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5-04-02 レスキュー


「あの服部さん、服部さんは西野って人知っている?」


 佐々木さんが私に話かけてきた。


「僕ライターやってるでしょ、それで毎日にちょっとしたことをブログに書いてるんだけど、昨夜の屋外の食事のパーティーの時の僕の写真を載せたんだけど、あの時僕の隣に座ってた服部さんも一緒に写っている写真を使ったんだ。 あの時使ってもいいよって言ってたよね?」


「うん、覚えているよ。 私が食べたお皿の数は秘密だから写さないでね! って言った時のだよね」


 そう言うと、佐々木さんはスマホでそのブログの写真を私に見せてくれた。

 結構かわいく写っていたので、ちょっと嬉しかった。

 昨夜のお料理の写真を見ると、またあの時のお料理を食べたくなってしまった。

 やっぱり、実果さんのお料理って不思議な魅力があるわね。


「そう、それなんだけどね、その写真を見た人から、僕の隣に写っている人が服部と言う名前で、もし、その服部さんの連絡先を知っているならば教えて欲しいってメールが来ていたんだけど、知っている人かな? 返事出しちゃっていい?」


「何か言ってきているの? その人」


「いや、まだそれだけなので、詳しくは分からないけど、心当たりがないのであれば知らないって返事しておくけど」


「うーん、西野さん? 男の人かな? ふふ、意外と私モテるから」


「どっちだろう。 薫ってかいてあったから、男か女かはっきりとは分からないな」


 大事な事言ったのに、佐々木さんってばさらっと無視するんだな。


「西野薫って書いてあったの? もしそれが、『かおるちゃん(・・・・・・)』だったら知ってるけど?

 うーん。 苗字まではあまり覚えていないなぁ。 いつも薫ちゃんって呼んでたから」


「じゃあ、貴方はどのようなお知り合いですか? って、聞いてみるね?」


「薫ちゃんは、前の職場にバイトできてた子なの。 あまりシフトには入って無かったけど、自分で配信動画を作りたいっていた子ね。

 そういえば、まだ動画配信ってまだやっているのかな?」


「それも聞いて、本人だったら動画のURL教えてもらうから、それ見れば服部さんも確認できるね」


「じゃ、お願いね」




「と、言う会話が、昨夜のあのお店で佐々木さんと有ったのよ」


 廃墟の視察にやって来た、私、服部由布子は今慎二さんと話をしている。


「それでね、さっき佐々木さんに返事が届いたので、そのURLみると、どうやら私が知っている薫ちゃん本人で間違いないのよ。

 私が急にいなくなったので心配しているのと、どうやら彼女、生活がかなり厳しそうなのよね。


 慎二さんが住んでいた近くの、あのカジュアル衣料品店に勤めていた頃、彼女は同じ店舗で働いていたアルバイトさんなのね。

 彼女は高校を卒業後、プロの動画クリエータを目指すといって、大学にはいかずに家を飛び出て独立したと言うのよ。


 そして、おもしろそうな題材を見つけると、その取材活動の為にバイトのシフトも入れられなくなるような状態だったわ。

 当然、そんな調子なので、稼ぎは少なく、日々生活が厳しいみたいで、時々私の家でご飯を食べさせてあげていたのよ。

 ネットからの収入はまだ無いので、その少ないバイトの稼ぎだけでご飯を食べて、ネット動画の配信を続けていたらしいの」


「まあ、ネット動画配信だけで食べていける人は、ほんの一握りだからね。

 それで、その唯一の御飯の提供者がいなくなったと?」


「そこは分からないけど、やっぱり相変わらず厳しい生活をしているみたいなのね。

 私は餌付けしていた訳じゃあないけど、ちょっと心配な子なのね。


 でね、もしよかったら、私たちの広報として彼女をこちらに呼んでもいいかなって思って。

 この前、慎二さんが、そろそろ私たちの活動を知らせ始める必要があるなって言ってたから、もしよかったら彼女を使ってやって欲しいのだけど」


「おっ、いきなりそっちのお願いですか?

 うーん、じゃあ、彼女が作った動画というのを見せてくれる。 それ見て判断するよ」


「ありがとうございます。

 でも、なるべく早い方が助かります。 でないと、干物女になっちゃうかもしれないので」


「え、そこまで困窮しているの?」


「まあ、ちょっと大げさですが、この送られてきた動画の内容からは、どう見ても完全に緊急のSOSでした」


「わかった。 すぐ見るから、まずは送って動画を見せてよ」


「あ、あれ見せちゃって良いのかな? どちらかと言うと、私宛てのプライベートビデオに近い内容だったから。

 あ、でも、いいか。 これがその干物状態の彼女です」



「うわ! これ本当(まじ)にやばいんじゃない?」


 彼女の部屋の中で写された動画を見ると、うら若き女性の部屋ではないようであった。


「服部さんはストレージ使えるよね。

 悪いけど俺はいっしょに行っている時間は無いから、君一人で今すぐに東京に行って、彼女を引っ越しさせて連れてきたら?

 2人分の交通費と、引っ越し清算資金を渡すから、とにかくご飯を食べさせてさ。


 まあ、彼女が向こうで仕事があり、こちらに来れないって言うのであれば、それはそれで良いけど。

 でもこの動画の様子じゃ、連絡をしてもたもたしていると、本当に干物が完成しちゃうよ。


 今すぐ出かければ、急いで不動産屋に行って、荷物をストレージ収納して、何とか日帰りでもできるのじゃない?

 急な引っ越しだから、多分違約金が発生するからそれも払ってあげて。


 手続きに時間がかかるようであれば、無理をしないで服部さんもどこかで泊って来てもいいよ。

 お金はサリーから君が使えるストレージに直接入れてもらうから、もし足りなければスレイト通信で言ってね」


「え、いいのですか? 助かります」


「サリー! 服部さんが今から東京に行くから、彼女のストレージにお金を入れてあげて。

 あと、金欠さんを一人こっちに引っ越しさせてくる事になりそうだから、その辺の費用も含めて、現金は多めに入れておいてあげて」


「了解です」


 見学会が始まったばかりではあるが、服部さんは急いで斎藤さんに名古屋駅まで送ってもらい、本当に何も持たずに新幹線で東京にすっ飛んで行った。

 とは言っても、彼女の家財道具一式はすべてストレージに入っているので、困ることは何もない。


 こういった時、ストレージが使えると、ATMがなくとも24時間お金を渡すことが出来るので、スレイト通信と合わせて安心だな。

 あまりむやみにスレイトメンバーは増やせないので、離れていても常に連絡が付く摩導具をイザベラにお願いしたいな。

 あとは、電子マネーがあれば同じようなことは出来るかな。

 今後のために考えておこう。


 彼女の部屋に向かった服部さんは、薫ちゃんの部屋に着く前にスーパーで沢山食べ物を購入して、結局そのまま彼女の部屋で一泊する事になったようだ。

 確かに訳も分からず急に引っ越せと言う事は無理だと思うので、まずはゆっくり事情を聴いて、こちらの事情も話して、そしてどうするか相談してあげるらしい。


 やはり、そこは服部さんらしく、面倒見がよさそうだ。

 そういえば、俺達も初めて洋服を買いに行った時から、服部さんには何度と無く世話になったな。

 服部さんは普段はフワッとした感じだが、いざとなると頼れるお姉さんだな。



 そういえば、食べ物と言えば、ストレージに実果さんの料理が残っていないのが残念だ。

 一昨日の食事会で、作ってあったストレージのストックをすっかり使い切ったようだ。

 そして、昨日から新たに作り始めたのだが、如何せん人数がいきなり増えたので、まだ新たなるメンバーの味覚の把握など、料理に調整がついていないようだ。


 でも、こうしてキッチンカーは順調に活躍し始めたので、なるべく多くの新しい味やストックが出来るようにお願いしよう。

 そこで気が付いたのだが、キッチンカー用の食材の出し入れは服部さんにお願いしていたので、その服部さんが急にいなくなると実果さんが困ってしまうのを忘れていた。

 今日はキッチンカーの倉庫番をサリーにお願いしておこう。


 松井姉妹は、今日はこの建物の外でキッチンカーでお料理を作っているので、このコンビニすらない場所であっても普通に美味しい食事ができる。

 今更ながら、あの時松井姉妹と出会い、新しいキッチンカーを買っておいてよかったと思う。 鼻と舌が優れた人たちのおかげだな?


 それと、大量仕入れや新鮮さが重要な保存に、ストレージの重要性にあらためて感謝したい。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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