7-01-01 三つの秘密
ここまでのあらすじ
エンジニアである加納慎二の元に届けられた謎の黒い板スレイト。
それは次元を超えたショッピングサイト パラセルを操作する端末であった。
異次元世界から来たサリー、マリア、イザベラ。
異次元人であるサリー、マリア、イザベラは慎二を頼り、戸籍がないこの世界で生きていくことを決意する。
俺は、厚労省の宮守珠江と異次元から来た人たちが安全に暮らせる国づくりを行う事に巻き込まれていく。
富山の漢方薬店でエリクサーを錠剤化する事に成功し、皆に配ることが出来た。
名古屋の地では、真希の師匠である大学教授と知り合う。
そして慎二たちの仲間はすこしずつ増えていく。
新たな拠点では、この世界にない摩導具をベースとした建物を造り、足がかりを作った。
名古屋の大学で摩導具講座を開くことで、世の中に異次元文化を広げ始める事にした。
そして、いよいよ新たなる国家造りを目指して領土造りを始めるのであった。
夢のお告げから始まった小さな運命の流れは、慎二たちを乗せて、いよいよ新たな国づくりのステージに到着した。
そして物語は続きます。
俺たちは、船の中にいる。
日没前に横浜港を出港した第三調洋丸は東京湾の浦賀水道航路を抜け、東京湾の剱埼洲崎ラインを超えて太平洋に進んでいる。
そう、ここはもう太平洋の洋上だ。
東京湾内では多くの船舶が見えていたが、沿岸からの明かりも遠く離れてゆくと、そこは星を見上げるしかない。
船内の会議室には俺達の仲間だけが集まっていた。
「これから目的地までには何日か掛かります。
そして、目的地に着くと、それ以降は俺たちがとても忙しくなることを意味します。
新たなメンバーが増えましたので、そこでせっかくの機会ですので、今のうちに俺達の秘密について話をしておくことにします。
ソフィ博士には秘密についてお教えすることをお約束していますが、その他の方にも是非知っておいてください。
お話しする内容は、すでに知っていたり使っていたりする事もあるかもしれませんが、まず大きなくくりとして、俺達には3つの秘密という物が有ります。
まず最初は、皆さん既にお世話になっている1つ目の秘密である摩導具についてです。
ソフィは摩導具について、その原理は納得したのかな?」
「それを動かす力が、エターナルがもたらすフォースと言う事は聞いている。
まあ、確かに電気ではないが、これと近い事が摩導具の中で起きているの納得はした。
確かにこれらは、夢物語などではなく、厳密な物理法則により動いていることは確かなようだな」
「そうですね。
この原理をこの世界に持ってきたイザベラの世界では、長い年月の中で理論の伝承は失われ、その動作原理は伝わっていないようです。
ただ、ソフィ博士が言うように俺達の世界では電気が有り、電気の原理を摩導具に当てはめる事で、俺たちは推測でその摩導具の分析を進めてきました。
結果できたものが、この微細化した摩導回路とそれを使った摩導具です。
ところでですね、もし人間がですね、このエターナルの流れを摩導具を使わずに直接操る事が出来たらすごいと思いませんか?」
「それは、どういうことだ?
エターナルの流れを変えたりするのか?
でも、たとえこの地球表面に強いエターナルの流れがあったとしても、エターナルは体を通り抜けてしまうのではないか?」
「でも、摩導具は無いけれど、エターナルを直接人間が制御する事の技術が発展した異次元世界が有ります」
「ふふふ、それは魔法使いが住む世界だな。 私も子供の頃には魔女っ娘にあこがれていた物よ」 と、ちょっと遠い目をしたソフィ博士。
「じゃあ、ここで皆さんにちょっと余興としてマジックをやってみたいと思います。
マリア、お願いできますか?」
マリアは、その白い腕をみんなに見せた後、人差し指を一本立てる。
すると、そのマリアの指先に小さな炎が現れた。
「「「えっ!」」」
「マリア、ありがとう」
「マリアさん、それ摩導具を使っていないの?」
「はい、これはわたくしの指ですわ」
「どういうことだ? ま、まさか、魔法なのか?」
「さあ、どうでしょう? 博士は、どうお考えになりますか?」
「この世界にはエターナルはほとんど存在しないのだろう? であれば、マナクリスタルのようにエターナルを発生する電池みたいなのが必要なのではないか?」
「正解です。
マリアは体内にエターナルを貯めているのです。
魔法、これが2つ目の秘密です」
「「「えっ!」」」
「そんなことが、本当に人間にできるのか?
そもそも、エターナルは体を抜けて行ってしまうのではないのか?
なのでそれを制御などできないんじゃないのか?」
「皆さんは摩導具をご覧になって、すでに使ってもらっていますので、それについてはすでに受け入れてもらっています。
なので、エターナルと言う事に対しては納得し、そして魔法についても理解がしやすいのではないかと思います」
「あ、あの... マリアさんは魔法使いなのでしょうか?」
マリアは黙ってうなづく。
「はい、マリアは魔法が使える異次元世界から来ました。
マリアの世界には、エターナルが地表にまで降り注いでいる世界です。
といっても、マリアの世界であっても誰でもが魔法という物が使えるわけではありません。
幼少期に、その才能を持つ人を見出して育てます。
その時期を逃すと、体内にマナ、エターナルを貯める能力が育ちません。
上位貴族の中、特に王族ではその才能を持つ人が多く現れるようです。
ちなみに、マリアはその国のお姫様です」
「「「姫様ですか!」」」
「また、国中の子供の中からその才能を持つ人が探し出され、集められて訓練されるようです。
そして、体内に貯められたマナを使って、エターナルをコントロールします。
魔法はそのエターナルを制御する技術と、魔法を発動するための原理を学ぶ学問なのです。
俺たちがイザベラの摩導具をこの世界で再現できた大きな理由として、マリアの魔法の学問や体内にエターナルを貯めるマナ溜りの存在が重要でした。
そもそも、最初のマナクリスタルの再現は、マリアの体内に出来たマナクリスタルを取り出したものです」
「マリアさん、他にも魔法って使えるのですか?」 と、クリス。
「そうですね、では少しお見せします」
マリアはそう言うと、光や風など、簡単な魔法をいくつか見せてくれた。
「これはすごいな。
せっかく組み立ててきた摩導具の理論を修正する必要があるな。
ということは、薄いエターナルを蓄積することで濃密化し、体内でエターナルの流れを操作でき、魔法を発動する原理を知っていれば、人間は魔法を使うことが出来ると言う事か?」
「そうですね。
3つとも揃えば可能かもしれません。 ただ、この世界では難しいかもしれませんね?」
「でも、マナクリスタルを使えば体内にマナを蓄積する場所が無くとも出来るのではないかな?」
「ん? それは俺も考えていませんでした。
マリアの世界には体内にできた結晶からエターナルを取り出す技術はありませんでした。
でも、イザベラの摩導具を使う事で、マナクリスタルからエターナルを取り出すことが出来ます。
それを組み合わせる事で、確かにその可能性はありますね」
「あの、それって僕も魔法が使うことが出来るようになるのですか?」 と、クリス君。
「そうですね。 これまで魔法が使える為には、幼少期に体内にマナ溜りができるか、そして幼少期の時期に成長させることが出来るかが最大のポイントでした。
もともと高エターナル環境でないとマナ溜りは発生できないものです。 なので、この世界で魔法使いはいません。
しかし、先ほどソフィが言ったように摩導具が発するエターナルを使う事で、魔法を使える可能性が生まれたと思います。
でも、その為には体内でエターナルを流す訓練や、魔法理論について学ぶ必要があります。
この世界にある自動車を運転するのにも、まず自動車やガソリンが有るだけではだめで、交通法規を学び、運転技術を学ぶ必要があります。
あ、ちなみにアンナはマリアと同じ世界から来ました。 そして彼女は姫付きの護衛騎士であり、彼女も魔法を使うことが出来ます。
ですので、魔法が使えるようになるかは、今後マリアかアンナと皆さんで試してみてください。
では、話を戻します。 そして最後の秘密を話します」
「ふぅ、まだあるのだな。
ここまでの秘密だけでも、これまでのこの世界の科学から考えると十分重いぞ。
秘密があるとは思っていたが、すでに私が考える次元を超えているな」
「そうですね。その3つ目の秘密は次元のお話になります。
俺は、次元間での通販が利用できるパラセルと言うシステムの端末装置であるスレイトという物を持っています。
これがスレイトです」
俺の手に中にいきなり黒い板が現れた。
しかし、既に魔法をみて驚いていた皆さんはさほどの驚きしか示さなかった。
「これが俺達の秘密の原点と言っても良いと思います。
これが俺に送られて来た事で、サリー、マリア、イザベラがこの世界にやってくるきっかけとなりました。
そして先ほど言いましたように、これは異次元での物品の売買が行えることになります。
今回集まっている異次元の方につきましては、おおむね次元間で販売されているエリクサーと言う万能薬の原料である貴薬草を求めてこの世界へたどり着いたと思います」
「おう!」 と、元騎士であるフェル。
「そして、先日皆さんへお渡ししたペンダントに入っているのが、俺たちが生成し、飲みやすい形にした万能薬エリクサーです。
これは、病気や怪我に対して即効性がある薬です。
この原料となる貴薬草はどうやらこの世界でしか取れない様なのですが、この世界でも現在枯渇しており、新たな貴薬草について貴子の探索をお願いしています。
そして、その貴薬草は異次元間での販売システムパラセルで販売されていた物でした。
ところで、このスレイトは異次元間の販売を行うにあたら、それを補助する機能がいくつか利用できます。
たとえば、取引をサポートするヘルパーと言う存在が有ります。
これは、スレイトごとの異なる個性が有り、俺のスレイトではアーと言うヘルパーがいます。
アー、姿を見せてください。ビジブル!」
『初めましてかな? 私がアーだよ!』
「この娘がパラセルを利用する際や、俺がスレイトを使う為の操作を行ってくれるアーさんです。
アー、ありがとう。
で彼女は言ってしまえば、パラセルというコンピュータのようなシステムの中に生み出されている人格であり、摩導バングルや摩導通信、摩導具の制御と言った事を以前は彼女の余剰処理能力を使って処理をお願いしていました。
いまは、拠点に置いてある摩導コンピュータによりそれらの処理は行っています。
これはソフィに最初に手伝ってもらった件ですね」
「うむ」
「そして、その売買に際してストレージと言う機能が有ります。
これは、このスレイトに紐づいた次元に、売買をする品物を一旦収納し、そこを経由してパラセルへの売買を行っています。
このストレージは国際空港に有る巨大な倉庫にあたり、貨物はいったんここに置かれ、輸入や輸出手続きが行われて出荷や入荷が行われます。
そして、ストレージを利用する事で、劣化しない収納という物が可能となります。
皆さんが拠点で食べている食材などもここで保管されており、ストレージの機能は限られたスレイトメンバーが利用することが出来ます。
残念ながら、これは一部のメンバーしか登録できませんので誰でも使える物ではありません。
俺たちはパラセルに貴薬草から作られたエリクサーの販売を開始していますが、在庫が限られているために制限をしながら販売を行っています。
ざっと掻い摘んでですが、これで俺達の3つの秘密の基本である、摩導具、魔法、パラセルについてお話ししました。
これから国づくりをするのにおいて、これらの秘密を使っていく事に成りますので、皆さんとも秘密を共有しておきます」
なかなかよいタイミングが見つからなかったので、少し後になってしまったが、こうして、国づくりを前にして秘密の共有を行うことが出来た。
新章が始まりました。
いよいよ本小説のメインテーマである国づくりが始まります。




