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6-02-01 後悔、役に立たず


 僕は、吉沢孝志。


 佐賀県にある大学で助教をしている。

 昨日、名古屋に有る名古屋先端技術大学という場所にやって来た。


 今、僕は今とっても後悔をしている。


 昨日、その大学で行われていた発表会に僕は出席したのだ。

 その時、そこで聞いた内容で、自分の人生が変わる事を感じてしまった。


 僕は子供のころから科学という物が大好きだった。

 それが、その喜びが、大学に勤めるようになり、それを人に教えるという仕事となってしまってからは、単なる仕事となってしまった。


 その結果、科学に対して子供の頃のあの輝きを感じなくなってしまった。

 学問として、そのほとんどを既に理解してしまったと言う気になってしまっていたのかもしれない。


 昨日の発表会の講演を聞いた事を後悔しているのではない。

 それどころか、今の僕には、あの子供の頃の、自分が知らない科学という物にキラキラしていた頃に戻ったような感じすら戻ってきている。


 あの、発表会の後、何人もの人たちが会場から外に出てから、その場で誰ともなしに議論が始まった。

 それも、いくつかの人たちがグループになって、あちこちで激しい議論となっていた。

 それぞれ、大学の教授であったり、どこか有名なメーカーや研究員など、皆出自を問わずに周りの人達と話し合っているのだ。

 年老いたもの、若い者、ベテランの者、そんなことに拘わらずに近くにいた者達と話し合っている。 意見を戦わせている。


 そんな光景は、これまで見たこともない。

 皆が熱くなっていた。


 やがて、先ほど見たいくつかの摩導具ごとにグループが生まれ、その原理についてそれぞれ話し合われていた。


 いや、話し合っているのではなく、皆興奮しており、考え付くいくつものことを自分勝手に話しているのが本音のようだ。

 それは誰かに聞いて欲しいわけではなく、崩れ去ろうとしている自分の常識を、言葉として話すことでなんとか繋ぎとめようとしているのかもしれない。


 そして、それらは更にいくつかのグループと分かれ、グループは名古屋の街へと消えていった。

 僕も、そのグループの一つに加わり、名古屋の夜の街へ場所を移し、そこでも議論は続けられた。


 せっかくの美味しい名古屋の食事も、他の人の意見も聞くことに必死であり、はっきり言って何を食べたかすら覚えておらず、後悔している。

 あ、でも後悔はこれではなく、皆さんはこのまま翌日、石崎研究室を訪れると言うのだ。


 ただ、それについてはこの参加者の中に主催者に既に確認した人がいたらしく、大学に新たにできた研究室は、春休み中はまだ閉まっていると言われたそうだ。

 かと言って、石崎教授の個人宅はわからないし、たとえ大学に聞いても、そんな個人情報は教えてもらえるとは思えない。

 そこで、日を改めると言う事で、僕らは住所を交換した。


 名古屋以外の人も多いにもかかわらず、皆さんまた来ると言っている。

 僕は、僕が所属する研究室の教授の計らいで今回名古屋に来ることが出来たので、それほど簡単に再び来ることは出来ない。

 それで、次回は来れるかはわからないと言葉を濁して帰ってくることになってしまった。


 それを、未だに後悔しているのだ。

 近い人はうらやましいが、夜の参加者の中には遠方の人もいて、彼は今の仕事をやめて名古屋に移る事を真剣に考えていた。

 名古屋近辺の住宅事情や求人状況まで既に話を進めていた。 かなり真剣の様である。


 確かに、せっかくの機会を得たのにこれを逃すことはもったいない。 いや、もったいないのレベルではなく、一生後悔する事に成ると思う。

 僕はどうしたらよいのだろう。 悩んでいる。


 でも、今の僕は助教であり、それほどの地位があるわけでもない。

 今すでに大学には教員は多くいるために、准教に昇り、教授となる事はかなり難しいと思われる。

 今から始めれば、第二力学と言う分野では上がいないので、教授になる事も夢ではない。

 ああ、これはそう言う打算的な話ではない。


 そう、僕も子供のころから科学好き少年であった。

 これほど面白そうな事が今の世の中に生まれようとしているのに、何故に僕はそれに参加しないか? と言う自分の葛藤であり、戻ってきてしまった事への後悔だ。


 知らなければこんな悩みは無かったのであろうが、見て聞いてしまったが為に、一生を左右する悩みを抱えてしまった。

 明日、研究室に戻ったら正直な気持ちを教授に話して、教授にも相談に乗ってもらおう。


 ああ! しまった! 土産を何も買ってきてないや。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 名古屋に有る名古屋先端技術大学に物理学部第二力学課と言う石崎教授の研究室が作られることになった。


 そこでは、イザベラの摩導具を研究する事になる。

 俺たちは摩導具をすでに実用化をしているが、それをそのまま出してしまうとこの世界としては発展がなくなってしまう。


 この世界で独自に進化をしてほしくて、いきなり全ての技術を開示するのではなく、少しずつ出していく事を考えている。

 そのために、大学での発表会の場を設けてもらい、いくつかの簡単の摩導具をそこで発表してもらった。


 今回は原理と言うよりも、摩導具という物を見てもらい、皆でそれについて考えてもらうところまでとした。

 それを見た人が、今どうしているのかはわからないが、今と異なる文明もある位の理解をして欲しい。


「慎二、今後わたくしの魔法についてはどういたしましょうか?」


「うん、魔法は個人に依存するので、今まで通りメンバーだけの秘密にした方が良いと思う。

 それを利用しようとする輩が出てきた場合、マリアやアンナに危害が出る恐れがある。

 それに、今摩導具が世の中に出る事で、たとえ魔法が見られても、摩導具によるというごまかしもできるようになると思う」


「わたくしも、アンナが来ましたので、マナクリスタルを作る事も少しは楽になりました」


「あ、その件だけど、実は今ものすごく大量の摩導具を作る事を計画しているんだ」


「えぇ! 今の量で、かなり精いっぱいなのですが?」


「あ、いつもマリアには負担をかけて悪かったね。

 でも、その為に前から話していた北極にマナクリスタル製造の工場を作る事を前倒しに考えているんだ。

 それが出来れば、マリアはマナクリスタルを作らなくて済むし、大量の摩導具を作る事もできるしね」


「そうだったのですね。

 わたくしもイザベラに刺激されていますので、新たな魔法の研究もしてみたかったので助かります。

 それで、何を作るのですか?」


「うん、今摩導ベインに使っている摩導モジュールを大量に作る必要があるんだ」


「例の新しい国づくりの為ね?」


「そう、そのための材料として必要なんだ。

 今、いろいろと材料をあつめているが、その摩導モジュールが一番時間がかかりそうなので、俺はしばらくは休み無しかな?」


「ふふっ、まあ慎二は責任者、独立国の王様になるのだから仕方ないわね」


「まあ、マリアも無理しないで頑張ってね」


 そうこう話していると、教授が研究室に戻ってきた。 教授も忙しそうだ。


「お待たせしたね。

 それで、総理がいらしたのは私も驚いたが、おかげで今回の発表会はうまくいったよ。

 私はこの春から特別講座をこの大学で開く予定で、これから聴講者を募集する予定だが、第1期は発表会参加者から選ぼうと思っているんだ」


「それが良いですね。

 まずは自分で摩導具を理解しようとした人が来ると思いますし、あれ以上の人数が一度に来られても困りますので良いかと思います」


「まあ、私自身は一度引退した身なので、早く後継者を育てて独自で研究をしていってほしいと思っているんだ。

 でも、問題は材料だな。 この世界で作れないものであると、どれだけ有用な物でもやがて消えてしまう」


「それなのですが、必要なのはイザベラが持つ摩導パターンと、マナクリスタル、マナインクだと思います。

 摩導パターンについては徐々に公開するとして、一番問題なのがマナクリスタルですね。


 今マリアと話していたのですが、僕らの国づくりにおいても摩導具が大量に必要となるため、この世界でのマナクリスタルの生産について前倒ししようと考えています。

 それが成功すれば、余剰のマナクリスタルが出ると思いますので、それをこの世界に提供しても良いと思っています」


「そうすると、あとはマナインクか」


「そうですね。

 俺たちが持つ金を大量に放出してもいいのですが、それだと多分この世界の金な価値が変動してしまうと思います。

 俺たちが使う分は大量ですが、研究で使うくらいであればたいした量ではないので、あとは皆さんに苦労してもらいましょうか?」


「あのマナインクポットは、いくらぐらいするんだね?」


「今イザベラが使っているのは、10センチ角の純金を使っています。 なので、19.32キログラムの純金の代金って事に成りますね。

 あと、これは消耗品ですから、使えばそれだけ減りますけど」


「それって、今の金価格だと、材料の金だけでも1億*1を大きく超えるな!

 製品化するとそれに摩導具の付加価値が付くから2億円近くなりそうだな。 大学予算で出せるのかな?」


「そこはそれ、総理に言って出してもらいましょう。 それが研究の1つの関門になるのでいいじゃないですか?

 それと、マナインクポットは俺達から買ってください」


「当然、金だけではマナインクにはならないから、君たちから調達するしかないな。

 でも、あれはイザベラ君の手彫りなんだろ? 作る時間はあるのかね?」


「あ、最初の1個目は手彫りですけど、2個目以降はそこで作ったマナインクを使って作れるようですので、1個目ほど手間はかからないようです。

 それに大量に必要になれば、理恵さんところでスクリーン印刷で量産してもらいますから」


「1個2億円の製品か。 君たちの製品は桁がちょっと違うね」


「でも、教授もその仲間の一人じゃないですか?」


「はは、まあそうだな」


「まあ、自分たちでマナインクを使って実際に摩導具を作るのはもっと後になるでしょうね。

 研究としては最初は出来合いの摩導具のサンプルを使って、エターナルを理解する事が良いと思います。


 なので、前回のデモに使ったもののほかに、板の表面に摩導パターンを書いた摩導具の原理を示すサンプルを何枚か渡しますので、それを使って研究させてみてください。

 最初はイザベラのパターンから摩導具を作っていますが、その原理はイザベラの世界でも解っていなかったので、僕や壮太君もそこから推測して今の摩導具にまで育てました。

 まず自分たちで苦労して始めないと、技術が身に付きませんよ」


*1 出稿時(2020-08-19) 金買取:\6,825/g(税抜)

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この物語はフィクションです。

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