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7-01-02 上陸


 第三調洋丸は、今朝から太平洋上のこの場所に停泊している。


 サンサンと降り注ぐ太陽の下、釣り糸を垂れたり、本を読む、ドリンクを飲むなど各自休暇のように楽しんでいた。

 上陸艇が固定されている第三調洋丸の甲板には、アメリカンサイズの大型折り畳み式のプールも出されて、仮設のプールが出来上がっている。

 娘たちは、以前長鳥温泉のプールで買った水着を着て、キャキャアとにぎやかだ。


 しかし、俺たちはここに洋上のバカンスにきたわけではない。


 第三調洋丸 船長の墨俣さんから案内が有り、目的ポイントの嵐がまだ治まっていないと言う事で、その手前のポイントで今日は待機しているのだ。

 波が高いと、ソナーを積んだ船が激しく上下してしまうために、海底面の観測が困難であると言う事だそうだ。

 低気圧が去って行き、天候が回復しつつあるようで、明日は目的海域に入ると説明を受けた。


 夜のうちに出航したため、思ったより目的海域まで早く到着し、海水の加熱解除による天候改善にまでは、もう少し時間がかかるようだ。

 なので、摩導シートにより海底面から海水温度をすこし下げている。




 船長との打ち合わせでは、目的地の天候は急速に回復していると言う。

 船長は知らないが、現在海水温を下げている影響もあり、海上の空気の密度が高くなり、上空の気圧が高くなっているであろうと思われる。

 その為に上空から海面に対する気流が発生し、上空の雲が晴れ始めたようだ。


 船長との話では、目的地の気象は明日朝には回復すると予想されるので、早朝からアプローチすると言う。

 目的海域の海底面のソナー測定や各種データサンプルを行いながら、明日から1週間かけて目的ポイントを中心として渦巻状に、中心に向けて測量を行うらしい。

 もっと時間をかけることが出来ればメッシュ状に計測したいところではあるが、今は時間が惜しいのでレコードのように連続したサンプリングを行う。


 いよいよ始まりである。

 この島探索の様子もカオルチャンネルで定期的なライブ実況が始まっており、あと計測されたデータなどが配信され始めている。


 まあ、もっとも島が見つかり、上陸するまでは俺たちがやることは少ないので、娘たちのバカンスはまだまだ続きそうであるが...



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 観測を開始して、1週間をかけて行った測定結果は、予想通りというか、実際には設定どおりであるが海底隆起が認められた。


 この周囲の平均海底面は水深2キロメートルほどであるが、航跡とソナーのエコーデータを合成した3D画像を見ると、海底には直径200キロメートルの半球状に隆起が認められ、それが中央に向かって連続的に海底面が隆起している事が確認された。


 そして観測船は、隆起の中心近くまで来ているが、あまり不用意に進むと座礁の危険がある為、現在はソナーで海底の状況を調べつつ、吃水線のマージンを切らないように船が座礁しないだけの水深を取り、微速前進している。


 結果、これ以上は座礁するために近づくことが出来ない直径3キロメートルくらいの海域内の中央部に陸地の存在が確認された。


 これ以上内側に進むと観測船では座礁するために、上陸用のゴムボートを降ろして上陸を試みることになる。

 この上陸の模様は、カオルチャンネルにてライブで配信が行われるので、上陸開始時刻があらかじめ流されている。


 上陸用のボートは2(そう)準備しており、最初に俺たちが上陸する。

 そして、もう1艘にはフランスの撮影クルーと各国招待者が乗船し、俺の上陸の安全が確認されたのちに続けて上陸する予定だ。




 観測船が待機している場所の水深は10メートルほどある。


 海面に降ろしたボートに俺たちは登場し、エンジンを始動すると、ボートは隆起の中心に向けて出発する。

 しばらくボートを直進すると、やがて海底の白い砂浜が見えてくる。

 そして、そこから更に500メートルほどボートを進めると、砂浜の波打ち際が見えてくる。

 エンジンを止めて、あとは手漕ぎで海岸までボートを進める。


 ボートが海岸に達すると、まず俺が一人ボートを降り、砂浜に上陸する。

 このボートから上陸する模様は、最初は遠く高い位置で海岸線を俯瞰するような映像から、上陸する慎二に徐々に近づく、いわゆるドローン画像のような撮影方法で行われている。

 この撮影は、摩導ボールカメラで香ちゃんにより撮影が行われている。


 砂浜にはまず俺が一人上陸し、すぐに波が来ないと思われる奥の砂浜にフラッグポールを立てる。


 このフラッグを建てる行為は、俺が最初の上陸者であることを示す為の重要な儀式である。


 白地に金の刺繍で、半円の島の上に3本のエターナルの波が降り注ぐ、温泉マークの下の半球部分がひっくり返ったようなデザインだ。

 このフラッグこそ、この前から皆でデザインを考えた我が国の国旗が描かれている。


 フラッグの設置が終わると、他のメンバーもボートを降りて、薫ちゃんは俺の元に駆けて来てインタビューを開始する。

 最初のボートが無事に上陸できたことを連絡すると、カメラクルーのボートも島に到着する。



「皆さん、驚きました! 本当に島が有りました!

 地図にない場所に島が存在していました。

 そして、今私達も上陸を開始しました。


 あ、ご紹介が遅くなりました。

 今回島を発見され、先ほど最初に上陸された加納さんです。

 加納さん、今回はご苦労様です。 また、地図にない島への上陸おめでとうございます。

 まずは、第一声をお願いいたします」


 この辺は、ちょっと無理やりっぽいが、俺たちが所有者であることを暗に示すために打ち合わせているインタビューである。 フランスチームもその第一声のインタビューを同時に撮影を始める


「ありがとうございます。

 最初に上陸いたしました加納慎二と申します。

 ここは地球にとっては、ほんのちっぽけな島ですが、俺たち人類にとっては大きな夢を見させてくれる場所となるでしょう」


「素敵なお言葉を、ありがとうございます。

 これから調査開始だと思いますが、まだ何が有るか判りませんので、お気をつけて頑張ってください」


「ありがとうございます」


「上陸直後で大変お忙しい中、お忙しい仲ありがとうございました。

 それでは、加納慎二、発見した島に上陸するの第一報をカオルチャンネルがライブにてお届けしました」


 その後皆は島の確認を行う作業を行った。



 その後、カオルチャンネルでは定期的に独自の島内リポートを行っているが、それほど面白な物もなさそうだ。

 木や草は全く1本も生えていないようで、また動物はおろか鳥の姿すらまだ確認ができていない。

 本当に見渡す限り砂浜しかなく、一番奥は少し高く盛り上がっている。

 そしてその奥は崖になっており、崖の下には海面が有り、岩礁が見えている。

 鳥取砂丘の馬の背のような感じだ。


 映像的には砂浜だけだとつまらないので、時々、波打ち際で砂山を作っている映像などが挟み込まれている。

 大発見と言うよりは、どこかほのぼのと海岸で遊んでいるような癒しの映像が主体になって来ている。


 今のところ薫ちゃん目当てで見ている人には良いかもしれないが、残念なことに島の陸地には新しい発見は出来なかった。

 まあ、ここで変な物が出て、世間の注目を浴びる事は逆効果であり、何もないことが目論見通りである。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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