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5-04-05 アンナ・デ・シモンの悲願


「マリアは、アンナが君に付いて転移していたことを知らなかったのか?」


「ええ、アンナはわたくしの侍女です。

 アンナ・デ・シモン 貴族の娘でその任務としてはわたくしの護衛も兼ねています。


 彼女の家の警護対象は主に王族ですので、日頃から衛士としての訓練もしていますので、その強さは護衛の中でも上位です。

 また、彼女自身も我が国の上位貴族ですので、魔法が使え、転移するときは私より強い魔力を持っていました。

 私も慎二のおかげで力が戻りましたので、今はどちらが強い魔力なのかは分かりません。

 でも、もう一人魔法が使える人が現れたので、これでようやく私の魔力を計ることが出来そうですね」



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 ここはなんていうところなの!

 魔法は使えないし、周りにエターナルは無いし!



 私、アンナは、あの日王宮の広間に入ると、部屋の奥で国王と一緒にいるマリア姫の周りが光っており、それは姿が薄く揺らいで見え、まるで消え去ろうかとしていた。


 私からは広間の離れた入り口から入った為、消え去るマリア姫に向かい、マナ溜りの残っているありったけのマナをエターナルに変え、私自身はマリア姫に向かって飛び込んだ。

 そう、消えゆくマリア姫に向かって、魔法の力で自分を彼女に投げつけたのだ。

 普通はそんな危険な行為は絶対にしない。 場合によっては相手をケガさせたり、自分も固い物に激突し、死んでしまう事すらあるからだ。


 でも、実はそれが幸運でもあったのかもしれない。


 もし、マナ溜まりにエターナルが一杯に貯まった状態で転移をしていれば、場合によっては彼女の命を大きく削る事になっていたのではないか?


 彼女はこの世界に着いてから、すぐにマナを貯めようとするが、この世界の空間からはエターナルを全く感じることが出来なかった。

 どれだけやってもマナ溜りは空っぽのままで、魔法が全く使えなくなってしまった。

 彼女に魔法が使えるようになってから初めて味わう感覚であり、とても怖い感覚であった。



 どうやら私は姫とはぐれてしまったようだ。

 姫が行っていたのは、別の世界への転移であったようだ。

 そして私一人が、訳の解らない世界に着いてしまった。

 誰の言葉も判らず、一度も見たことが無いような物に囲まれている。


 そして私無含めて、誰も魔法が使えていない世界。

 少しでも魔法を知っていれば、たとえ今実際に魔法が使えなくとも、魔法を放つポーズを見せた場合、それは攻撃の意味であり、相手は警戒のために身構える。

 普通の人はおろか、警備をしている人間にすら、その防御反応が全く見られ無いのだ。

 これが意味する事として、彼らは魔法を隠しているわけではなさそうだ。 本当に知らないようだ。



 では、一体ここはどこなのだろうか?

 無念なことに、捕まってしまってからは、ほとんど外の情報は分からない。


 姫を追いかけたつもりであったが、どうやら私は最後に姫には追い付けなかったようだ。

 今姫は大丈夫だろうか?

 自分の事も心配であるけれど、姫の事はもっと心配だ。

 病気は進んでいないだろうか?


 私は何とか逃げ出して、もう一度姫を追い駆けなければ。

 でも、どうやったら姫に追い付けるのか?

 魔法すら使えない私に残されたのは... いや、あまり悪いことを考えるのはやめよう。

 そして、何とかして姫に会えることだけを考えよう。

 そのためには、体力を温存し、何時での逃げ出せるように準備をしよう。



 その逃げ出すチャンスは比較的早く来た。

 この国の人間は、はっきり言って私より弱い。

 それは何度か試してみて実感した。


 なので、次にチャンスがあれば、逃げ出す自信はあった。

 そう、あのような飛び道具を使ってくるとは思ってもみなかった。


 私はこの国の人間の力をちょっと甘く見過ぎていたようだ。

 弱い者は、力を補う武器を隠し持っているから油断するなという教えを忘れていた。

 あぁ、姫に会えないまま、私は死ぬようだ。


 ああ、姫の幻が見える。

 姫が私を呼んでいる。

 さよならマリア姫! 最後を迎えた事で、あなたに追い付くことが出来たようです。

 姫も死んでいたのですね...


 意識がはっきりとしてきた前にいるのは、マリア姫であった。

 自慢であった長い髪が短くなっていたため、最初よくわからなかったが、私を呼ぶマリア姫だった。

 えっ! 姫、生きていたのね?


『ゴツン!』


 痛い! 私は姫と頭をぶつけてしまい、それが痛いことがわかり夢ではないことが解ると、痛いやら嬉しいやら思わず姫に抱き着いてしまいました。

 なぜか、何故か私の前に姫がいて、一番会いたかった人に会うことが出来ました。

 強い願いは叶う事が有るのだと知りました。


 その姫は、血塗られた服を着ており、姫がどこか怪我をしていると驚きましたが、それが実は私の血だったと後になって分かり、私はもっと焦りました。

 自分の体はどこも痛みはなく、怪我などしていなかったので、まさか姫の服や私の服に着いていた血が、自分が流した血だとは気が付かなかったのです。


 どうやら、私は死にかけるほどの怪我を負ったらしいのですが、最後に意識を失う前、何となく私もそれは覚えています。

 それを姫が探していたエリクサーを使って助けてもらったようですが、何故かその時のことについては姫は口を閉ざして何も教えてくれません。

 どなたか、この世界の特別な方法を使って、私の命を救ってくれたのかもしれません。


 まあ、今は生きていることは確かです。

 姫と再び別れることは望んではおりませんが、この世界で生活するための体の検査が必要だと姫に命じられ、私はしかたなく、その検査に応じる事にしました。

 でも、これまでと違って、それを行えば姫の元に帰れると言う事なので、私はそれをさっさと済ますことにしました。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 姫と別れると、私との言葉が通じる人は再びいなくなりました。

 ちょっと心配ですが、あの場所からは私以外にあと3人が一緒にこの施設にやって来ています。

 私はその3人の方とも言葉は通じませんし、皆さんも同じようにこの施設のどなたとも話が出来ないようです。


 詳しいことは判りませんが、皆さんそれぞれ別の世界からこの世界にやって来たようで、知っている人もいなくて、それぞれ一人でおどおどとしています。

 ただ、ここに来る前に私のように何か聞いてきたようで、ここの施設の方に対しては反抗的な雰囲気はないようです。

 私は、これまで何回か、すこし(・・・)反抗的な態度をとっていたため、皆さんから少し距離を取られているように感じます。


 言葉は判りませんが、私たちの検査は終わったようで、新しい衣服を与えられ、髪も整えてくれました。

 いくつもの髪の女性の写真を見せられて、どうやら髪の毛をバッサリ切るかと聞かれたようですが、それには強く(あらが)いましたが。

 心配な事として、姫のあの自慢の長い髪の毛が失われてしまっていたことはちょっとショックでした。

 こちらに来て何か強い拷問でも受けたのでしょうか?


 衣服は、こちらに来てから初めて見た、こちらの人間が来ているような服で、これはぴったりとしているが動きやすい物でした。

 もし、私の国でこのように体にぴったりとした服を作ったとしたら、腕やひざなど、体が曲がらずに、多分動くことすら出来なくなると思います。


 私はこのような服は初めて着たのですが、決して豪華ではないが、なかなか良い品のようです。 すでにお気に入りです。


 あと、こちらの生活について書いてある書物をもらい、それは絵で示され、全く字が読めなくとも解るように書かれている、なかなか良く出来た物でした。

 これで私が字が読めれば、書いてあることがもっと良く解るのですが。 姫を守るためには、もっと勉強しなければいけません。


 いろいろな検査が行われていきますが、ここにも動く絵が出る機械があるので、言葉が判らなくとも、それを見ることで何をすればよいかが分かりました。

 ここは、言葉が分からない人がいつも来ているようで、ここの人は何も難しいことはなさそうに私たちに接しています。


 結局検査の後に、この世界の事を教えてくれる研修が何日か続きました。

 覚える事が、毎日たくさんあり、この世界の人たちはこんなにいろいろな事を覚えているのかと思うと、ちょっと怖くさえあります。


 もっとも言葉がつかえないので、この施設にはいろいろな装置が置かれていて、それを使って身振り手振りで説明されるのだが、どれも初めて見る物でちょっと楽しい。


 新しいことを習う事がこんなに楽しいなんて思ったことは初めてであり、もう少しここにいても良いなとさえ思えてきます。

 最初からこのような場所を知っていれば、たとえ言葉が通じなくとも、こんなに不安な思いをせずに、もっと安心できたのではないかなと思ってしまいます。



 何日かこの施設で過ごし、すべての検査や勉強も終わったようで、私たちは次の場所に向かっているようです。

 何度か使った車と言う移動する乗り物で大きな街に行くと、いや、そこは私の常識をはるかに超えた場所でした。


 先ほどまでいた施設で、動く絵の装置でこの風景を見ていたのですが、実際に自分でその街を目にすると異世界に来てしまった事が良く分かりました。

 そして、私たちはその人たちが「しんかんせん」と呼ぶ、白蛇のように細く長い大きな乗り物に乗り換えて、また移動しています。


 しばらくすると、その白蛇が止まると、また車と言う小さな乗り物で移動します。

 これは小さな馬車くらいの大きさですが、中は隣に座った人とくっついていしまうほど狭いのですが、見かけよりも良い乗り心地です。

 一緒に乗っている人は、にこやかに話をしてくれるのですが、私を含めた4人は互いにも言葉は判らず、だまって走る車の窓の外を眺めていました。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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