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5-02-08 教授 石崎礼一朗の決断


 皆を前にして、俺と西脇唯華の説明が終わった。

 そして、すべてを聞いた教授が語ってくれた。


「ありがとう。 加納君達の話は解った。


 最初は何かとんでもないことを言っているな、としか思えなかった。

 確かに話は、それぞれが順に成り立っており、これだけのことを説明するのは大変だったと思いますが、短く良くまとめてくれたね。

 おかげで、真実味があり、いきなり結果から聞いていたら、完全に疑っていたよ。

 そして、君が言ったように、一度これを聞いてしまったら、私も確かに戻れないな。


 知らぬが仏、知るが煩悩と言う教えを、私は今思い知らされたよ。

 知らなければ、この世界の文化や文明、技術が最高の水準であると思っていただろう。

 また、この国は安全で、平和であるとも思って来た。


 そう、知らなかったのか、隠されていたのか、それは分からない。

 でも、私もですが、皆さんも知ってしまったため、これで沢山の煩悩にさいなまれる事に成ってしまったね。


 まあ、ここまで聞かされてしまったからには、私も腹をくくろう。

 君たちが、私を受け入れてもらえるならば、既にリタイアした身であるが私も協力できる。

 いや、その新たな計画の開拓者、パイオニアに私も是非参加させてほしい」


「教授、これに参加するということは、先ほど言いましたように道を戻れませんよ。

 過去に積み上げたものを失う覚悟が必要です」


「ああ、判っている。 私も日本国籍にはこだわらないよ。

 こちらの娘さんのように、完全に自分の世界との決別に比べれば、そんなことは対したことではないさ。

 私は、この年にはなってしまったが、自分の興味が抑えきれないと思う。

 お前も、こんな旦那で申し訳ない」


「あら、いまさら何を言っているのですか?

 何処にでも、何時までも、私はあなたにご一緒しますよ」


「石崎教授に奥さん、俺達は、別に神様ではありません。

 何でも出来たり、わかったりはすることなどできません。


 お話したような、ちょっとした秘密の奇跡はありますが、それだけです。

 俺達には、これから多くの力や知恵が必要です。

 それでは、教授の力も貸し頂けると思ってよろしいでしょうか?」


「ああ、これからよろしくお願いする。

 それとだね、私はもう教授ではないが、もしよければだが、私の信頼する人間が何人かいるんだ。

 出来ればこの愉快な楽しみをちょっと分けてあげたいのだが良いだろうか?」


「そうですね。 まあ、俺達のすべてを聞かれたうえで、教授が良いとお考えの方であれば、多分良い方なのでしょう。

 人選は、お任せします」


「ありがとう。

 で、早速で申し訳ないが私の考えをちょっと聞いてもらえないかな?


 これは推測も含まれているのだが、君というか、君たちには、誰かが何かを期待して、いろいろな人にお告げを飛ばしているような気がする。

 それは、決して君たちを害する事が目的ではないが、その何かを期待して行われているように感じるんだよ。


 その一つが、貴薬草とそれからできるエリクサーではないかと考えるんだ。

 エリクサーへの製造方法は富山で完成したとの事なので、後は材料だな。


 と言う事で、失われてしまった貴薬草を、もう一度生産する必要があると思う。

 そのためには、新たな貴薬草の生産を可能とするため、新たな栽培地の確保が必要と考えるんだ。

 幸い、貴子さんは復活されたわけなので、後は里に替わる栽培地の探索が必要だ。

 薬草の発生メカニズムを探るなど、私はそちらに協力できるが、年齢的に真希君を中心に、その探索を1つの仕事としよう。

 貴子さんもそろそろ山に入れる年齢に体が成長してきているようなので、一緒に探すのがいいだろう。


 次に、スレイトでの売買だが、やはりある程度世間に対して隠しておく必要があるな。

 それが公になると、慎二君や貴子さんの生命にすら危機が及ぶことになるかもしれない。

 国が出来れば、その国の産業として、出自を隠して利用ができると思う。


 それと、そのストレージはスレイトメンバーであれば、全員使えるのだな?

 うーん。 まあ、それは隠しながらうまく使ってくれ。


 でも、その力は何かでカモフラージュした方が良いな。

 例えば、お腹あたりに出入り口を設け、常にそのポケットから出し入れするとか?

 そうすれば、実態を知らない悪人からであれば、狙われたとしても、人ではなく、そのポケットになるからな」


 それだど、どこかコミックの未来ネコ型ロボットのようになりそうだけど...

 どうやら教授は、そこには気が付かないようで、真剣に話している。


「それで、私が今回一番驚いたのは、摩導具だな。

 いや、どれもすごい話なんだがね、ただ摩導具は、誰にでも使えて、この世界の常識を変えてしまう可能性があると感じている。

 この世界にも多くの問題を抱えているし、エネルギー問題は資源枯渇や環境破壊など、悠長なことは言ってられないことになっているのは君たちも知っているだろう」


 一応、皆頷くが、服部さんがちょっと首をかしげている。


「もし電気を補える新たなエネルギー政策出来れば、それはこの国、いやこの世界を変える事に成るだろう。

 何しろ満足に電気を使えなかった時代から、たかだか百数十年しか経っていないのに、いまや電気なしでの生活は考えられない。

 でも、その電気を作る為には、多くの有限な自然エネルギーが燃やされ無くなり、環境は汚染されている。


 実際、イザベラ君の世界には電気は無かったようだが、高い文明があったようだね」


「そうですね。 この世界とは異なりますが、摩導具を使った便利な暮らしが出来ていました」


「私は電気を否定するつもりは全くないが、今のこの世界の状態では、やがて破綻するのが見えてきているので、それには危惧しているのだよ。

 なので、新たにエネルギー、いや君たちはフォースと言ったかな?


 摩導具と、新たなエターナルを用いた世界を推し進める事を考えた方がいいね。


 それでだけど、摩導具を広めるために、さっき言った私の信頼する人間を何人か巻き込んでしまおうと思うのだよ。

 一人は技術屋では無くて、この世に文化や流行を広げるための操作、心理学やマーケティングが得意なやつなんだ。


 それと、摩導具については、とりあえず今できている部分で公開は停めた方がいいと思う。

 最初はあえて、イロモノやキワモノに近い、専門家向けの特別なアイテムとして、話題にはなるが実用性を下げておく必要があるな。


 あまり種類をたくさん出すと、摩導具の重要性に気が付いて、本気で敵となる国が現れる可能性がある。

 たとえば、石油などを輸出する国では、現在のエネルギーに替わる物と気が付き、自分たちの商売が失われると考える人たちも出てくるのじゃないかと私は考えるな。

 そして、発明者としてのイザベラさん達の存在は当面隠しておいた方が安全だな」


「それは俺も賛成です。 当面、今日お見せした塩ビパイプの摩導具に限定してもいいと思います。

 いや、それでも多いかな? とりあえずライトだけにしますか?」


「いや、それだと、ちょっと弱いので、黒い光も入れたらどうだろう。

 そして、しばらくして引力、そして斥力と増やしていこうか」


「イザベラ、これから少しずつ君の摩導具をこの世の中に発表していこうと思うが、それでいいかい?」


「私は構いません。 でも、私がほかの摩導具を作る事は良いのですよね?」


「うん、全然かまわないよ。

 教授、だったら誰か影武者と言うか、イザベラ以外の人、特に俺達と関係ない人を代理に立てて発表した方がよさそうですね」


「それは確かだ。 そうしておかないと、イザベラ君のところに不要な人物が集まって来てしまうな。

 そこはだれか探す必要があるな」


 教授が悩みだしたので、ここは教授に一肌脱いでもらう事にしよう。


 そこで、俺は一つ重大な秘密を伝え忘れていた。

 それは、スレイトメンバーについてだ。


 スレイト通信やメンバーの存在は説明は今しておいたほうが良いが、メンバーに加える事には制限する必要がある。

 スレイトメンバーに加える事で、その相手のプライバシーが無くなる事もあるが、メンバー数が多くなると、それを常に受けている俺がパンクする。

 俺は、10人からの話を同時に聞き分けられたと言う聖徳太子にはなれない。


 そのため、誰でも加入と言うわけにはいかず、重要となる人物に限る必要がある。

 従って、スレイトメンバーの加入については、ここの全員の前で言うわけにはいかないので、ちょっと後程話すことにした。



 そして、俺は直接打診する為に、今別室でその話をしている。


「ということで、珠江は厚生省はどうなっている?」


「そうね。 今はもう庁舎に出る必要はないわね。

 まあ、あちらに連絡窓口は作ってあるけど、いまは愛人としてご寵愛をお待ちする生活の方が忙しいですわ」


 あ、忘れていたけど、珠江とはそんな話も残ってたな... 藪をつついちゃったかな。


「で、唯華は外務省はまだ忙しそうだが、どうなっているんだ?」


「私は、今はまだ完全に抜けちゃうと、国づくりに支障が出るわね。

 でも、もしこれが、あのスレイト通信って事についてであれば、是非メンバーにはなりたいの」


「スレイト通信に、気が付いていたのか?」


「あのね、これだけ一緒にいて気が付かないほど鈍感じゃないわよ。

 と言うのは嘘だけど、本当はサリーから聞いていたのよ。

 そのデメリットも聞いているから覚悟はしているわ。

 慎二にいつもお風呂やトイレまで覗かれてしまうのよね。

 キャー! はずかしい!」


 なんだ、こいつは?


「まあ、決して間違いではないけど、そのくらいの覚悟は必要だよ。

 これまで心配してきたのは、メンバーの意思に関係なく情報が筒抜けちゃうから、お役所の機密漏洩が心配だったけど、そっちは大丈夫か?」


「私は、もうそれほど重要な機密情報は廻ってこないから大丈夫だわ。

 ぜひスレイトメンバーになって、もっと親密になりたいですわ」


「わかった。

 アー、宮守珠江をスレイトメンバーに加えてくれ」



『了解しました。

 宮守珠江はメンバー登録を希望しますか?


 宮守珠江をメンバー登録します。

 宮守珠江のメンバー登録が完了しました』


「あ、今、頭の中に聞こえた声は、アーさんの声ね」 と珠江。


「声に出さなくっていいから、何か話してごらん」



「また、宮守に先を越された...」


 どうも唯華は珠江に対して、ライバル心が強いようだ。


「アー、次に西脇唯華をスレイトメンバーに加えてくれ」


『西脇唯華はメンバー登録を希望しますか?


 西脇唯華をメンバー登録します。

 西脇唯華のメンバー登録が完了しました』


「もしもし、慎二、聞こえますか」


「唯華、それ口に出てるから。

 俺と頭の中で話すように、 ん聞こえるよ。 そうやって少しずつ練習してごらん」


「あ、サリーの声が聞こえた!」


「それでね、後ストレージも使えるようになったと思うから、大事な物は今後ストレージに入れるといいよ。

 また、メンバー間であればストレージを経由すれば、離れていても受け渡すことが出来るよ」


「ああ、これこの前の金塊の時、私が直接使えたら運搬がもっと便利だったわね。

 お金もここの入れておけばいいわね」


「あぁ、そうしてくれ。

 今サリーが預かっている分は入っているが、人数が増えてきたのでもう少し日銀から引き出しておいてくれ」


「分かったわ」


 こうして、更なるスレイトメンバーが追加された。

 いや、決して彼女たちの裸を見たいわけじゃないぞ! 俺、紳士(しんじ)だから。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

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こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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