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5-06-08 騎士 フェルディナンド・ダ・ザルバーニ


 やってしまった! 失敗した!

 私、フェルディナンド・ダ・ザルバーニは、探し求めてきた貴薬草から作る薬であるエリクサーに関する重要な情報を聞いてしまった。

 なので、それをすぐにでも確かめたい一心から、思わず勇んだ行動に出てしまった。


 そう、エリクサーを使って見せてもらうために、自らの体をエリクサーの効果の実験台にしてしまったのだ。


 私の(あるじ)は、その地を収める領主であるザルバーニ家であり、私はそこの領地で騎士をしていた。

 私は、主に対して、謝っても許されぬ失態を起こしてしまった。


 それは、私の部下の失敗であるが、私が指示した内容により、主の一人息子に大怪我をさせてしまい、その時昏睡状態となった彼は今も目覚めていない。

 彼は私と同い年で、私の親友でもあった。

 その為か、主は私に対してたいしたお咎めもなく、私自身から職を辞することにした。


 そして、調べ上げた結果、どこか別の世界にその治療が出来ると思われるエリクサー、もしくはその原料の薬草の存在を知った。

 例え我々の世界になくとも、お金はかかるが他の世界から取り寄せる方法は存在することは知られているのだが、残念ながらそのエリクサーに類するものは入手できなかった。

 我が国での情報では限界となったため、別の国へ旅をし、その方法を探すことにした。


 我が国からはるか遠い場所に見つけた世界、その国は決して大きな国では無いのだが、豊かな国であった。

 その街では、私が自分の国で見たことが無いようなものであふれかえり、文化がまるで違うところをまざまざと見せつけられる感じを受けた。

 夜も明かりが有り、人々は生活をしている。

 暗くなるとすべての活動が終わってしまう我が国とは、基本的な文化が大きく異なることは一目瞭然であった。


 しかし、その国であってもエリクサーに関するものはどこにもなく、すっかり諦め別の国に移動しようと考えていた。

 その夜の明け方、何か不思議な店の夢を見た。

 エリクサーは無いけれど、そこの店にはエリクサーにたどり着くことが出来る秘密を知っている不思議な老婆がいたのだ。

 なぜその老婆が私が求めている物を知っているのか判らないが、彼女は私に微笑みかけて、耳元でその方法をこっそりと教えてくれた。

 そこで夢から覚めた。 外が白み始める朝ぼらけであった。


 しかし夢から覚めると、残念なことにそれが何を言われていたのか全く覚えていなかった。

 まあ夢というものは、そう言うものだと思い 宿を引き払い、旅立に必要な旅の食糧を買いに市場に出かけた。

 食料が揃えば、この国を出る事にしている。


 その市場で、夢でみた老婆が歩いているのを見つける事になる。

 それほど夢での姿をはっきりと覚えている訳では無いのだが、なぜか私はその確信を持っていた。


 まさかとは思いながら、その後を少し付いていくと、昨日の夢に出ていた建物にその老婆は入って行った。


 その建物には看板など無く、とても商売をしている店のようには見えない、小さな家であった。

 しかし、入り口の表札をよく見ると、看板では無いが、「夢追人の集う部屋」と書かれた小さな表札が付いていた。


 この看板だか表札だか判らないものを見つめていても埒が明かないので、思い切って私はその薄暗い家の中に入る事にした。

 まあ、どこの家もガラスなどは無く、小さな明り取りくらいしかないために、家の中は薄暗い。


「お待ちしておりましたぞ」


「いや、私は初めてこちらを訪れるのだが」


 そう言うと、老婆はニヤリと口元を歪ませて微笑み? おれに何かを差し出してきた。


「お主が、この店に来ることは判っていたよ。

 この店はそう言う夢を追いかける人が集まってくる店だす。

 これらが、お主が求める品物だ。

 1つはお主の求める場所へ移動することが出来る物。

 もう一つは見つけた物を、必要な相手に送る物。


 ただし、求める場所から戻る為の方法はワシは持っていないから、それなりの覚悟がいる。

 そして代金は、お主が持つお金のすべてじゃ。

 移動すると、持っているお金も行った先では使えない。

 本当に大事な物だけを身につけていくがよい」


「判った。 夢のような話ではあるが、どうやら婆さんは俺の事情が分かっているようだな。

 もと、戻れぬことは覚悟しているし、行った先で私のお金が使えないのであれば、それはそれでよい。

 いった先でお金を稼ぐさ。 だから、剣は何本か必要だな。

 あと、いつ、どうすれば、その場所に行けるのだ?」


「お主は、わしの話を疑わないのじゃな。

 よろしい。 荷物はそれだけなのかな? 大きな荷物は無理だが、その背嚢ぐらいであれば持っていけるかもしれない。

 外に馬とか置いてないのか?」


「ああ、これだけだし、3日ほどの干し肉と水は持っている。

 あとは、これまでも食料は現地調達さ」


「ふぉふぉふぉ、わかった。

 その袋を持つと良い。 それに入れて封をすると、お主が送りたい相手に届くようになっているらしい。

 そして、その石を握って、目をつぶって探したいものを頭に想像しなされ」


 そして婆さんが、何かしていると、暗がりの部屋にいたはずの俺の周りが明るく感じられ目を開くと、室内ではなく、明るい別の場所、そうこの世界に私は来ていた。

 そして街を歩きだすとすぐに捕縛され、腰にぶら下げた私の大事な剣が取り上げられてしまい、どこかの鍵をされた牢屋敷の様な小さな部屋に入れられてしまった。

 ほとんどの壁が白く、石の様であるが石でもないようで、ちょっと変わった部屋のようだ。


 剣がないと、食料が捕れなくなり、飢えてしまうと思ったのだが、ここでは変わった食物が提供されるようで、しばらくその食料で食いつなぐことにした。

 何度か取り調べのような部屋に移され、何か聞かれるがさっぱりわからず埒が明かなかった。

 とにかく一言も会話が出来ないため、俺が探している物の事を尋ねる事もできずに何日か過ぎていった。


 そのうちに移動する事に成り、そこでようやく話ができる事が出来る人間と出会うことが出来た。

 あの婆さんの事をかなり疑い始めていたが、何とかなってほしい物だ。

 俺は、出来るだけ早く薬を探して、もと主の元に送る必要が有るのだ。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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