表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/221

5-02-10 苦い料理


 僕、佐々木卓也は名古屋の郊外を車で走っていた時、パーティーをしていた人たちと、偶然飛び入りでお食事をさせてもらう事に成りました。

 そして出されたお料理を食べて見て、驚きました。


 僕はフリーではあるがライターと言う職業柄、食べることは好きで、名古屋周辺の美味しいものはほとんど食べてきたつもりです。

 ところが、ここには僕の知らない料理があり、食べつくしたと思っていたその自信がすこし揺らいでしまっていました。

 その極め付きはこの薬膳と飛ばれたお料理です。


 そういえば、薬膳料理と言っていていますが、決してこれは薬のような味ではありません。


「いや、薬膳料理って初めてなのですが、こういうお料理なのですか?」


「ふふっ、これは特別ね。

 薬膳などと言うと特別に思われますが、多くの普通のお野菜にもそれぞれ薬効があるものがあり、健康のためにそういったものを用いる事が多いわね。


 また、薬膳料理と言うと、あえてそれっぽい漢方的な要素が強く出すお料理が多いですが、これは特別品。


 今日この漢方を届けてくれた、富山の漢方薬店にシェフがイメージを話し、それに近い薬草を選んでもらったようね。

 普段はお料理には用いない生薬をお料理に用いているの。

 当然漢方薬の専門家のお勧めなので、薬草と言っても健康的で安全な物しか入っていないから心配はしないでね。


 さっき少し感じた苦みはそれの味です。

 いろいろな調味料は市販されているけれど、苦みの調味料という物は一般的に市販されていません。

 しかし苦みはたくさん種類があるので、先ほどまでのお料理では、これとは異なった苦みを使っていたけど。


 ただそれを苦く感じさせるようではお料理として失格ですね。

 美味しいと感じさせる最適な量に見切って、それを包み込む他の種類の味と混じり合う事で隠し味となり、他では絶対に味わえないお料理になっているのよ。

 この辺の微妙な味の調整は、私が見込んだシェフならではよね。


 今回の薬膳料理は特に苦みがテーマなので、どれも違う苦みなので私も驚いています。

 私はゴーヤみたいな強い苦みはあまり得意ではなかったけど、これ食べたらもっと苦い物が食べたいなと思うようになってしまいました」


「僕ももっと食べて見たいです。 他の薬膳料理も、すごかったのですか?」


「そうね。 でも、すべてが違う苦みなので、どれが一番とか比べようがないわね。

 辛みは旨味と言うけど、私は今日、苦みも旨味だったと気づかされたわ」


「もっと早くこの道を通っていればと思うと、とても残念です」


 いろいろ食べて、話しているうちに、キッチンカーには最後のお料理と表示されている。

 とても残念だが、最後のお料理を食べ終わり、僕はこの食事会の主催者にお礼を言いたいと服部さんに話すと、あのテーブルに行ってみてと彼女は指をさす。


 言われた主催者がいるテーブルに行き、


「あの僕、その道を通りすがりだったんですが、ご一緒させていただいたので、そのお礼を言いに来たのですが、どなたにすればよろしいでしょうか?」


「あ、慎二は今打合せしているから、私でいいわよ。 サリーって言います」


 ここのテーブルは、外国の方が多いと思うのだけど、このサリーさんの日本語はとても上手だ。


「あの、本日はお金も払っていないのに、沢山お料理頂いてしまってすみません。

 信じられないくらい、どのお料理も美味しかったです」


「えぇ、今日はイベントカーのお祝いでもあるからいいの、いいの。

 お料理沢山食べて頂ければ、お披露目するあの子たちも喜ぶから」


「あの、そのお披露目されたキッチンカーは、これからどこで営業されるのですか?

 僕、もっと食べたくって、遠くても追いかけて食べに行きますよ」


「あ、それは残念ですが、キッチンカーは私たちの食事用ですので、どこかに行っての営業は今後もありません」


 その話をすると、サリーさんは最初に僕を呼び込んでくれた女の子を呼んでくれた。


「枝奈ちゃん、この人がとっても美味しかったって」


「ありがとうございます。 そう言ってもらうと、お姉ちゃんも喜びます」


「あの、この立派なキッチンカーは、どこかで営業はされないのですか?」


「そうね。 この前まで私たちは小さなキッチンカーで商売をやっていたのだけど、営業となると保健所の許可とか、作れる品目の制限などがあって、結構大変なのよね。

 それに、このキッチンカーは皆の食事のための食堂として買ってもらった物なので、今のところ考えていないわ」


「え! それはもったいないです!!

 僕も食べることは好きですが、こんなにおいしい料理が沢山あって、どれも食べた事が無くって...

 先ほど、あちらにいらっしゃる服部さんと言う女性の方と食べていたのですが、あの人が言うように一皿でも食べていない料理があると悔しいと言っていた意味が、今僕も良くわかります」


「服部さんならば、確かにそう言いそうね。

 彼女の舌は確かだものね。 サリーも、実果さんの作るお料理はとても良い香りで、本当においしいと思うわよ」


「そうですよね! 僕もまたどこかで食べらることが出来ないですか?」


「すみません。

 今のところ何も考えていませんし、この場所も今日お邪魔した家の駐車場をお借りして、急遽食事会としただけですので、明日以降どこに移動するか決まっていません」


「そうなんですか?

 でしたら、もし場所が決まって、また僕も参加させていただけるような食事会をされるようでしたら、ぜひこちらに連絡が欲しいのですが」


 僕は必死で、名刺を手渡した。

 するとサリーさんは、


「困りましたね。 これで何人目でしょうか?」


 そう言ってポケットから何枚かの名刺を出して、それに僕の名刺をそこに重ねていた。

 どうやら、僕以外の通りすがりの人も同じことを思っていたようだ。


「それではまた機会があるようでしたらご招待させていただくかもしれませんし、今はそのようなお約束はできません。

 ここではそれしか言えませんので、申し訳けございません」


「あの、もし出来るのであれば、このフードカーや、他のフードカーを呼んで、どこかでこの近くで小さな非公開のイベントでもしませんか?

 自分たちだけの食事会であれば、保健所の許可も必要ありませんし、そうすれば、僕もいろいろなお料理も食べられるし」


「ふふっ、最後が本音のようですね。 でもちょっとそれ面白いかもしれないわね。

 私も食べるの事は大好きだから、確かに違う物も食べて見たいわね。

 でも、そんなことできるのかしら?」


「あの、だったら僕が動きますから、もし出来そうであれば、このキッチンカーを出してもらえますか?」


「今、後ろで聞いていたけど、そんなイベントするの? いいねそれ! 俺も、もっと食べてみたいから協力するよ」


 まだ会場には通りすがりの人も残っていたようで、僕の後ろから知らない人が声をかけてきた。

 それに、周りでこちらに聞き耳を立てている人が何人かいるようだ。



「あ、あなたはさっき名刺をいただいた人ですね。 えっと、この名刺の人ですよね」


「そうそう、よく覚えてくれてありがとう。 だったら俺も友達集めてみるよ。

 これを逃しちゃうと、多分2度とこの味を食べられなくなっちゃうしね。

 しかし、あの薬膳は凄かったな...」


「僕は薬膳は、最後に出された1皿しか食べられなくって、 そんなにすごい味だったのですか?」


「あれ? 君はあれを1皿食べてなかったの?

 それは人生大きく損しているよ。 と言うぐらい驚いたね。

 絶対にまた食べたいし、俺の彼女にも食わしてやりたいしな」


 すると、枝奈が手を振って、


「あ、お姉ちゃん。 お姉ちゃん、こっち来て!


 これ、私の姉です。 今日のお料理は全部お姉ちゃんが作ったんだよ!」



「「「おぉ、神の降臨だ!」」」



「何事ですか? この方たちは?」


 身内の食事会として、ずっとキッチンカーの中にいたので、急に知らない男の人達に囲まれて、ちょっと姉は戸惑っている。


「この人たちは、お姉ちゃんのお料理食べて感動されて、またどうしてもお姉ちゃんのお料理が食べたいって話になっているみたいなの」


「あ、すみません。 私達のキッチンカーでの営業は先日で閉店しました。

 これから、このキッチンカーでは、身内のお食事だけを作る予定です」



「それは、先ほどお聞きしたのですが、何とかもう一度お姉さんのお料理が食べられないかと思いまして。


 それでですね、今こちらのサリーさんにお願いをしまして、僕らでどこかで身内だけの、あ、僕は身内ではありませんが、要は営業だと保健所とかの問題があるとお聞きしました。

 それで、仲間の集まりの食事会ってことで、何台かのキッチンカーを呼んで、クローズドな小さなイベントが出来ないかなって言う話をしていました。

 サリーさんはお忙しいとの事で、もしよければ僕ら、あ、僕らと言っても、今ここで初めて会っただけですが、準備とかしますので、お願いできませんか?」


 僕は自分から何かを仕掛けようなど、これまでした事などないが、今日はとてもテンションが上がってしまっていた。

 その時は美味しい食事に興奮していたのかもしれない。 気が付くと、必死になってお願いをしていた。


「まあ、私だけでは決められませんから、あとでリーダーの加納に相談してお返事させていただきます」


「ぜひ、よろしくお願いします」


 そう言って、僕らはお姉さんや妹さん、サリーさんと固い握手をして去る事にした。


 車に戻る前に、周りにいた協力してくれると言う人たちと互いに名刺を交換して...

 何だろう、このわくわく感は!


 しかし、待っていると立ち消えそうな話なので、悪い返事をもらう前に、僕らは既成事実とするための準備を始める事にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

ルネサンス[復興]の女神様は、カノ国の摩導具により新たな文明の基礎となれるのか?

ルネサンスの女神様 - 明るい未来を目指して!

https://ncode.syosetu.com/n9588hk/

こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ