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5-06-07 浮遊する摩導具


 以前、パーティーのテーブルに使われていた浮遊する摩導具。

 この摩導パターンを壮太君と解析し、浮遊するパターンを取り出すことが出来た。


 この摩導具は、あらかじめ指定の高さと位置にテーブルを浮かして持ち、そこで摩導具を起動する事でその空中空間に固定されるという物だ。

 イザベラはこれを改造したいと言っている。

 それは俺が使っていたドローンを見た時から思っていたそうである。


 もともとの摩導具でも、浮いている位置を変更できるようにしたものは、当然何世代にわたって試されてきた歴史があるらしい。

 しかし、浮き上がるようにすると、何所か分からない方向に飛んで行ってしまい、何所か分からない、停止処理が無ければ多分宇宙にまで飛んで行ったのではないかと思われる。


 そこで、ドローンのように複数の上下を制御できるようなものを作れば指定した位置に受けるのではないかと思ったそうだ。

 ただ、イザベラの世界では、この世界のコンピュータのように制御を行う道具は無いため、何か作っても制御が無くどこかに飛んで行ってしまう。


 いま、ドローンの制御とプロペラの替わりに引力・斥力モジュールを用いた摩導浮遊モジュールを組み合わせる事で、ドローンのように制御が出来ないかと言う事だ。

 そして3つの軸に対して摩導浮遊モジュールを設ける事で、地球の重力に対して、重力圏であれば指定位置に動かすことが出来る浮遊モジュールを作ることが出来た。


 ただ、ドローンでは加速度センサやジャイロセンサGPSなども組み合わせて、風で姿勢が崩れた場合の補正や、目的位置まで進んだり元の位置の戻ったりできるようになっている。

 そこで、俺はパラセルから買うことができる空間マーカを、その中に組み込むことにした。

 このパラセルで販売されている空間マーカに摩導通信を組み合わせ、地球上の相対座標を示す摩導ベースマーカとなった。


 これでアーは摩導通信により装置がいる位置を知る事ができ、この浮遊モジュールの位置を制御できることになる。


 さらに3D加速度センサも組み込まれているので、どちらが下方向になるかがわかる。

 加速度センサの3軸方向のどの向きに重力加速度が働いているかを調べる事で、下と言われる地球の中心方向を観測することが出来る。


 そして、当然ここにはスマホの内部で使用されている超小型のカメラを組み込むことにした。

 これは会社を辞めるまでやっていた、車の自動運転に関する技術が役に立った。


 これらカメラを使用するには電子回路なので電源が必要なのであり、内部に摩導電池が組み込んだ、

 そして、その電子回路であるカメラやセンサーは摩導カプラで摩導通信に接続されてアーにデータが渡されている。


 そしてそれら全体を透明な樹脂のボールで包み、全体を密閉化と固化した。

 表面はテクスチャでレンズ以外を周囲を風景に擬態するようにし、浮かんでいてもなるべく目立たないようにしてある。

 また、表面にはフィルタ機能もあり、外部からの悪影響をカットできるようにしてある。

 固化などと組み合わせ、高温高圧下や低温低圧下での移動を可能とした。


 なるべく小さなボールに入れて固化したかったので、サイズが変わる大きなズームレンズは用いることが出来なかった。


 試行錯誤と妥協の結果、ボールはビー玉くらいの小さな球体となり、これは摩導ボールと名付けられた。

 スマホに組み込まれているカメラは近年超小型になってきたため、少し昔であれば一番大きな場所を占めるカメラが小型化できたことで、このサイズにまで全体を小型化できた。

 これにより、羽のないドローンのように浮かんで使える小さなボールが出来上がった。



 この摩導ボールには、当初は地球観測用として開発された。

 それは、俺たちが地球を取り巻く環境を測定する必要が出てきた為である。


 具体的に言うと、地球周囲の荷電粒子帯の分布とエターナル量、地磁気などを調べるために開発したのだ。

 特に宇宙空間や北極周辺の深海や地中など、かなり厳しい環境での計測を目的としている。


 俺のいるこの世界では、地球の周りを荷電粒子に包まれており、それにより宇宙空間からのエターナルが流れ込んでこないと考えている。

 どうやらその荷電粒子帯は、南極から北極に向かって地球外周を流れる磁力線に沿っており、その外側を伝ってエターナルが北極に流れ込んでいる可能性がある。

 それが、古代のマナクリスタルの生産工場が地球の北極点作られていた理由のようだ。


 その北極地の工場は(いにしえ)の時代に大事故を起こした。

 それまでの北極地は陸地であった。


 俺やサリーの次元では工場は大爆発を起こした北極の地は大きな海、北極海となった。

 そして、その爆発で放出された電荷を持った微粒子紛が、地磁気帯に引き寄せられるように荷電粒子として地球外周を取り巻いた。


 イザベラやマリアの次元では、爆発はしなかったものの、その事故の影響でその工場は北極の氷に閉ざされ、大きな氷の山が生成されたらしい。

 荷電粒子帯が出来なかったので、それ以降もエターナルは普通に地球に流れ込んでいるようである。


 この事故で、大きな次元分岐が発生し、2つの次元に分かれたようだ。


 これらはサリーの世界に残された昔話や、イザベラのマナクリスタル工場を探す北極探検や摩導具が有る遺跡に残された絵などから導き出された考えだ。


 それで、俺達の世界における地球を取り巻く荷電粒子とエターナルの分布濃度の観測を以前から行いたいと考えていた。

 なぜならば、マナクリスタルを作る鍵がそこにはあると考えているからだ。


 そう、俺はその古代の地球に有ったと思われる北極の工場の場所が重要で、この世界の北極でも再びマナクリスタルを製造する施設が作れないかと考えている。

 この地球の表面にエターナルが収束している場所がわかれば、マリアの体内で行われている結晶化と同じ作用が行えるのではないかと考えている。


 地磁気は地球の中のコアから発生していると考えられるが確認は出来ていない。


 まあこれは強力な丸い磁石だな。

 地球内部の磁石としては、北極側がS極、南極側がN極となる。


 方位磁石側を基準で名付けされてしまっているので、本来文字が持つSouthとNorthとは逆になるが仕方がない。

 方位磁石のN極を引き寄せるは磁石のS極だからね。


 地磁気が南極から出て、北極の地上に落ちるポイントに地磁気が流れている。

 その流れで釣り合う高度に荷電粒子が地球を覆う層を作る。

 荷電粒子層の外側にあるエターナルは、地球の強力な地磁気で引き寄せられるが、周囲の荷電粒子層が邪魔をして近づけないが、唯一地球に一番引き寄せられる点が、磁場が収束する北極の地だ。



 地上で強いエターナルに遭遇できるのは、多分その地磁気の集まる渦の中心の1点しかない。

 そのエターナルが集まるであろう場所を、俺は特異点と呼んでいる。


 ところで、地球中心の磁極の向きを示す地磁気極と、実際に地表に地磁気が集まる磁極には少しずれがある。

 特に磁北極におけるずれが大きい。

 さらにその地磁気が地面に集まる磁極であるが、これまでゆっくりとした動きであったものが、ここ20年ほどはその位置が大きく変化している。


 磁石の周りに金属が有る場合、磁力線の通り道は均一ではなく、より流れやすい場所を通って流れていく事に成る。

 であるので、地球の内部の表面に近い層にはマントルが流れており、それは金属成分を多くむ導体であり、マントルが地球内部を流れる事で、地底深くから出る磁気の通り道がずれるのではないかと考えている。

 忘れていけないのは、地球はとても電気を流しやすい導体なのだ。

 なので、家電製品では感電防止にアース(EARTH)に接地し、金属筐体表面の電気を地面(GROUND)に流している。



 ただ、磁極が動き出したと言う事は、近年ひょっとするとそのマントルの動きが激しくなったのではないか?

 これは、電気を主体とした現代文明により、地球内部に流れ込む地球表面から電流によって、マントルの動き自体に影響を与えたのかもしれない。


 この磁極の移動量が大きいと言う事は、古代の工場の様に北極に固定した工場での生産は不可能と言う事である。

 常に磁極を地球規模で観測して、その中心に生産施設を置かないとエターナルは集められない事になる。

 ひょっとして、古代の工場が爆発した原因は、磁極のずれにより、収集装置の外側にエターナルが集まったことが原因かもしれないな。



 そのために宇宙空間や北極の深海の環境にまで耐えられ、自由に移動が出来る観測装置が必要となったわけだ。


 これができれば、イザベラの世界のように大量のマナクリスタルの生産が作れるようになる。

 それを利用できれば、マナクリスタルから生み出されるフォースが化石燃料にかわる代替えエネルギーと出来るのではないかと考えているのだ。


 今回作っている拠点は、すでに電気をほとんど使用していない。

 マナクリスタルから流れ出すエターナルの力、すなわちフォースによって働いている。

 なので、新たな国の目玉が、このマナクリスタルを使った摩導力による国家づくりと言う事だ。


 と言う事で、国づくりに先立ち、地球の観測とマナクリスタル製造についての道筋を作っておきたかった。


 また、地中などの調査の際に必要となる、地中に潜れる機能も実装してある。

 これは、反固化の機能をつかい、ボール自体を希薄化できるようになっている。

 壁の密度を下げると中を人が通過できるように、摩導ボール自体を希薄化する事で壁の中を通過できる。

 この時は、カメラなどは使用できないので、適当な空間を見つけて固化を戻す。

 周辺に空間が見つからない場合、適当な場所で斥力を使用して、周りの物質を押しのけて空間を創り、そこに固化して調査を行う。

 当初調査様に考えられた機能であるが、希薄化して侵入することは、偵察などの用途で利用されることにもなった。

 長期間どこかに潜んで偵察を行う場合、それらアーが担当している。



 あと、2つ目の摩導ボールの目的は、それほど大した理由ではない。

 最近加わった薫ちゃんに使ってもらうためだ。


 そう、動画配信を行う彼女の動画を撮影するために何個か渡してある。

 さらに必要になれば、追加で使ってもらう予定だ。


 我々は慢性的な人手不足で、動画を記録するにも彼女一人しかいない。

 しかし、今後は国としての記録をお願いする事になるので、いつまでも三脚と自撮り棒だけと言うわけにはいかない。

 そこで、自動化できることはなるべくアーにお任せして、彼女はなるべく企画やレポートに専念するようにしてもらっている。


 この摩導ボールは、薫ちゃんの摩導バングルから操作することで、アーに指令が届き、リアルタイムで撮影画像が調整できる。

 カメラや、各カメラの位置、それらの切り替えや編集はアーの中で行っているので、ある程度指示をすれば、後はアーがやってくれる。

 アーが作った映像を変更したい場合、バングルで指示すれば画像の切り替えや加工ができる。

 カメラにズーム機能は無いが、カメラ自身が被写体に近づいたり遠ざかる事で同様の絵作りが出来る。


 インターネットには、最近つながったスイスのサーバを経由して、アーの中から世界に配信する事もできるようになった。


 最近薫ちゃんの周りをよく見ると、常に数個の摩導ボールがぷかぷかと浮かんでいる。

 見えない時は希薄化して浮いているので、単に見えないだけである。


 彼女が取材を始めると、拠点屋上にある摩導ボール小屋から追加のボールが飛び立っていく事がある。 そう、伝書鳩のように。


地磁気に関する参考図


https://ncode.syosetu.com/n3633gf/7/



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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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