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1-05-03 ご飯を作ろう

 ストレージが普通に使いこなせるようになると便利ですね。

 でも、ストレージの使い方にもう少し早く気が付ければよかったですね。



 廃棄品のゴミ袋が溜まったので、昼飯前にサリーと地下のゴミ置き場へ持っていく。


 このマンションの良いところは、いつでもマンション内のゴミ置き場にゴミが出せることがある。

 日中は仕事で不在がちになるので助かる。


 サリーに部屋で分別した、燃えるゴミと燃やさないゴミ、資源ごみを指示して、決められた回収箱の中に入れていく。

 ゴミ分別は、現代社会での生活の第一歩である。

 今は俺が一緒にいるので日本語が読めるが、近くからいなくなると読めなくなる。

 俺がいない時にでもゴミが出せるように、言葉と一緒に、回収場所の箱の色や形、マークなどで覚えてもらう。


 こうやって、現代生活でも基本的な約束事を少しづつ教えていく。


 サリーに、この袋に入れたものは捨てるんだと言ったら、何度ももったいないと言われた。

 俺だって捨てたくはないので、さっきまで取っておいたのだが、他人に捨てるなと言われると、以外と諦めがつくものだなと思った。


 無事にごみ捨て作業も終えて、そろそろお腹もすいてきた。

 今日のお昼は、昨日スーパーで買ってきた食材を使って、俺がちょっと作ってみることにしている。


 この世界でのサリーの食事の練習のためもあり、自分で作る場に接することで、この世界への理解が進むと思われる。

 また、家で食べることで、食堂だと食べ方を教えることは難しいが、部屋でなら簡単なところから手取り足取り教えることができる。

 当然最初からうまくは行かないので、少しづつ練習していこう。


 今後のことを考えると、俺が会社に出社している時の事などを考えると、帰りが遅くなったり、しばらく家を空ける出張もあるだろう。

 その際に毎日インスタント食品だけでは飽きてくると思うし、健康を考えると自分で調理ができればと思っている。

 その為に、サリーが一人でも食事を作ったりできるように、まずは現代の調理器具や調理方法、食材や調味料など、食事の作り方について基本的なことを教えておく必要がある。

 それを考えたうえで、なるべく簡単に調理でき、日持ちが可能なメニューができる食材を、昨日大量に買い込んできた。


 まずは、俺のキッチンにある調味料の種類と置き場所、保存食料品の収納場所を説明する。


 塩はサリーの世界でもあるよね。 ここの塩は海水から作った塩だ。

 胡椒、からし、わさび、唐辛子、粒マスタード、これらは辛いよ。

 砂糖やはちみつは甘いよ。

 酢やレモン汁は酸っぱいよ。

 醤油とかソース、マヨネーズ、味噌といった調味料もあるよ。


 サリーに調味料を紹介すると、いちいち舐めてみて、味を確かめている。


 新しいものに対して、物怖じせずにチャレンジするが、超辛い調味料もあるから注意しようとする前に、タバスコを前に、既に涙目になっていた。

 中には、極端な味もありますよ。


「朝飲んだコーヒーは苦かったけど、苦い調味料はどれなの?」


「えっ、そういえば苦みの調味料って置いていないな...」


 塩、辛、甘、酸、渋、旨とか言われる味の分類の中には「苦い」もあるが、苦みという味の研究は遅れているようだ。

 いつの間にか何でもあると思っていたが、苦みは意外と盲点だな。

 サリーに言われるまで気が付かなかった。


 会社に勤めるようになると、家で調理する暇はなかったが、学生時代には一人暮らしであり、自分で料理は毎日のようにしていた。

 まさか、それが今になって役に立つとは思ってもいなかった。


 ここまで説明して、一番肝心なことに気がついた。

 この娘は、そもそも料理というものはできるのか?


「サリーの世界では、ご飯は家で作って食べるの?」


「長い旅をしている時、周囲から手に入る食材を使って自分達で食事を作らないと、何も食べることができなくなります。

 旅ではない時では、私の家では、母と私と妹とで作って食べていました。

 でも、家の中では煮炊きはできませんでした」


「それって、ご飯は家の外で作っていたのかい?」


「そうですよ!

 家で食事を作って食べることができる人は、私の町でも少なかったわ。

 そもそも家の中で薪を燃やすことなんて、普通はそんなことはしません。

 もし家の中で火を燃やしてしまうと、煙や煤が室内に籠ってしまい、すぐに家の中が黒くなっちゃいます。

 家の中で直接火を燃やすことができるのは、ちゃんとした設備を持っている王宮や、大きなお屋敷でしかないわ。

 さすがに私の商会の規模じゃ、そんな設備を作ることはちょっと無理ね。


 そもそも家で食事を作るためには、十分な水の汲み置きが必要でしょ?

 私の商会は、大事なお客様が来訪されることもあったので、水も瓶で買っていたわ。

 そして、いつでもお客様にお湯が使えるように、家の裏庭に面した壁に屋根を設けた場所があり、そこの竈でいつもお湯を作っていたわ。

 だから、お湯があるときや、お湯を沸かした残り火を使って、食事の煮炊きが家でも出来たの」


 うん、サリーはお湯が使えたことを自慢してるんだね。

 水道やガスがないと、やはりご飯を作るということは大変な事なんだな。


「なるほどね」


 そういえば、テレビのドキュメンタリーなどでも、外国の家で、外壁にくっついた竈で煮炊きをしているのを見たことがある。

 確かにそれだと家の中に湿気やにおい、煙が入らないので実用的ではあるが、日本は雨が多いので、ちょっと無理だな。


「普通の人が、お湯を使いたいときはどうやっていたのかな?」


「街のあちこちに共同の井戸があり、その横にはやはり共同で使える竈場があり、付近の人は薪を持ち寄って火を使っていたわ。

 竈で火を使う場合、だれか使い終わるまで待っている必要がありのでちょっと不便。

 また、窯場には大きな湯の釜がいくつかあり、食事の時間帯は竈番がお湯を沸かしていたわ。

 お湯が欲しい人は家から薪を1本持ってきて竈番に渡し、お湯はは皆が順に使っていき、減った釜には竈番が水を補給することになっているの。

 竈番は最後に残った薪をもらうことができるので、それが彼らの報酬になるのよね。

 お湯であれば、すぐにもらうことができるので、共同の竈場を使っている人は、そのお湯だけを使って食事を作ることが多いみたい」


 サリーの世界では、家での食事は屋外で行い、軽く煮るもしくはお湯をかけて湯がく調理がほとんどのようで、炒めたり焼いたりの技法は難しそうだ。


 では、早速調理を始めよう。

 まずこの世界の包丁とまな板を出し、その使い方を説明する。

 多分この世界の調理方法は初めてと思っていたのだが、なんとネットで画像を見たようで、少しは知識があるようだ。

 それで、キッチンでは切ったり剥いたりと、実際の調理を試してみせる事にした。


 サリーの才能なのか? 理解は早く、好奇心が非常に高いので、知らない知識をどんどん吸収していっている。

 どうやって説明しようかと悩んだけど、刃物の使い方は、すでに俺より上手いかもしれない。


 下ごしらえが終わったので、調理を開始と行きますか。

 先ほど切ってもらったアスパラガスとジャガイモを、付け合わせ用に塩ゆでにしておく。


 では、昼はパスタにしよう。

 スパゲッティとかパスタって料理はわかるかい?


 そう言って乾麺の1.7mmのスパゲッティを出して見せる。

 どうもショートパスタ、もっと長さが短いマカロニくらいのパスタがあるようだが、このスパゲッティよりは少し太いようだ。

 パスタがあるということなので、たぶん小麦?に近い物は存在するようだ。


 調理実習もあるので、火を通した野菜と缶詰のソースを合わせるのがいいかな?


 これは缶詰と言って鉄の入れ物に入っている。

 この入れ物を開けなければ、食べ物であるが長持ちする。


 こちらはレトルトパックと言って、これも開けなければ長持ちする特別な袋だから。

 だけど一度開けたものは、その食事中に食べるか、残った場合、器に入れ替えて冷蔵庫に保存すると何日かは食べられる。

 あ、冷蔵庫というのは、その中が冷たい箱ね。

 食べ物は、この中で冷やしていると長持ちするからね。


 彼女は生まれてから一度も飢饉とかにはあったことは無いらしい事を自慢しているが、他国では飢饉は頻繁に発生するらしい

 彼女は冷蔵庫の使い方を知り、さっきから、紙パックからガラスのコップに注いだ冷たいオレンジジュースを、冷たい!キレイ!甘い!美味しい!と一口ずつ感想を述べながら飲んでいる。

 実に可愛いが、冷気が逃げちゃうから冷蔵庫はあまり開け閉めしないでね。


「我が家では、旅先から持ち帰る食品は、父のストレージに保管していたようですね。

 普通だったら、旅先の食材を持ち帰っても、腐って食べられないですから。

 今となって考えたら、それは父がストレージを持っている我が家だからこそできた事だったのね」


 さらっとサリーが重要なことを教えてくれたが、俺は目の前の調理に気がいっていたので、この時は特に気にとめることができなかった。


「ああそう。

 では今日はミートソースの缶詰を使ってみよう」


 缶詰めの中身であれば、俺がいなくとも缶に印刷されたイラストや写真でわかる。


「調理にはいくつかの方法があるが、今日はミートソースを缶ごと湯煎にします」


 引き出しから、缶切りを取り出すが、これは挟んだ歯を回転させて、缶のふちに切り口のギザギザが出ないで、きれいに切ることができる缶切りだ。


「この道具は缶切りといいます。

 こうして缶に刃を当てて、取っ手をギュッと挟んで、このノブをこちらの方向にぐるぐるっと回すと、ほらっ、このように缶の上蓋が切れていきます。

 缶切りで切りながら、ぐるっと缶を一周回すと、蓋を取ることができます。

 切り取った缶の縁は手を怪我をすることがありますので、注意してください」


 そう言うと、おれはフォークを差し込んで、缶の中に落ち込んだフタを少し持ち上げて取り除く。


「ガスコンロの使い方は昨日教えたよね。

 では火をつけてくれる?

 そうそれを一番回すと強くなる強火、戻すと弱火、真ん中くらいの火の強さが中火。

 今は中火がいいな」


 小さなアルミの片手鍋に水を張り、火のついたガスコンロにかけ、鍋の中央にミートソースの缶を置き、お湯を沸かす。


 ここで、換気扇の使い方を教える。


「あ、これで煙を外に出すのね。 すごいね!」


「普通は調理でも煙は出ないけどね。

 換気扇を回しておかないと、部屋の中に臭いや油煙や湯気がついちゃうからね」


 もう一つ、小型の寸胴タイプの鍋を出し、こちらは水をたっぷり張り、パスタ用の湯を沸かす。

 サリーは必死に使い方を覚えようとしている。


 まあ、調理ってほどではないが、最初の一歩だ。


 おいしそうなご飯ができそうですね。

 自分たちで作ったご飯は、一層美味しいですよね。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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