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5-04-04 工務店主 水谷健一


 俺は、水谷健一(みずたにけんいち)

 この埋め立て地の近くで工務店を代々やっている。


 川向うに長鳥温泉が見えるが、川のこちら側の周りは愛知県であるが、この地だけは三重県となっている。

 仕事は名古屋周辺の住宅などにかかわっており、大手のハウスメーカーではないが、小さな工務店であるが設計から建築までを請け負う事が多く、まあ何でも屋ではある。


 たまたま、建てたお客さんの家を訪問するため、名古屋の反対側まで行った日の帰りの事であった。

 俺の小さな工務店は、なるべく店周囲のお客さんについて仕事をお受けすることにしているのだが、このお客さんんは設計で俺を指名してきた。

 そう、設計だけを請け負う事も良くあり、今回は俺の設計で建てた家の上棟式が有ったので、設計者として参列してきたのだ。


 その帰りの事である。

 上棟式の終わった後、大工の棟梁と設計図面の事で打ち合わせをしていたらすっかり遅くなってしまった。


 俺の工務店では、朝は明るくなると動き始めるので、代わりに日没で暗くなると仕事終了である。 なので、我が家の夕食の時間は日没後とかなり早い。

 今日の現場はちょっと遠く、同時に打ち合わせを考えていたので帰り時間が分からないので、今夜の夕飯は不要とあらかじめ伝えてある。

 なので、俺はどこか途中で食べて行かないと、夕飯抜きになってしまう。


 まあ、名古屋近郊なので、街道には食べ物屋はいくつもあるので困らないが、ちょっと暗くなり始めた街道から少し離れたところで、キッチンカーが止まっていた。

 厨房の車内には照明を付けて、何かこれからイベントが始まるようで、キッチンカーの前にテーブルを並べている。


 何かのイベントかなと思い、仕事も終わったとこなのでちょっと覗いてみる事にした。

 女の子がちょっと手間取っているようなので、声をかけてみる事にした。


「どうしたんだい?」


「ちょっと初めて発電機を動かそうとしているのですが、説明は聞いてきたのですが、いざ自分一人で動かそうとするとちょっと難しくって」


「どれ、見てあげようか?」


 工務店の車なので、何となく安心感があったのか、


「え、でも知らない人にこんな事お願いするなんて...

 お願いできますか?」


「おう、どれみせてみろ」


 発電機と聞いたので、小型の発々(発動発電機)かと思ったら、なにかちょっと変わった発電機が付いていた。

 それはLPガスを使った発電機で、俺も初めて見る物であったが、原理はガソリンの物と変わらないはずなので何とか動かすことが出来た。


 キッチンカーの中の電力と、車の上に付いた外部の照明の電力となるようで、キッチンカーの充電電池から、この発電機に切り替える事ができるようである。

 一度キッチンの電気を切ってもらい、発電機からの電力に切り替えてもらった。


 そして、車の上に付いた照明を灯すと、駐車場の周りは明るくなった。


「これで良かったかな? 今日は何かのイベントなのかい?」


「助かりました。 今日はこのキッチンカーをうちの皆にお披露目するのですが、説明は聞いていたのですが暗くなってきてしまったので、ちょっと焦っちゃいました

 あ、この後食事を出しますので、もしよければご一緒にいかがですか?」


「えっ、でもご家族の内輪の食事会なんだろ? いいのか?」


「このテーブルのように、10人以上いますので、お披露目ですしお料理もたっぷりと準備していますので、ぜひどうぞ、どうぞ。

 私のお姉ちゃんが作るお料理はとっても美味しいのですよ」


「だったら何か手伝うが、何かあるかい?」


「だったら、この周りは街灯がないので真暗になりそうなのです。

 なので、周りにあと何個か明かりを置きたいので、照明器を配置して発電機につないでもらえますか?」


「おう、あの車の発電機の横に置いてあった奴だな。

 どうする、テーブルの反対側に置こうか?」


「そうですね。 ちょっと重いのでお願いできますか?

 私はお姉ちゃんのお料理の手伝いに入りますので、終わったら声かけてください」


 俺は箱に入った2台の照明器を設置し、ケーブルを敷いて発電機のコンセントに接続した。

 1つが20キロぐらいあるので、多分あのお姉ちゃんじゃこれは重たかろう。

 照明器はバルーン式で、自立した三脚スタンドのポールの上に、白い気球みたいな拡散器が付いて、周り全体をLEDで照らす工事現場でも使うやつだった。

 小さな箱の中にスタンドや照明器などいくつかの部品がコンパクトに収納されていた。 こりゃ、収納箱に戻す時にも手がいるな。


 このイベントは、身内の食事会などと聞いていたが、その食事会が始まってからの内容は、とてもじゃないが個人のレベルをはるかに超えていた。

 まず、個人じゃこんな高性能なキッチンカー何て持ってないし、それよりなにより、食事のレベルが半端ない。

 よくある店など足元に及ばない。 と言うか、決して高級料理ではなく、味が別次元にいて、他の料理とは比較できないんだ。

 残念ながら、俺が今まで食べてきた中には存在しなかった。


 主催者は太っ腹のようで、来る者は拒まずで食事会に招待していた。

 すると、やはり後からやって来た奴らも俺と同じような意見で有ることがわかった。

 それは、なんとか今後も、せめてもう一度、この料理を食べることが出来ないか? と言う、ちょっとした騒ぎが、終了頃に起きてきたからだ。


 しばらく見ていると、イベントみたいなことをするなどと働きかけている。

 確かに店舗では無理だとして、キッチンカーがあればまたこの食事会は出来そうだ。


 あとは、ここの人たちの気持ちを動かせば何とかならないか?

 それにしても、この集まりは何の人なんだろう?


 さっき設置の際にチラッと見たが、太陽光パネルやガス発電機などまで装備しており、これだけの装備のキッチンカーであれば1千万円はくだらないのではないかと思われる。

 話から、ここの家の人ではなさそうで、今日はこの豪華なキッチンカーのお披露目と言っているにしては、この後は営業しないなどと言っている。

 だったら、何の目的のキッチンカーなのだろうか? 謎だ。


 なので、ちょっと面白そうだと思い、俺は代表して話しているお兄ちゃんの話に加勢する事にした。

 また、今回みたいな料理が食べられることになる事を祈って...


 

 ちょっとしたノリくらいのつもりであった水谷健一であったが、彼はこの後すぐに加納達の計画にどっぷりと巻き込まれていく事に成るのであった。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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