので、あえてこの島にこだわる必要はないと考えます。


 さらに周辺海域における海底資源としてレアアースが存在する可能性は無くもないです。

 しかし、この海域には火山帯は観測されておりませんので、特にレアアースの発生密度が高くなる可能性は低いと考えます。


 従って、我が国への経済的な影響は軽微であると考えます。


 それらから総合的に判断すると、わが国としては重要性や危険性は非常に低いと判断します。

 さらに不要な軋轢を避けるために、国としての承認についてですが、結論として我が国は無視する事が一番良いかと思います。


 以上です、大統領」


「判った、下がってよろしい」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 モスクワ クレムリンにある大統領官邸では連邦軍 参謀本部 情報総局から提出された報告に対して会議が行われていた。


 この会議で問題視されているのが、何故この島がこれまでわが国で発見されなかったかと言う点であり、今から占拠が可能かについての議論が行われていた。


 この参謀本部 情報総局では偵察衛星を持ち、当然ここも発見できた可能性があるが、その第一発見や第一上陸者の立場を逃してしまい、さらに独立国の宣言までされてしまった。


 今回発表されたその島は、我がロシア連邦のカムチャツカ半島、その真南、半島先端から距離にしてわずか2500キロメートルと言う位置にある。 広大な大地からすれば、ほんのわずか先である。


 他の大国に比べ、本国から直線的な対岸の位置に有るため、所有とすれば有利な位置関係に有るにもかかわらず、それを逃してしまった事に対しての追及が行われていた。


 ただ、その報告書では、独立宣言した者は、数名の日本人らしいとの事であるが、現在は日本の国籍を離脱しており、独立宣言を行った国の所属となっている。

 それと、元日本政府に関与している人間も数名いると報告されているが、それ以外の関係者については不明と記されていた。


 そのはっきりしない情報についても、大統領はひどく憤慨している。


「我が国の情報局はお飾りか!」


「申し訳ございません、大統領。

 そこはあまりにも小さな島のようですので、彼らは見逃してしまったのではないでしょうか?」


「そこは南の土地だぞ! たとえ小さくとも、我々の悲願である南方の領土をみすみす逃してしまったのだぞ!

 南西に対してクリル列島の侵攻を延ばし、ようやく日本沿海までを押さえたと言うのに、こちらもまた日本か!


 それにどうして関与している人物のレポートがまだ出ない!

 民間人であれば、これほど調査に引っかからないわけがないであろう!

 これは日本政府が周到に計画していることは間違いない!

 日本政府から手を引かせろ! そして、わが国で再占拠のシナリオを早急に作れ!」


 大統領は、この件に係われなかったことがかなり悔しいようで、すでに情報総局を超えて、ロシア海軍太平洋艦隊への調査と行動の指令が出されることになった。


 現在は、まだ開発すら始まっていない、とても小さな島である。

 最初の調査が終了し、調査船が引き返した今であれば、実効支配できるチャンスである為、行動は早急にと言う大統領からの厳命を受けての行動である。


 そして我がロシア海軍も、調査と言う名のもとに、武装した数隻の軍艦と潜水艦が投入される事となった。

 この島自体には、まだ軍事力は全くないものと考えられるが、当然それ以外の諸国の軍事介入が強く考えられるため、最悪現地で衝突となった場合であっても、力での奪取を考えているようである。

 特に彼らは、アメリカと中国の二国の動静を念頭に入れており、それらの海軍の動きに対して、小さな動きであっても注視するように指令が出ている。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 その中国首脳から出された指令は、当初少し異なっていた。

 彼らにとって、島の存在を問題とするのではなく、カノ国に対して台湾がその国を承認したことが問題となっていた。


 国を承認することは、台湾が国である事を示すものであり、中国としてはそれを認めることが絶対に出来ないのだ。



 それと、中国にとって台湾統一には、もう一つ隠された狙いがあった。

 現在、中国から船舶で太平洋に出る場合、日本、台湾、フィリピン、大韓民国と言った国々によって、太平洋への出入口をがっちりとガードする強固な壁が出来あがっている。

 ここで台湾の統一することにより、そこが窓口となり、太平洋への出入り口を開ける事が出来る。


 中国が太平洋への進出の国家としての野望があり、台湾の民族統一はそれを覆い隠す為の隠れ蓑となっている。

 ここの海域が抜けると、台湾を基点として、あの輝くように青く広がり、無限の資源を海底に蓄えた、大きな太平洋へ進出する事が出来ると考えている。


 これまでにフィリピン、ベトナムといった周辺の海域や、日本と台湾の間に有る海域もゆさぶりをかけてきた。

 これまでは通り抜けられそうな海域に対して、軍事的や経済的に支配を試みる事を行ってきたが、これまでそれがうまくいっていない。


 ところが、今回太平洋上に無人の島が発見された。

 それを中国として手に入れられた場合、大きな意味を持つことに気が付いた。


 もし太平上に中国自国の領土が出来た場合、例え中国を取り囲む海域の支配がうまくいかなくとも、自己の領土への通航権を主張して、いかなる艦船であっても途中の海域の通航が出来る。

 この島を支配する事で、周辺諸国との了解を得ずとも太平洋への足掛かり、いやそれ以上に太平洋への専用ゲートを造れ、そこから進出ができるものと判断した。


 なので、今党本部はいろいろな策が練られ始めており、中華人民共和国海軍はいま出港準備に追われていた。

 そして、大艦船隊に先行して原子力攻撃潜水艦が同海域に向けて偵察活動を開始しようとしていた。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 それら日本の周辺諸国の野望と異なり、日本国では相変わらず一番最低の対応しかされていなかった。

 この謎の島について、週刊誌はあること無いことを推測で書き、テレビなどのマスコミは、誰が国家として承認したのか?、責任者は誰だ! とか、国会はどうした! などと、国益など一切考えずに面白がって騒ぎ立てていた。

 さらにネットなどでは、発見者は日本人なので、あの島は日本の領土なのではないかとか、発見者 加納のプライバシーを探るような事まで始まっていた。


 悲しいことに、非常に低い次元での話しか話題に上って来ていなようであった。


 でもカノ島の領土問題やカノ国の独立宣言などは、実は些細な問題であり、外務省や日本政府としては、内情を知っているため、現時点での騒ぎは静観する事にしたようだ。

 カノ国が抱えた異次元人、摩導具、エリクサーなどが世界に影響を与え出す事はこれから始まるのである。


 ただ、今回は慎二の小さな宣言でしかなかったので、周辺諸国政府が、すでにこれほど騒めき立っている事までは、日本政府はまだつかんでいなかったようだ。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 慎二たちは、カオルチャンネルにてカノ国として2度目の放送を行った。

 この時には、既に世界中の多くの人に見られていることになり、多言語での中継となっていた。


 この放送では、今のところカノ国に対する明確に国家としての否定意見は、まだ我が国に届いていないと言う表明を行った。

 まあ、これはカノ国に対してちょっかいを掛けようとしている国に対しての挑発ではあるが、慎二達としては、まだ先端だけのこの小さな島のうちに、なるべく国として認めさせようと考えている。


 じつは、カノ国としては地球規模での諜報活動がすでに行われており、各国の動きはかなり把握されていて、それに対応する国家の防衛対策は既に始まっていた。

 慎二たちは、摩導通信を用いた世界規模のインターネットのバイパス回路により、そこからの情報収集が行われている。

 これはGGI社の地球データベースと同じ原理であるが、街の街頭カメラの情報がすべて集まると、それだけでも地球規模の情報が入手される。


 また、各国政府や要人宅に配した摩導ボールカメラ情報は摩導サーバに集められてきている。


 そして、友好国である日本やフランス、台湾に対しては、国家防衛の応援は不要であると、すでに連絡は行ってある。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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