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1-03-09 初めてのお買い物

 新しい文化を知ったサリー。

 早く慣れることを祈ってます。



「サリー、今から買い物をするために、一緒に外に出かけようと思うが、何か準備する必要があるかい?」


「え、外って、私もここから出ても良いの?」


「どういう意味だい?」


「だって、私奴隷ですから……

 私に自由はありません」


「あのね、この世界には奴隷制度はないの。

 だから、たとえ奴隷としてこの世界に送り出されたとしても、少なくとも君はこの世界では奴隷でなく、自由だよ。

 買い物、行きたくないの?」


「わーい。

 行く行く行く! 行きたいです!

 お願いします。 慎二様!」


 これまでにないサリーの反応にちょっと驚いた。

 やはり出かけてみたかったようだ。

 すぐにでも出かけたかったのだが、その返事とは裏腹に、彼女はなぜか少し待って欲しいと言う。


 外に出かけると聞いてので、着替えをするようだ。

 持ってきたバッグから、何枚かの服を出して選んでいる。

 大事そうに抱きかかえていた鞄には、どうやら服が入っていたらしい。

 中身も無事に転移されてきたようだ。


 なんだ、着替えをもっているじゃない!?

 だったら、さっき急いで洗わなくとも良かったのに。


 彼女が、何か聞いてきた。

 俺に聞かれても、俺に女性の服は選べないよ……


「私が持ってきた物だと護身用しかないのですが、どのような武器や防具が必要ですか?

 私の家は商家だったので、攻撃用の武器は持ってきていなくって……

 持ってきたのは短剣くらいしかないけど、これで何とか大丈夫かな?」


 鞄の中から、ギラっと光る短い剣を取り出して持っていた。

 いかにも実用性?が高そうで、それもかなり使い込まれている。

 あんなので、ブスッとやられたら一溜りもないな。

 オイオイオイ、それはやめてくれ。 早く鞘に戻してくれ。


「サリーの世界は治安は悪かったの?」


「いえ、それほど悪いとは思いませんが?

 でも、どんな街でも闇はあるものです。

 女性が夜の暗がりを、一人で出歩くことはやめたほうが良いです」


「この街では武器は一切必要ないよ。

 反対に、街で武器を持っていると、たとえ善良な市民でも危険な物を持ち歩いた罪となり、単に武器を持っているだけで捕まっちゃうよ」


 笑ってるけど、本当だって。


「じゃ短剣だけで、大丈夫ですね」


「だから、だめだめだめ!

 それも絶対に持ち歩かないでね」


「では、慎二が守ってくれるのね。

 よろしくお願いします」


「本当に大丈夫だから。

 それよりも、早く着替えてね!」


 彼女の説明では、奴隷として売られて転移した先が、どのような場所、どのような相手、どのような場面になるかわからない。

 転移する時に着てきた服は、念のために彼女の世界の奴隷服を選んで着て来たそうだ。


 鞄の中に入っていた服は、彼女にとってオシャレで大事な服なのだろうが、こんなの着て一緒に町を歩くと目立っちゃうなぁ。


 彼女のバッグの中には、人生最後の旅立ちを覚悟して持ってきたので、さぞや大事な物がいっぱい詰まっているのだろう。

 しかし、短剣のように現代世界では危険とされる物がまだ入っていると不味いので、申し訳ないが持ち物検査をさせてもらった。

 すると、着替えのほかは、初めて行った街で買ったブローチとか、初めて男の子からもらったハンカチとか……

 他人から見たらどうでも良い、ささいなお宝しか入ってなかった。


「お金とかは持ってこなかったんだ」


「はい。

 どうせ他の世界に行ったらお金は使えないのはわかってます。

 必要であれば、どのような世界に行っても、そこで露天でも開いてお金は稼ぐ自信はあります」


 そういうと、商人としての顔がちらっと現れた。


「これから外に出るが、周りには君の知らないものが沢山あると思うので、絶対に俺からは離れずに、あと外では大きな声でいろいろと聞かないでね」


 と、あらかじめ強く念を押しておく。

 しかし、玄関から一歩外に出たサリーは、注意しておいたそばから、あれは? これは? と言い出した。


 声が出てますよと、俺は自分の口に手をあて、目で合図すると、サリーはあわてて両手で口を押さえる。

 階段で一階に降りて、マンションのオートロックのエントランスを一緒に抜ける。

 その際に、オートロックの解除方法と番号を教えておく。

 数字も翻訳されて読めるようで助かった。


 最初にマンションのエントランス付近をよく見せて、ここが俺の住処(すみか)であることを覚えさせる。

 何かあっても良いように、この場所を少しでも記憶しておいて欲しい。


 マンションを出て、駅前に向かって通りを進むが、思ったとおりサリーは『おのぼりさん』状態でキョロキョロである。


 街で迷子になってしまうのがとにかく一番怖いので、俺はしっかり彼女の手を握って歩く。

 サリーはそれが嬉しいようだ。


 商店街が近づくと、お腹がすいた俺達を誘惑するかのように、通りのあちらこちらから良い香りが漂ってくる。


 見知らぬ衣服を着た異国の少女が、鼻をちょっと上げてクンクンしながら歩くものだから、ちょっと可愛く微笑ましく、まわりの注目を集めている。

 俺は、握りしめた手を引っ張るように、足早に進んだ。



 さっきネットで調べて予定していた、駅に近い大手カジュアル衣料品店に入り、まずは下着と服を調達する事にしている。

 ここの商品は、若い人に人気で、テレビのCMもたくさん行っており、いつも人がたくさんいるお店だ。


 店に入ると、まずは店員さんを探す。

 外国人の店員さんが多いようだが、今回ちょっと説明が必要なので、俺は日本人のスタッフさんを探した。


 店の奥で、商品補充をしていた若い女性スタッフを見つけたので、声をかけた。


「すみません。

 この娘、まだ日本に来たばかりで、着るものをほとんど持ってきていないので、当面着る服が何着か欲しいのだけど。

 俺は女性の服は全くわからないので、下着とか服を1週間分くらい、申し訳ないがコーディネートして揃えてもらえないかな?

 ああ、靴下などもいっしょにね」


 おしゃれな日本の女性だったら卒倒しそうな、あんまりな注文の仕方だ。


「靴はこのあと買いに行く予定です。

 あと、下着類は1週間分よりも多少増えても構わない。

 たぶん言葉は通じないから、品物を見せて決めるとか、どうしても言葉が必要な場合、俺は近くにいるから声をかけてください」


 そう言うと、


「当店の商品だけですと、すべてカジュアルになりますが、それでもよろしいですか?

 あと、靴でしたら、当店にスニーカーの取り扱いもございますので、服と合わせて揃えましょうか?」


「ああ、だったらそれもお願いしたい」


「それと、いま着ている下着が外国のものなので、あまり見せられるようなものじゃない。

 先に下着を一式買うから、最初にそれを着せてやってから、洋服を選んでやってくれないか?

 それと、彼女肩に怪我してるので、少し気をつけてもらえると助かる」


 選ぶ服の量が多いので、かなり時間を要すると思うい、スタッフさんには申し訳なく思う。


 サリーはお洒落なものが良いのだろうが、申し訳ないが俺にはその知識やセンスが全くない。

 本音を言うと俺はこの時間に他の買い物をしておきたいのだが、サリーの言葉の問題もあり、俺がここを離れてしまうと面倒になるといけないので、しばらく店の隅っこで待つことにした。


 しかし、そんな俺の心配は杞憂であった。

 お互いだけでは話せないはずなのに、身振り手振りで、どんどん商品を決めてゆく。

 二人とも、俺の存在はすでにすっかり忘れているらしい。

 サリーはスタッフと意気投合して、あれやこれや楽しそうに店内を回っている。


 サリーがトイレに行きたいと俺に言ってきたので、俺は店内の女性用トイレの見分け方を教えてあげる。

 俺には、商品が山となった大型カートが残った。


 これで、やっと服の買い物は終わったかと思っていたら、トイレの戻りに、サリーは新たな大型カートを持ってきている。

 お嬢さん、お嬢さん! その大型カート、2台目じゃないですか?


 結局2時間近くも、この店にいた。


 どの商品もリーズナブルと言われるこの店で、何をどう買うと20万円を超えるの?

 確かにリミットを設けず、お任せさせたのは俺だけどさ。

 店員さんからも、済まなさそうに苦笑いして会釈された。

 とほほほ。


 まあ、これで当面の服は何とかなったんだと、ポジティブに解釈しよう。

 多分ネット通販でも、俺では女性の下着を選んで買うことはできなかっただろう。


 今、二人とも複数の大きな手提げを両手に持っている。

 この後まだ洋服以外の買い物が続く予定なので、今持てなかった荷物は一旦レジに預け、マンションまで2往復する事になってしまった。


 女性の買い物の恐ろしさを身に染みて理解した慎二でしたね。


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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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